明日の株式相場に向けて=半導体フィーバー第2幕に期待
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比190円高の2万9215円と反発。嵐が過ぎ去ったとは言い切れないが、相場の流れが緩やかになった印象は受ける。米長期金利の上昇にもやや目が慣れてきて、前日の米国株市場では10年債利回りが終値ベースで1.59%台まで上昇したが、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は4日続伸とグロース株への資金還流が続いた。
加えて外国為替市場で1ドル=114円台まで円安が進んでおり、足もとの東京市場では円安メリットが期待できる輸出型企業に有利な流れが続いている。ドル高・円安については、FRBが11月のFOMCでテーパリング開始を決定することがほぼ確実視される局面にあるほか、利上げ前倒しの思惑もあり、日米金利差を考慮して自然な動きにみえる。もっとも円はクロス円でも安くなっており、今後も円の独歩安となると、金融緩和策の出口が見えない日本の弱みを反映しているような構図にもとられかねない。
ただ、これについては前日も取り上げた大学ファンドの影響があるともみられている。「(大学ファンドは)総額10兆円規模ともいわれ、その7~8割が海外への資金投下で実質的に自ら円売り状態を作り出すことになる。それに先んじた仕掛けが入っている」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。いずれにしても円安が進み過ぎるのも問題で、原油高騰と共鳴する形で企業業績にコストとして覆い被さってくるリスクは無視できない。仮に1ドル=115円台に入ってくると、そうした見解がかまびすしくなりそうで、日銀の政策アナウンスにも変化が出てくると見る向きもある。
個別株に目を向けると半導体関連もしくはその周辺セクターに一段と上値指向の銘柄が増えていることに気づく。きょうは大手海運と半導体の2頭立て馬車で牽引したような相場であった。海運株については置くとして、半導体関連については様々な戦略が組める。東京エレクトロン<8035>、レーザーテック<6920>など主力どころに注目するのも一法だが、これらの銘柄は半導体という一つの大きな括りにおいて大洋を航海する空母みたいな存在ともいえる。トレード的感覚ではこうした旗艦銘柄から相次いで飛び立つ中小型株の方に照準を合わせるのが、個人投資家ならではの投資戦略として有効なケースが多い。
ダイトーケミックス<4366>やタムラ製作所<6768>などが上げ足を強めているが、このほか相対的に出遅れていた銘柄ではパワー半導体素子用レーザアニーラを製造するワイエイシイホールディングス<6298>が5日・25日移動平均線のゴールデンクロスを示現しており狙い目。同じくパワー半導体関連でSiC材料切断加工装置を手掛けるタカトリ<6338>も要注目といえる。また、75日移動平均線をサポートラインにチャートの崩れていない銘柄としては半導体商社で米アローエレクトロニクス<ARW>と連携が厚い丸文<7537>にも目を配っておきたい。
更に、半導体製造向け制御機器を手掛ける藤倉コンポジット<5121>や、鋳鉄品メーカーで製造装置需要を捉える日本鋳造<5609>あたりに再び見せ場が訪れる可能性もある。日本鋳造は低熱膨張合金の3Dプリンター技術でも思惑があり、JAXAとは2年間にわたり3Dプリンターによる低熱膨張合金の軽量化研究で協業してきた実績がある。時価は4ケタ大台手前で動意含みだが、3%の配当利回りにしてPBR0.5倍未満と一株純資産の半値以下にある時価は指標面からも割安感が際立つ。
半導体関連以外では、やはり米中の安全保障の領域で必須となるテーマとしてサイバーセキュリティーがある。国内でも企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資の延長線上に必ず見えてくる課題だ。富士通特約店でクラウド分野に傾注する大興電子通信<8023>のほか、インテリジェント ウェイブ<4847>、シグマクシス・ホールディングス<6088>などをマークしておきたい。
あすのスケジュールでは9月の貿易統計、9月の主要コンビニエンスストア売上高、9月の訪日外客数など。海外では、10月の中国最優遇貸出金利、9月の中国新築住宅価格、9月の英CPI、米地区連銀経済報告(ベージュブック)など。なお、米主要企業の決算発表ではテスラ<TSLA>への注目度が高い。(銀)