元・漫画家のシングルマザー、「アホールド戦略」で慰謝料を4倍超えに
ゆる~いようで強い! 投資家女子の決め技 みつきさんの場合-第1回
登場する銘柄
伊藤米久HD<2296>、すかいらーく<3197>、ヨシックス<3221>、アトム<7412>、トリドール<3397>、くら寿司<2695>、ポーラHD<4927>、サッポロHD<2501>、アシックス<7936>、ヴィアHD<7918>、神戸物産<3038>、ワコム<6727>、ニチバン<4218>、Mマート<4380> |

約10年前に離婚、一人娘のシングルマザーに。まだ小学生の我が子に
不自由させまいと、慰謝料と貯金を合わせた500万円を原資に投資に
着手。最初は銀行で勧められたブラジル・レアル預金で始めたが、
2014年1月にNISA(少額投資非課税制度)が始まることもあって、株式投資に
乗り出す。漫画家として活動していた経歴もあり、知的好奇心をフル稼働させ、
投資の勉強にのめりこむ。「PERとは? ROEって何?」の世界から、今では、
営業利益率や財務状況まで読みこなすまでに成長。
現在実践するのは優待&高配当株を狙った長期投資。現在の運用額は元本の4倍超の2000万円以上。
投資といえば、男臭さがぷんぷんしている。『株探』が2021年春に実施した「個人投資家大調査」でも、回答者の85%は男性だった。『株探プレミアム』でこれまで紹介してきた100人近い個人投資家も、女性はたった一人しかいない。
女性活躍社会が叫ばれている昨今、『株探』編集部も投資家として活躍する女性をもっと紹介して、投資家のダイバーシティを広げたいと、新たなコラムを立ち上げた。
もしかしたら、紹介する投資家女子は億トレのすご腕投資家と比べると、"ゆる~い"部分もあるかもしれない。
しかし、日頃、家計のやりくりでお金と厳しく向き合い、将来の生活の安定のために知恵を振り絞っていることが多い女性。投資においても、男性にはない視点で堅実に資産を増やす技を身につけている人も多い。
投資のやり方は千差万別だ。知識や資金量がある人が必ず儲けられるわけではなく、儲けた人が勝者であり強者といって過言ではない。
これを踏まえ、このコラムでは、一見ゆる~いようで、「そんなやり方や考え方もあったのか~!」という投資家女子の勝ち技を紹介していく。
最初に登場するのは、みつきさん(ハンドルネーム)。離婚慰謝料400万円を含めた500万円を元手に投資を始め、足元で2000万円超に膨らますことに成功したシングルマザー投資家さんだ。
2012年に離婚、小学生の一人娘と二人暮らしに
「売らなきゃ、って思ってもなかなか売れずに持ちっぱなし。いわゆるアホールドってやつです」
そう笑って自分の投資スタイルについて話すみつきさんは、今から約10年前の2012年、離婚。娘さんと2人暮らしのシングルマザーという境遇に立たされながらも、その後始めた株式投資では、がっちり資産を拡大させたシッカリママさんだ。
投資を始めたのは、離婚後まもない頃。当時手元にあったのは、離婚時に受け取った慰謝料の400万円と自身の貯金の100万円の計500万円のみ。
「これから先、娘と2人で暮らしていくのにこれだけでは心もとなさ過ぎる」と不安感が襲ったことがきっかけでスタートさせた。
以降、アベノミクス相場の波に乗るという幸運も手伝い、500万円の元手は一時2500万円と5倍に膨らんだ。足元では2000万円とピーク時から500万円ほど減少したものの、それでも原資の4倍に拡大させている。
冒頭の「アホールド」とは、株式投資家の間で、作戦や改善策もないまま、株価が下がってもただただ保有を続ける愚かな行動を揶揄する場面でよく使われる言葉だ。
だが取材を終え、みつきさんの場合は、株式投資以外にも生活全般にわたる全方位にアンテナを張り、鋭い選択眼を光らせたうえでの一ひねりした、「みつき流の戦略的アホールド」なのだとわかる。
それはどんなものなのか。以降、具体的内容を見ていこう。
「選別の目」「効率化」「実行力」を生かす
みつきさんが主力とする投資法は、役立つ株主優待や高配当を獲得できる「インカムゲイン」に着目し、それらを得ながら長期投資をするやり方だ。
オーソドックスな手法とはいえ、みつきさんの投資法には後述する3つの創意工夫が施されている。
子育ての時間を優先し、仕事は非正規のパートタイマーの道を選んだため、正社員として働くのと比べて収入は少なくなる。それでも、娘に不自由な思いをさせたくないから、身につけた所作だ。その3つとは、
「選別の目」
「効率化」
「機敏な実行力」
――だ。それぞれの内容はどんなものか? まずは本記事の主題である投資について触れていこう。
自身で見極められるもの、しっかりとした土台を重視
株主優待&高配当狙いのみつきさんだが、もちろん優待が魅力的、あるいは高配当であれば何でもOK、というわけではない。
■みつきさんの家計に大役立ちのJT<2914>の優待品
注:本人が過去に撮影。以下同
本人が重視してきたのは、
「自身で実際に店舗に足を運ぶことができ、商品やサービスの良し悪しを見極められること」
そして、しっかりした土台を重視し、
「財務基盤や稼ぐ力が優れた企業を選別すること」
―― だ。
さすがに後者のファンダメンタルズの見極めは、投資開始時の全くのビギナーだった頃には、いきなりガシガシ進めるというわけにはいかなかった。
人気優待や高配当が獲得できる銘柄でも、購入後に株価が大きく下がってしまう苦い経験は嫌というほど味わってきた。
だが、そうしたステップを経て、安心して企業の稼ぐ力や財務の内容にも目を光らせるよう進化していく。これは、安心して長くホールドしていくために、みつきさんなりにたどり着いた作戦だ。
■ヨコレイ<2874>の優待品は、ノルウェーサーモンの詰め合わせ
『株探』を駆使し、財務や利益を得る構造は盤石かを見極め
現在は、銘柄選びの際には、『株探』をフル活用。個別企業の決算情報には目を光らせ、特に売り上げや利益が順調に伸びているか、そして、効率よく稼ぐ基盤が整っているかを見るために「売上高営業利益率」に注目する。ここで、値が10%を超えていれば、優先的に選別する材料になるのだという。
この観点からは、最近は、営業利益率が20%台と高水準を維持しているMマート<4380>に関心を寄せている。同社は、業者向けの食品卸売サイトを運営する会社だ。
■『株探プレミアム』で確認できるMマートの通期業績の収益性推移
並行して、自己資本比率の欄もチェックし、全資産に占める負債の割合が過去に比べて急激に膨らんでいないか、同業他社に比べて著しく多くないかを調べ、事業を続ける基盤がしっかりしているかを見極めている。
これは、「一度買ったらなかなか売れない」という自身の性格を鑑みてのこと。それならば、「財務面や、利益を出す基盤がしっかりしているものを選んでおけば、安心して長く保有できる」と考えたのだ。
こうした観点から候補銘柄の目星を付けたうえで、商品やサービスの「実態」がつかみやすく、実際に手に取ったり、自分の目で確認したりして、常に観察ができる銘柄を優先的に選んでいく。この行動は、投資を始めた当初から取り組んでいるやり方だ。
「正体がつかみづらい銘柄は好きではない。自分の肌感覚で良し悪しを見分けられるものを選びたい」と、みつきさんは話す。
先に紹介したように、財務や収益基盤がしっかりしていて、自身でもよい製品やサービスを提供している企業であれば、目先で少々の株価の下落に見舞われても、いずれは浮上できる可能性がある。
そして、長期にわたりインカムを得るうちに、自身のリターンも最終的には上がっていく。これが、みつきさんの考えだ。
優待利回りが最大化するよう保有、自然に分散投資に
また、インカム重視ということもあり、特に優待株では、優待利回りが最も高くなるような単元数で保有する。
例えば、配当の場合は、保有株数に応じてもらえる配当も増えるため、銘柄が同一なら株数を多く持つ投資家も少ない投資家も利回りは同じだ。
一方、優待の場合は「100株以上で◎◎円相当の優待品」などと定められるものが多いため、一般には保有単元数が多くなるにつれ利回りは下がる。
そのため、優待利回りが最大になるよう保有するには、各銘柄の保有単元数は100株など小さいものになることに。
結果、ポートフォリオの中は複数の銘柄で構成されることになり、自然に分散投資が効いた状態になっていることになる。
保有銘柄の中には、業績悪化等で株価が下がる銘柄も出る可能性はあるが、長い目で見れば、全体的には安定したリターンが期待できることになる。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。