安定第一主義だから、米国株にシフトを始める
ゆる~いようで強い! 投資家女子の決め技 みつきさんの場合-最終回
登場する銘柄
約10年前に離婚、一人娘のシングルマザーに。まだ小学生の我が子に
不自由させまいと、慰謝料と貯金を合わせた500万円を原資に投資に
着手。最初は銀行で勧められたブラジル・レアル預金で始めたが、
2014年1月にNISA(少額投資非課税制度)が始まることもあって、株式投資に
乗り出す。漫画家として活動していた経歴もあり、知的好奇心をフル稼働させ、
投資の勉強にのめりこむ。「PERとは? ROEって何?」の世界から、今では、
営業利益率や財務状況まで読みこなすまでに成長。
現在実践するのは優待&高配当株を狙った長期投資。現在の運用額は元本の4倍超の2000万円以上。
前回記事「元・漫画家のシングルマザーさん、慰謝料を「アホールド戦略」で4倍超えに」を読む
男性投資家とは、一味違う視点で株式投資に挑む投資家女子を紹介する本コラム。そのトップバッターとして登場するのが、有名少年コミック誌に連載経験もある元・漫画家のみつきさん(ハンドルネーム)だ。
投資スタイルは自称「アホールド」戦略。役に立つ株主優待や高配当株に長期投資してインカムを積み上げる。自分の目と足を使って確認できる事業を行っている企業で、財務や稼ぐ力が優れていると思われるところにターゲットを絞っている。
そして今、みつきさんの関心は、米国株に移り始めた。日本より成長力がありそうな国に投資した方が、安定して資産を増やせそうだという思いから。
シングルマザーのみつきさんにとって「安定」を求める気持ちは、人一倍強い。40歳代から始めた投資で、リターンを積み重ねて来られたのも、少しでも安定した状態にしたいという思いが下支えになってきた。
最終回は、みつきさんの投資を支えてきたものについて光をあてよう。投資に向かう心持ちは、銘柄選びのスタイルと共に、投資の腕を上げるのに重要な要素になるからだ。
自分の稼ぎで一人娘を育てなくてはならなくなったみつきさんが投資を始めたのは、少しでも生活を「安定した状態」にするためだ。
その考えが、銘柄選びにも投影されている。長期で安定して運用できることを第一に、収益そして財務が強いところかを重視している。
そうした自分の銘柄選びも、ブレずに安定してできるように心掛けている。常に平常心で投資できるように、家計も盤石にしておく。月々の収支は絶対に黒字を保ち、キープすることにこだわった。
そして、家庭環境も穏やかな状態になるように気を遣った。
投資に取り組み始めた頃は、一人娘も育ち盛りの小学生。子育てをぬかりなく行うために、フルタイムで働く正社員になるのはやめ、非正規のパートタイマーを選んだ。
当然、給与は正社員になるより低くなる。文部科学省の調査では、塾や習い事を含めた教育費は中学校3年生の時にもっとも多くなる(参照:「児童手当」を利用すれば300万円は余裕! 教育資金作りの王道とは)
それでも、知恵とアイディアをフル稼働させて家計の黒字を維持したのは、今も変わらない。その原動力が投資で成果を上げてきた「選択の目」「効率化」「機敏な実行力」だ。
食費はやりくり上手な腕を発揮し月2万円
まず、家計の主要部を占める食費では、娘と2人でかかる月々の出費は2万円前後に留めているという。
料理が好きだというみつきさんは、スーパーで特売される食材などを使い、効率よくおいしいおかずを作るのが得意。そのため、さほど苦痛にはならず、むしろ楽しい習慣としてエンジョイしている。
■お正月にみつきさんが作ったおせち料理
注:過去に本人が撮影(以下同)
この食費削減に大いに貢献しているのが、茨城県中心に食品スーパーを展開するJMホールディングス<3539>(JMHD)の優待品だ。
同社からは、娘の名義と合わせて2人分の優待品をゲット。大きな肉が自宅に送られるのが毎度の楽しみだが、その場合でも一気に食べるというムダはしない。
ポイントは初めに肉を小分けにしておくこと。JMHDから冷凍で届く肉の場合は、いったん解凍して下味をつけてから小分割し、再び冷凍して保存する。そうしたうえで娘と2人、毎回の食事で食べる分だけ解凍して使う。スーパーの特売日を利用して大量買いした場合も同様だ。
あらかじめ肉を分けておけば後々の調理もスムーズにでき、食べ残しの無駄もなくなる。ある意味、効率化の一環といえる取り組みだ。
その他、サーモンが届くヨコレイ<2874>やお米などの優待品を役立てるほか、外食サービス関連の株主優待もフル活用。この分野ではすかいらーくやアトムなどのチェーン系の株を多く持ち、外食はほぼ優待でまかなう。
一方、「優待でもらうクオカードは使いきれない」と話すみずきさんは、クオカードが使えるからといって、ホイホイとコンビニエンスストアでお金を使い落すことはしない。
コンビニでは食品のまとめ買いはしづらいし、そもそも特売などはなく、商品が割高だからだ。コンビニはまさにお手軽で便利な存在だが、ここでもしっかり選択の目を効かせ、流されて衝動買いに至ることはない。この習慣も、家計の黒字化に貢献できている点だ。
「楽天経済圏」に利用を集約、「ポイ活」にも熱心
食費以外の生活費では、やはり選択の目により、極力、楽天グループ<4755>が展開するエコシステム(生態系)、わかりやすくいえば同グループの経済圏に買い物やサービス利用を集約させる工夫もする。いわゆるポイントを賢く貯めてお得に使う「ポイ活」という取り組みだ。
楽天で特徴的なのは、おなじみの「楽天ポイント」。買い物をはじめ、様々なサービス利用でポイントが貯められ、時折ボーナスポイント付与の特典企画も豊富なのが人気だ。貯めるのも、使うのもお得なポイント制度を使わない手はないと、みつきさんは同サービスもフル活用中だ。
さらに、同社のポイントシステムには、指定のキーワードを検索エンジンで検索するだけで、出費を伴わずにポイントゲットできる特典もある。こうした地道な手作業も面倒と思わずに手掛け、お得度をアップさせて生活費のサイズダウンを図っている。
必要以上の保険はカット、学費は奨学金も有効活用
家計で膨らみがちな出費の1つ、生命保険や医療保険などの保険関連では、「機敏な実行力」を発揮しテコ入れをした。
一般に保険は、ついつい営業員の勧誘に乗り、必要以上の保障がつくタイプに加入したままほったらかしのケースも多い。だがみつきさんは、ここでも選択の目を光らせる。
特に最近は、医療費などは自助努力で貯めればいいという発想に切り替え、無駄な部分はすべてカットへ。
以前に加入し、受け取る保険金の利率がいいもの、そして、保険料が割安な共済の保険による最小限の範囲にとどめ、他は解約して月々の出費を抑えることとした(参照:新型コロナウイルス感染拡大で、やっぱり民間の医療保険は必要?)。
また、保険とは異なるが、娘の進学費用は国やその他の奨学金制度をフル活用して学費負担を軽減させている。複数の奨学金を利用するうち、返済時には、利子の高いものから片づけていく計画だ。
自己投資の攻めからも安定を求める
これらはごく一部に過ぎないが、こうしたやり方を主として家計の黒字化を成功させたみつきさん。だが、安定を得るために、節約一辺倒というわけではない。
「新しい情報を得ること、そして勉強が好き」という知的好奇心を生かし、有効と思えば、時間とお金を自己投資に向ける取り組みも行う。そうした攻めの姿勢からも、最終的には安定基盤を築くことを狙うのだ。
みつきさんは、シングルマザーになり、仕事、子育て、株式投資と忙しい中で積極的に自己研鑽にもチャレンジ。昨年20年には簿記3級、その後は、「危険物乙類4種」と呼ばれる危険物取り扱いの資格、次いで電気工事士の資格取得にも成功した。
今は居住する県の関係の公的な仕事に就いているものの、その仕事もいつまでも安定的という保証はない。その先の安定を得るため、また自身の選択肢を狭め、弱者にまわらないために先手を打つのが目的だ。この成果は「機敏な実行力」のたまものでもある。
■資格取得時に古本で買った教材の写真
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