明日の株式相場に向けて=半導体ツートップ人気と売買代金
きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比392円高の2万9069円と急反発。朝方急上昇した後に伸び悩み、きょうのところは終値での2万9000円台乗せはお預けかと思われたが、終盤の追い込みが利いた。受け渡しベースではきょうが12月の月内最終商い日であり、言い換えれば“2021年相場”の実質最終日で、あすから新年相場にバトンを渡すことになる。前日は日経平均の動きにも反映されたように、半導体主力株を除いて大型株の動きがさっぱりだったが、きょうは、一転してフシ目の2万9000円大台をクリアし、商い薄の域は出ないものの5営業日ぶりに売買代金も2兆円台に乗せた。にわかに東京市場に色が戻ってきた感がある。
クリスマスを挟み3連休明けとなった前日の米国株市場では、遅れてきたサンタクロースラリーとばかりに主要3指数が揃って大きく買われ、S&P500指数は史上最高値更新となった。日経平均3万円大台が依然として遠い東京市場も、機関投資家目線に立ってリターンリバーサル妙味が当然ながら意識されてくることになる。
ただ、売買代金上位10傑の主力株の動きをみると、半導体に絡む銘柄に人気が集中し、それ以外はパッとしない。いまや売買代金首位が定位置となったレーザーテック<6920>や東京エレクトロン<8035>など半導体製造装置の主力、あるいは台湾TSMC<TSM>と半導体工場建設で連携するソニーグループ<6758>などは高いが、マイナス圏に押し込まれている銘柄も4つあり、全体で86%の銘柄が上昇したイメージとはやや趣を異にしている。取引時間中は米株価指数先物を横にらみに2万9000円台を挟んで往ったり来たりと神経質な展開で、今一つ疑心暗鬼なムードが漂う。
世界的なインフレ懸念とはだいぶ温度差があるとはいえ、日本国内でも食品などを中心に製品値上げのアナウンスが相次ぐようになってきた。来年は米国を主戦場に、否応なくインフレ警戒=金融引き締めのステージと株式マーケットがどう対峙するかがポイントとなっていく。経済正常化の過程と金融政策正常化の過程が同時進行することで、株式市場への影響はフラットとなるのか、それとも企業のバリュエーション面の割安さを拠りどころに株価上昇圧力が勝るのか。一方、過剰流動性がコロナ禍で急激に増加した反動局面に入っていることを考慮すれば、アフターコロナの時間軸ではむしろ下値リスクに備えなければならないという見方もある。これは今の時点では何とも言えない。
日経平均の今年9月以降約4カ月にわたる激しい上下動は、チャートでみるとアベノミクス相場がスタートした2012年まで遡ってもあまり前例がない。三角もち合いが煮詰まっているという見方もできなくはないが、動きが急過ぎて高値波乱という定義にも当てはまる。市場関係者に聞いた限りでは年明けは強気の見方を示す向きが多い。しかし油断はできない。マザーズ市場の戻りの鈍さには怖さがある。同市場の信用評価損益率が改善する前に、担保株となっている東証1部株に異変が生じると、これまでは我慢できていた追い証回避の投げが堰を切る可能性も念頭に置いておく必要がある。
現在、脚光を浴びている半導体製造装置関連だが、ツートップのレーザーテクと東エレクの動きにマーケットのセンチメントが集約されている部分がある。今のレーザーテクのように、売買代金トップの銘柄は一定期間同じ顔が続くことが多いが、その時の全体相場を象徴する。かつては、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクが上位を独占していた時期もあったし、ソフトバンクグループ<9984>は昔からの常連であり、このほか任天堂<7974>、最近では日本郵船<9101>など海運大手もトップの座を占めることが多かった。
レーザーテクが売買代金首位の座から外れる局面が常態化したら、それは半導体関連のテーマがマーケットの中心軸を離れることを暗示する。裏を返せば、それまでは半導体関連がマーケットにおける最大テーマであると考えておいてまず間違いがない。新年相場もその流れの中で個別銘柄を探していくのが実践的な手法の一つとなる。
あすのスケジュールでは、国内では東証マザーズにInstitution for a Global Society<4265>が新規上場する。海外では11月の米仮契約住宅販売指数など。(銀)
最終更新日:2021年12月28日 17時02分