デリバティブを奏でる男たち【14】 アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(前編)

特集
2022年1月14日 17時00分

◆ヘッジファンド報酬ランキングの常連

第14回はアパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパーを取り上げます。彼は高額報酬ランキングで常に上位にランキングされるヘッジファンド・マネージャーです。彼が創設したアパルーサ・マネジメントは2019年まで年平均およそ25%という驚異的な運用成績を誇っていたという報道もあるくらいですから、高額報酬も当然のことなのかもしれません。ちなみに、彼の最高年間報酬額は2009年の40億ドルとされています。

1957年9月生まれのデビッド・アラン・テッパー(通称デビッド・テッパー)は、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ人の家庭で育ちました。何かと争いごとの絶えない地元のピーボディ高校を冴えない成績で卒業しており、評価がAだった科目は一つもなかったといわれます。

ところが、その後に入学したピッツバーグ大学では、経済学を専攻してトップの成績を収め、飛び級により3年半で卒業しています。このギャップは、彼の優れた「直観像記憶」が要因であると推測されます。「直観像記憶」とは、見たものを写真のように正確に記憶して後から再現できるという特殊能力です。恐らくは大学時代に、この能力が存分に発揮されたのでしょう。

大学卒業後の1978年に、地元の地方銀行エクイバンクの信託部門でクレジット・アナリスト、および証券アナリストとして勤務します。しかし、待遇に不満を抱いて会社を辞め、カーネギーメロン大学のビジネススクールで学び直すことにしました。そこでは経営学修士号(MBA)に相当する産業経営学修士号(MSIA)を優秀な成績で取得しています。

卒業後は米鉄鋼会社リパブリック・スチールの財務部門で2年間働き、1984年にキーストーン・ミューチュアル・ファンズ(現在はウェルズ・ファーゴ<WFC>の子会社エバーグリーン・インベストメント)のジャンクボンド(※)部門のアナリストとして1年間勤務します。そして、その後にゴールドマン・サックス・グループ<GS>へ転職しました。(※ジャンクボンド=格付けがBB+以下、投資不適格で債権回収の可能性が低い債券、ハイイールド債ともいう)

【タイトル】

◆ゴールドマンからの独立

ゴールドマンでは当初、ジャンクボンド部門のクレジットアナリストをしていましたが、年末にはジャンクボンド・トレーダーに昇格。翌年には同部門のトップトレーダーとなります。ところが、仕事に専念しすぎるあまりか周囲への配慮に欠けていたらしく、評判は良くありませんでした。

会社には何百万ドルという利益をもたらし、1988年と1990年の2度にわたって同社の役員候補となりますが、いずれも却下されてしまいます。当時、ゴールドマンの共同会長となり、後に財務長官にもなるロバート・ルービンにテッパーは助言を求めましたが、彼をしても手助けができませんでした。これにより会社員は自分に向いていないと判断したのか、テッパーは独立を決意します。

1993年になると、同じくユダヤ系で後にヘッジファンド、MFPインベスターズを創設する投信業界の巨人、マイケル・F・プライスのオフィスに席を借りて独立の準備を始めます。そして、ゴールドマン・アセットマネジメントでシニア・ポートフォリオ・マネージャーをしていたジャック・ウォルトンとともに、5700万ドルをかき集めてファンドを設立しました。

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◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。


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