米国株式市場見通し:PPIや小売売上高に注目
急速な利上げ観測やロシアのウクライナ侵攻を巡る警戒感が上値を抑制しそうだ。政府はロシアが冬季オリンピック中にもウクライナを侵攻する可能性を警告。短期的なリスクとなり、来週も神経質な展開になりそうだ。ただ、地政学的リスクは短期的に売り材料となるものの、良い買い場になることが多いため、最悪の状況とならない限り、下値は限定的だろう。
そうした中、重要なインフレ指標のひとつ生産者物価指数(PPI)や小売売上高の1月分に注目したい。今週発表された1月CPIが1982年以降40年ぶり最大の伸びを記録したためFRBの急速な引き締めを正当化するとの思惑が強まり、投資家心理を悪化させた。1月PPIは伸びの鈍化が予想されており、想定通りとなった場合は、投資家の安心感に繋がるだろう。また、1月の小売売上高も供給不足を恐れ昨年の年末商戦が前倒しで進んだ影響で想定外に落ち込んだ12月からプラス改善予想で、相場下支え要因になりそうだ。
また、オミクロン変異株流行の終息に伴う経済活動の本格的再開で景気循環株の上昇も始まったばかりだ。今回の決算でも、経済再開銘柄の好決算が目立つ。さらに、確定申告が開始され税還付金が消費や投資に回され、株式市場に流入することも相場下支え材料になるだろう。
経済指標では、1月生産者物価指数(PPI)、2月二ューヨーク連銀製造業景気指数(15日)、1月小売売上高、1月鉱工業生産・設備稼働率、12月企業在庫、2月NAHB住宅市場指数(16日)、1月住宅着工件数・住宅建設許可件数、2月フィラデルフィア連銀景況指数(17日)、1月中古住宅販売、1月先行指数(18日)などが予定されている。小売売上高は12月のマイナスからプラスへの改善が予想されている。
また、FRBは16日に、1月開催分のFOMC議事録を公表予定。FRBはこの会合で政策金利を据え置いたが、近く政策金利の引き上げが適切になること及び3月の利上げの可能性を示唆した。その後に行われた会見で、パウエル議長は利上げ後、年後半にバランスシート縮小に着手するなどの引き締めの道筋を示しており、議事録では利上げやバランスシート縮小のタイミング、スピードを巡る言及に注目だ。
主要企業決算では、旅行予約サイト運営のエアビーアンドビー、エネルギー会社のデボン・エナジー、メディアのバイアコムCBS、カジノを経営するウィンリゾーツ、眼鏡小売りのウォービー・パーカー(15日)、半導体メーカーのエヌビディア、ネットワーク機器メーカーのシスコシステムズ、食品加工会社のクラフト・ハインツ、フードデリバリーサービスのドアダッシュ、エネルギー会社のマラソン・オイル、ホテルチェーンを経営するハイアット・ホテルズ、靴メーカーのクロックス(16日)、ディスカウント小売りのウォールマート、動画配信のロク、ハンバーガーショップチェーンのシェイクシャック(17日)、電気自動車のリビアン、農機具メーカーのディア、オンライン賭けサイト運営のドラフトキング(18日)、などが予定されている。
小売りの決算では、経済活動の本格的再開に伴う需要増がプラス要因も、世界的な運送コストや人件費などのコスト上昇が利益率にどの程度影響したか、見通しに合わせて注目だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》