明日の株式相場に向けて=ロシア・デフォルトと「リーマンの亡霊」
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比430円安の2万4790円と大幅安で3日続落。わずか3営業日の間に1800円近い暴落である。あっという間に2万6000円台半ばから大台を2つ替え、2万4000円台へとまさにつるべ落としのような下げとなった。
混沌とするウクライナ情勢、出口が一向に見えないトンネルにしびれを切らしたように、世界のマーケットは同時株安の様相を強めている。前日の欧州株市場はほぼ全面安、西欧で高かったのはポルトガル市場のみだ。ただ、下落率は独DAXで2%弱の下げ、仏CAC40で1.3%安とそれほど大きく売り込まれた感じではなかった。ところが、NY時間では再びリスクオフの波が大きくなった。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の下落率は3.6%台に達した。日によって波高は変わるが、怒涛の売り圧力はここ数日、東京市場にも押し寄せている。
商品市況高が続いているからといって、非鉄や資源エネルギー関連株が上がり続けるということはない。関連銘柄として買われている企業は、劇的に収益が伸びるかといえば必ずしもそうではないからだ。例えば金やニッケル市況の先高期待が強いから住友金属鉱山<5713>の株価上昇も担保されるということは全くない。あくまで株式需給思惑のなかで買いが集まっている。その住友鉱はきょう寄り付き早々に6372円の高値をつけたが、その後は400円を超える下落で6000円台を割り込む場面があった。アルミ市況高騰を背景に買われてきた大紀アルミニウム工業所<5702>はもっと苛烈で、きょうはマドを開けての大陰線を形成し、いきなり75日移動平均線を下に抜け、東証1部の値下がり率トップとなった。売買代金上位の常連となった日本郵船<9101>など海運株もしかり。きょうは利益確定売りのターゲットとして被弾し、また、資源開発事業を手掛ける三菱商事<8058>などの総合商社も軒並み売りに押された。
一方、これまで売り込まれてきたレーザーテック<6920>や東京エレクトロン<8035>など半導体の主力株は朝安後にプラス圏に切り返す動きをみせた。キーエンス<6861>なども高く、ハイテク値がさ株の一角には資源関連株と入れ変わる形で買いが優勢に転じる銘柄が散見された。これは、アンワインド(巻き戻し)といわれるAIアルゴリズムが闊歩する株式市場特有の動きで、「資源買いのハイテク売り」の逆転売買によって生じる。ところが、戻る側のハイテクセクターの方は、空売りの買い戻しが一巡すると、足もとが急におぼつかなくなり、前日終値近辺で右往左往。レーザーテック、東エレクともマイナス圏で引けた。これが今の相場の実態であり、黙っていても売りが湧いてくるような地合いである。
ロシアへの金融制裁として国際決済網のSWIFTからロシアの銀行を外すという措置に西側諸国は踏み切ったが、現状はロシア最大手銀であるズベルバンクは対象外としている。ロシア産の石油・ガスの決済手段を失えば、エネルギー価格の高騰という形で欧州側も経済的なダメージを負うことになる。その弱腰を見透かされたように、ロシア側からは天然ガスのパイプラインを閉鎖するぞと、ドイツなどは逆に脅しをかけられている。プーチン露大統領は正気か狂気かは分からないが、不退転の心づもりであることだけは間違いない。
ここ欧州株は全面安商状が続いているが、「最近は欧州の銀行株の下げが際立っている」(中堅証券マーケットアナリスト)とする。ロシア向け債権のデフォルトリスクが意識されているのだ。そのなか、市場関係者が気になるのは、やはり財務体質が脆弱なドイツ銀行<DB>の存在だろう。あまり報じられてないが、同社の株価は2月上旬につけた高値からわずか1カ月弱で何と40%以上の暴落となっている。これは欧州全体、そして世界にとってもかなりのプレッシャーとなり得る。「リーマン・ショック(の再来)」、これは、かなり前から話のネタとして市場関係者の言葉の端には出てきていたが、ウクライナ問題が大きな炎と化すなかで、いやが上にも08年相場のクラッシュが脳裏をよぎる。
あすのスケジュールでは、21年10~12月期GDP(改定値)、2月のマネーストック、2月の工作機械受注額など。海外では韓国大統領選、2月の中国消費者物価指数(CPI)、2月の中国卸売物価指数(PPI)、米10年物国債の入札など。なお、韓国市場は休場となる。(銀)