上値重いプラチナ、見据えるウクライナ危機の終着点 <コモディティ特集>

特集
2022年3月30日 13時30分

プラチナの現物相場は、原油や金の急伸につれ高となり、昨年6月以来の高値1177ドルをつけたのち、原油高一服を受けて調整局面を迎え、1000ドルの節目を割り込んだ。ロシアのウクライナ侵攻を受けて西側諸国が対ロ制裁を発動、米英がロシア産原油の輸入禁止を発表し、エネルギー価格が高騰した。

ただ、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)に原油増産を働きかけたことを受けて原油高は一服した。その後はロシアとウクライナの停戦交渉の行方が見守られるなか、1000ドル割れでまとまった安値拾いの買いが入って下げ一服となった。しかし、交渉が難航し、ウクライナでの戦闘が長期化し、景気の先行き懸念が強まると、戻りを売られ、再び1000ドルの節目を割り込んだ。

西側諸国の対ロ制裁を受けてロシアの工場が停止されるなど、自動車生産が減少し、自動車触媒の需要減少に対する懸念が出ている。また、米国債の長短金利が逆転し、景気後退(リセッション)に対する懸念も出ており、ウクライナ危機が続くと、プラチナは次の支持線となる900ドルを目指す可能性も出てくる。

ただ、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、プラチナは昨年から2年連続の供給過剰になるが、今年の供給過剰幅は縮小すると予想しており、安値で買い戻されれば下支え要因になるとみられる。当面はロシアのウクライナ攻撃がいつ停止して終戦に向かうかや、景気見通しが焦点である。

●ウクライナ危機の終着点

ロシアは2月24日、ウクライナに侵攻した。プーチン大統領は当初、電撃戦でウクライナを制圧することを目指したが、ゼレンスキー大統領が首都キエフにとどまり、徹底抗戦を呼び掛けると、ウクライナ軍の抗戦で戦線がこう着した。西側諸国の対ロ制裁発動・強化、新興財閥(オリガルヒ)への対象拡大でロシア経済は孤立し、長期戦は難しいとみられている。プーチン大統領が戦争終結に向け、妥協する用意はないもよう、と伝えられているが、タイミリミットが迫っている。

プーチン大統領は3月23日、非友好国に輸出する天然ガス代金のルーブル支払いを要求したが、先進7ヵ国(G7)は拒否することで一致した。ロシアの資金枯渇で軍事行動に支障が出れば停戦交渉をまとめる必要が出てくる。

ロシア財務省は29日、4月4日に償還期限を迎える元本20億ドルのユーロ債について、ドルではなくルーブルで買い戻すと発表。ロシアは外貨建て債務の債務不履行(デフォルト)に対する懸念が出てから利払いを3回実施している。次は31日に4億4700万ドルの利払い、4月4日に元本20億ドルの支払いが控えている。元本償還は制裁発動後初めてで、支払えるかどうかが焦点である。ルーブルでの支払いが条件に違反すればデフォルトとなる可能性がある。

ロシア軍高官は25日、真の目的はウクライナ東部ドンバス地域の「解放」だと述べ、軍事専門家は面目を保てるよう「ゴールポスト」を動かしたとみている。ロシアとウクライナの停戦交渉が29日にトルコで再開し、合意には至らなかったが、協議が進展した。ロシアはキエフ近郊での軍の展開を大幅に縮小することを決定し、ウクライナは安全保障と引き換えに中立化を提示し、交渉は今後も続く見通しとなった。

ロシアのペスコフ報道官は22日、自国の存在が脅かされた場合にのみ核兵器を使用すると述べており、ウクライナ危機の終着点としては戦闘継続後の停戦合意、ロシア暴走、プーチン失脚などのシナリオが考えられる。どのシナリオになるにしろ、西側諸国の対ロ制裁解除には、ロシア軍の停戦と撤退、侵攻しないとの確約が必要になる。

●プラチナETFから投資資金が流出

プラチナETF(上場投信)残高は3月28日の米国で37.14トン(2月末35.72トン)、英国で16.26トン(同16.82トン)、南アフリカで11.01トン(同12.91トン)となった。合計で1.04トン減少した。米国で増加したが、22日のピーク37.29トンから減少した。ウクライナでの戦闘長期化による景気の先行き不透明感で投資資金が流出した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月22日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万9815枚(前週1万7932枚)に拡大した。原油や金の急伸を受けて3月8日に2万5833枚まで拡大したのち、縮小に転じた。3月に入ってからの1000ドル割れでテクニカル面の強気観が後退しており、当面は方向性を模索する動きになるとみられる。ただ、ウクライナの停戦期待が高まれば、安値拾いの買いが入るとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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