S&P500 月例レポート ― 4月の雨は5月に不安の花を咲かせる? (3) ―

市況
2022年5月18日 11時41分

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

○3月15日~16日に開催されたFOMCの議事録では、バランスシートの縮小ペースを加速する必要があるとの見解で全メンバーが一致したことが明らかになりました。具体的には、国債で月額600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)で同350億ドルを上限に削減することで概ね合意しました。これにより、1年間で合計約1兆ドルが削減されることになります(FRBは11兆ドル相当の資産を保有しています)。

○パウエルFRB議長は、次回会合(5月3日~4日)で0.50%の利上げを実施し、その後もインフレ動向に応じて同程度の追加利上げが必要になる可能性があるとの見方を明らかにしました。

⇒驚いたことに(コメントしただけなので動揺はしていません)、セントルイス連銀のブラード総裁は、0.75%の利上げの可能性も「排除しない」が、「それは私の基本シナリオではない」と発言しました。その後、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、0.25%、0.5%、0.75%の利上げの可能性について論じました。FOMCの2週間前に公表される地区連銀経済報告(ベージュブック)では、インフレが終息する兆候はほとんど見られず、労働市場の逼迫とサプライチェーンをめぐる問題が持続していることが示されました。

●企業業績

○2022年第1四半期決算は、またもや予想を上回る水準で推移しており、これまでに決算発表を終えた264銘柄中209銘柄(79.2%)で営業利益が予想を上回り、45銘柄で予想を下回り、10銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では261銘柄中187銘柄(71.6%)で予想を上回りました。

⇒2022年第1四半期は過去最高を記録した2021年第4四半期から9.3%の減益が見込まれますが、前年同期比では8.5%の増益となる見通しです。

⇒2022年通年の利益は前年比9.3%増と、過去最高益を再度更新する見通しで、2022年の予想株価収益率(PER)は18.2倍となっています。

⇒2023年の利益は同9.9%増が見込まれ、予想PERは16.5倍となっています。

⇒2022年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は17.8%でした(2021年第4四半期は14.9%、2021年第1四半期は5.8%、2019年第1四半期は24.9%)。

⇒2022年第1四半期の営業利益率は12.64%で、第4四半期の13.41%から低下しましましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.21%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。

●個別銘柄

○電気自動車メーカーのテスラ<TSLA>のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、(経営に関わらない)受動的な投資としてソーシャルメディア企業ツイッター<TWTR>の株式7350万株(9.2%、総額約20億ドル)を取得しました。取締役への就任が提示されましたが、辞退しました。

⇒その後、マスク氏はツイッターに対し、「最善かつ最終的な提案」として430億ドル(1株当たり54.20ドル)での買収を提案しました。

⇒同氏はツイッター上で、「Love Me Tender」などとツイートして株式公開買い付け(TOB)の可能性を示唆し、買収資金として465億ドルを確保していることを明らかにしました。

⇒ツイッターとマスク氏は直接交渉を行い、ツイッターは1株当たり54.20ドルの買収提案を受け入れることに合意しました。

→マスク氏は買収資金を工面するため、保有するテスラ株約85億ドル相当を売却しました。

○コーヒーチェーン大手のスターバックス<SBUX>の創業者で元CEOのハワード・シュルツ氏はCEOへの復帰初日に、自社株買いを停止し、「より多くの利益を人材と店舗に投資する」と表明しました。

○ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーハサウェイ<BRK.B>は、コンピューターメーカーのヒューレット・パッカード<HPQ>の株式1億2100万株(11%)の保有を明らかにしました。

○通信大手AT&T<T>はワーナーメディアのスピンオフを完了し(AT&Tの株主はAT&T株1株当たり新会社の株式0.241917株を受領)、その後ワーナーメディアはS&P500指数構成企業のDiscovery Cl(クラスA株(DISCA)、クラスC株(DISCK))と経営統合してワーナー・ブラザース・ディスカバリー<WBD>となりました。Discovery Clがワーナー・ブラザース・ディスカバリーに社名変更したため、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、Discovery ClのクラスC株を存続会社として引き継ぐことにしました。

⇒S&P500指数の銘柄数は504銘柄になりました。同指数は500社で構成されますが、5社については、2つのクラスの株式が指数に採用されていたため、これまで銘柄数は505銘柄でした。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは方針を変更し、複数クラスを指数に採用しないこととしましたが、これらの企業は適用が除外されていました。今回、Discovery ClのクラスA株が指数から除外されたため、現在のS&P500指数の構成銘柄は504銘柄となりました。2クラスの株式が指数に採用されている残りの4社は、アルファベットのクラスA<GOOGL>とクラスC<GOOG>、フォックスのクラスA<FOXA>とクラスB<FOX>、ニューズ・コーポレーションのクラスA<NWSA>とクラスB<NWS>、アンダー・アーマーのクラスA<UAA>とクラスC<UA>です。

○動画配信大手のネットフリックス<NFLX>の株価は、4月に49.2%下落し、年初来では68.4%の下落となりました。同社は第1四半期の有料会員数を250万人増と見込んでいましたが、実際には20万人減となり(ロシアでのサービス停止による70万人減を含む)、第2四半期にはさらに200万人減少すると警告しました。

○オンライン小売りのアマゾン・ドット・コム<AMZN>の第1四半期決算は、2015年以来の赤字となりました。コストの増加、オンライン注文の減速、サプライチェーン問題などが売上高と利益の重石となりました。会社側は、第2四半期は黒字を回復するものの、「状況は厳しい」との見方を明らかにしました。

○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、不動産企業カムデン・プロパティ・トラスト<CPT>をS&P中型株400指数からS&P500指数に移行し、M&Tバンク<MTB>に買収されたピープルズ・ユナイテッド・ファイナンシャルをS&P500指数から除外しました。

●注目点

○航空会社のデルタ・エアーラインズ<DAL>とユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス<UAL>は、旅行の回復により第2四半期は黒字を回復するとの見通しを明らかにしました。

○米国の金利は引き続き上昇傾向にあり、米国10年国債利回りは2021年末の1.51%から一時2.98%まで上昇しました(2020年末は0.92%)。

※「4月の雨は5月に不安の花を咲かせる? (4)」へ続く

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