NYダウ3万ドル割れ目前、「CPIショック」が意味するもの <株探トップ特集>

特集
2022年6月14日 19時30分

―6月FOMCに0.75%利上げ観測浮上、夏場に向け荒い相場は続く―

14日の日経平均株価は前日比357円安の2万6629円と大幅に3日続落。この3日間で1600円強の大幅下落となった。この急落の震源地となったのが、NY市場だ。13日には、NYダウナスダック指数はともに4日続落し年初来安値を更新した。10日に発表された5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ったことで、インフレ懸念が高まり、年後半にかけ利上げ加速の公算が強まっている。果たして、14日から15日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、米株式市場と東京市場はどう動くのか。

●インフレピークアウト説は総退却状態に

13日のNYダウは前週末に比べ876ドル安の3万516ドルと大幅に4日続落し年初来安値を更新した。また、ナスダック指数も同530ポイント安の1万809と新安値となった。NYダウは3万ドル、ナスダック指数は1万割れが目前に迫った。NYダウが3万ドル割れとなれば2021年1月以来、約1年半ぶりのこととなる。この急落の要因となったのが、10日に発表された米5月CPIだ。

同CPIは前年同月比で8.6%上昇と40年5ヵ月ぶりの水準となった。4月(8.3%)と同水準を見込んでいた市場予想に反して一気に上振れた。この結果、「市場に浮上していたインフレピークアウト説は総退却を迫られた」(市場関係者)。

「CPIショック」と呼ぶ声も出るなか、6月FOMCでは、それまで有力視されていた0.5%利上げが、13日の米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道もあり0.75%もあり得るとの見方に変わった。米金利先物市場では、6月FOMCでの0.75%利上げの確率は9割を超える水準となっている。同市場では、7月と9月に0.75%と0.5%の利上げを実施しながら、年末の12月に短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3%台半ば(現在0.75~1.00%)まで引き上げられる、とみている。

●米市場はスタグフレーションも意識

そんななか、いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「CPIの発表を経て投資家の心理がインフレ加速への警戒に一気に変わった。しかし、いまの金利の上昇懸念は少し行き過ぎかもしれない」と指摘。同氏は、6月FOMCでは0.5%の利上げにとどまると予想しているが、「とにかく今回のFOMCに市場がどんな反応を示すか確かめる局面にある」とみている。

また、フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、「債券市場では逆イールドも発生しており、先行きの景気後退やスタグフレーションも意識する状況にある」と指摘。しかし、「バイデン政権はインフレを抑制しないと今年の中間選挙に勝てない状況。米国では、需要面に加え供給要因がインフレをもたらしており、景気の悪化を呼んでも利上げはやらなければいけない状態だ」という。

更に第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「6月FOMCは0.5%も0.75%も、場合によっては1.00%の利上げもあり得る状態。市場心理は極端に大幅な利上げに傾いており、FOMCの結果が明らかになれば、いったん相場は落ち着くかもしれない。しかし、7月以降も利上げ局面は続くだけに、夏場に向け相場は激しい値動きが続く可能性はある」ともみている。

●20年2月の株価水準が当面の下値メドか

では、NYダウは3万ドル割れが迫るなか、現時点で想定される下値メドはどこか。「経済正常化という点からもコロナ禍前の20年2月頃の株価水準を意識するべきではないか」と前出の笹木氏はいう。

20年2月のNYダウの高値は2万9568ドルだが、22年1月の最高値(3万6799ドル)から2割押しの水準である2万9600ドル前後が当面の下値メドとみている。「NYダウの3万ドル割れから2万9600ドル前後は自律反発しやすい水準だ」と同氏はいう。同様にナスダック指数も20年2月の9800前後が下値メドと予想している。

●「FAANG2.0」などに注目

経済正常化を意識すると、コロナ禍での過剰流動性の恩恵を享受してきた、米IT大手のアップル<AAPL>やアマゾン・ドット・コム<AMZN>などの「GAFA」銘柄は厳しい状況が予想される。その一方で、注目されているのが、「FAANG2.0」あるいは「新FAANG」と呼ばれる燃料、航空防衛農業原子力再生可能エネルギー、金・鉱物といったセクターだ。また、東京市場は「超低金利政策の継続や安定した政治状況、円安による業績拡大などを評価して、米国や欧州市場から逃避してきたマネーの受け皿となりやすい」(アナリスト)として比較的底堅い展開が継続することを予想する声は少なくない。とはいえ、相場を取り巻く環境は大きく変わったことは確かだ。CPIショックを経て、米国のインフレに対する一段と厳しい見方が増えるなか、夏場に向けた相場の一段の乱高下に備えることが必要となっている。

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