【杉村富生の短期相場観測】 ─QT、利上げに翻弄される株式市場!

市況
2022年6月26日 9時15分

「QT、利上げに翻弄される株式市場!」

●商いの薄いところに投機筋が介入

冴えない相場展開となっている。テクニカル的には下値に届いていると思う。しかし、買い上がる力が乏しい。当面、下値模索の動きだろう。なにしろ、手掛かり材料に欠ける。“期待の星”だったANYCOLOR <5032> [東証G]は失速気味だ。これは人気離散に拍車をかける。

もちろん、逆行高の銘柄はある。だが、主軸株がさえない。特に、年初以来の相場を引っ張ってきた三菱重工業 <7011> [東証P]、日本製鉄 <5401> [東証P]などが値を消している。恐らく、内外の機関投資家の売りだろう。

彼らはFRB(米連邦準備制度理事会)の急激な金融引き締めに脅え、身構えている。リスクオフの姿勢が鮮明だ。市場参加者が少ない(薄商い)ところを狙って、投機筋が売り攻勢をかけている。機関投資家はリスクパリティと称するヘッジをかけざるを得ない。基本はリスク資産の圧縮と先物でのつなぎ売りである。

この結果、インデックスは下がると一般安となる。反面、上昇に転じると、ヘッジが次々に解消され、一段高となる。“空中戦”とは個人投資家にとって、不毛の闘いである。株価は機械的に、上下動を繰り返すことになる。上がれば良い。しかし、ここ数カ月は大名行列のように、「下にィ~下にィ~」の状況ではないか。

●好業績、割安のグローバルキッズCOMPANY!

ただ、外部環境はSOX(半導体株)指数、長期金利(米10年物国債利回り)は落ち着いている。VIX(恐怖)指数は低下気味だ。原油(WTI)は1バレル=100ドル台にある。特段、パニックに陥るような状況にない。しかし、マーケットが危惧しているのはオーバーキル(金融引き締めが効きすぎて景気が失速すること)のリスクにあろう。

FRBは3月に0.25%、5月に0.5%、6月に0.75%の利上げを行ったが、7月は0.5~0.75%、9月は0.5%程度の利上げを計画している。CPI(消費者物価指数)上昇率(3月が8.5%、4月が8.3%、5月が8.6%)に対応したものだが、FRBの物価目標(2%)を考えると、とうてい容認できる水準ではないだろう。

ウォーラーFRB理事は「インフレ率が2%に近づくまで利上げの手を緩めない」と語っている。恐ろしい話である。いや、もっと怖いのはQT(量的金融引き締め)だろう。今回のQTは6~8月が月間475億ドル、9月以降が同950億ドルだ。1年間に約1.1兆ドル、3年間では2.5兆~3兆ドルのFRBの総資産が圧縮される。

2017~19年のQTでは月間100億ドルでスタート、1年後に500億ドルとした。総資産の圧縮は4.5兆ドル→3.8兆ドルと、0.7兆ドルにすぎなかった。今回は規模もスピードも格段に大きい。マーケットが動揺するのは当然だろう。すでに、「バブルのアダ花」と称されたミーム株、仮想通貨は急落、SPAC市場は壊滅状態にある。

金詰まり下では弱いセクターが直撃される。なにしろ、過剰流動性の消滅である。FRBの総資産は9兆ドルが5.9兆ドル前後に減少する見通しだ。もちろん、これでも多い。通常、理想的な水準はGDPの20%(4.6兆ドル)程度といわれている。いずれにせよ、利上げの先行き、QTの動向はひとえにインフレ次第である。

さて、ここでの投資戦術は? 「嵐のときは動くな」が基本だが、好業績、割安のグローバルキッズCOMPANY <6189> [東証P]は狙える。株価は昨年4月5日の高値1285円から下がりっぱなしだ。しかし、2022年9月期は5.8%増収、66.3%最終増益を見込み、1株利益は85.2円となる。配当は25円を実施する。

2022年6月20日 記

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.