明日の株式相場に向けて=直観が示唆する上昇相場の終了

市況
2022年6月29日 17時01分

きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比244円安の2万6804円と5日ぶり反落。実質7月相場入りとなった東京市場だったが、きょうは戻り売りを浴び、再び2万6000円台に押し戻される格好となった。前日までの直近4営業日で日経平均はちょうど900円の上昇をみせており、きょうは反落しても当然の調整とはいえた。6月末の配当権利落ち分32円も考慮すれば200円ちょっとの下げにとどまり、むしろ下値抵抗力を発揮したといってよい。

ただ、前日の米国株の下げ方が気になるところではある。前日は欧州時間では中国の入国規制緩和(隔離期間の短縮など)を好感して、北欧を除き全面高に近い形で買われていたのだが、米国株市場では主要株価指数いずれもヨーロッパ大陸を横目に高く始まったものの、寄り後はほぼ一本調子に下値を切り下げ地合いの悪さを印象づけた。米カンファレンス・ボードが発表した6月の消費者信頼感指数が前月から低下し、事前コンセンサスも下回った。消費熱が低下したことは、インフレ懸念の緩和にもつながることで一概に悪材料とは言えないはずだが、米株市場はこれをリセッションに向けた懸念として捉え、短期筋が売りを急ぐ形となった。なお、同日にニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がCNBCのインタビューで「米国はリセッションを回避できる」との見方を示したのだが、これについてはマーケットにスルーされた格好となった。おそらく、この日に米株市場が朝高後も値を保ち強調展開のまま引けていたら、ウィリアムズ総裁のコメントは、ポジティブ材料として取り上げられていたと思われる。言い換えれば、前日は消費者信頼感指数も連銀総裁発言も関係なく、米株市場は下げていた可能性が高い。

問題は、これが再び目先下落トレンドへの転換を意味するものかどうかである。日本時間明晩に発表予定の5月の米個人所得・個人支出(PCE)の動向に耳目が集まっている。これでインフレ警戒ムードが高まるようなら、NYダウをはじめ主要株価指数は一段の下値を試さざるを得ない。相対的に強い動きを示す東京市場も、外国為替市場での円売りとセットであり、ドル建てベースの日経平均で見た場合は決して芳しくないチャートを形成している。7月相場も“突っ込み買いの吹き値売り”を基本戦略に置いておくよりない。

目先の値動きはAI取引に振り回され、正直なところ“人間の脳”では予測が難しい意味がある。前日の米株市場のように好悪材料が入り乱れるなか、ボラティリティが高いのに、株価の方向性がその直前でも読めず、結局株価が動いた後の軌跡をなぞりながら理由をつけるような後講釈相場にこれからも頻繁に遭遇しそうだ。

ただし人間の感性も捨てたものではなく、大勢トレンドを俯瞰して、今は上げ相場なのか下げ相場なのかを判断するのはコンピューターの演算能力よりも遥かに秀でていると思われる。いかなる推論を積み重ねてもたどり着けぬ領域に、直観の一撃をもって鮮やかに到達することができるのは人間の右脳、いわゆる感性の特権といえる。他方、強気にも弱気にも相応の根拠があるが、人間の左脳で導き出したポジショントークは、往々にしてニーチェの至言である「信念は嘘よりも危険な真理の敵」に化けやすい。長期トレンドを睨んでいるようでいて、実はバックミラーに映っているデータを使って都合よく構築された砂上の楼閣であるケースも考えられる。

ひとつ目に入れておきたいのはNYダウやナスダック指数の月足である。12カ月移動平均線と24カ月線のデッドクロスが接近している。チャートがすべてを語るなどということはおそらく幻想であるが、としてもこの形状を見て何を思うか。例えば向こう半年間の月足6本を想定して中長期スタンスを前提にリスクを最大限取りにいくことに躊躇しないとすれば、それは投資の達人か、もしくは投資家ではないかのいずれかであろう。

あすのスケジュールでは、5月の鉱工業生産が朝方取引開始前に経済産業省から開示される。午後取引時間中には5月の自動車輸出実績、5月の建機出荷、5月の住宅着工統計の発表などが予定されている。また、IPOが1社予定されており、グロース市場にAViC<9554>が新規上場する。海外では6月の中国製造業PMI・非製造業PMI、5月のユーロ圏失業率、5月の米個人所得・個人支出、6月の米シカゴ購買部協会景気指数など。なお、スウェーデン中銀が政策金利を発表する。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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