明日の株式相場に向けて=徳俵で粘りみせる旧マザーズ銘柄
きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比315円安の2万6107円と3日ぶり反落。前場は日経平均がいったん下げ渋って戻り足をみせる場面もあったが、売り圧力は強く再び下値に押し込まれる展開を余儀なくされた。今週は前日までの2営業日で、気迷いながらも2万6000円台半ばを指向する強調展開を示していた。しかし、これは上げ潮(上昇トレンド)が発生しているわけではなく、波の上下動に過ぎない。週末8日のオプションSQ算出と、ETF分配金捻出に絡む1兆円規模の売りを考慮すれば、ここでの戻りは実需の買いによるものではなく、空売り筋による“ポジション調整の買い戻し”が原動力となっていることは想像がつく。
世界的な景気減速感が強く意識され始めている。前日の欧州株市場は全面安商状で総じて下げ幅も大きくなった。インフレが進行するなかで景気が悪化する、いわゆるスタグフレーションに対する懸念がマーケットに重くのしかかっている。欧州時間のリスクオフを引き継いで、米国株市場でも朝方は大きく売り優勢に傾き、NYダウは午前中に700ドル以上の下落をみせる場面もあったが、その後は一貫して下げ渋った。リセッション懸念を背景に米10年債利回りが2.8%近辺まで低下したことでグロース株へのショートカバーを誘発、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数はプラス圏に切り返し、200ポイント近い上昇をみせた。もっとも、これまでの下げを考えればアヤ戻しの領域にも達していない。半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)もようやく6日ぶりに反発となったが、こちらは依然として年初来安値圏を漂っており、年初からの下落率は40%近くに達している。
米国では個人投資家資金の活躍で一世を風靡したミーム株の凋落が激しい。これらは必ずしもグロース(成長)株の範疇に含まれるとは限らないが、22年上半期の米国株市場は「成長性がハヤされても、実態面で割高ならば、株価の吹き上げたところは百発百中で撃ち落とせるという売り方の思惑が成就した相場だった」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。
東京市場に置き換えれば、小型材料株の宝庫であった旧マザーズ市場に属していた銘柄に風当たりがきつい。マザーズ指数は6月20日に年初来安値をつけたが、この時点で年初からの下落率は37%。ナスダック指数のそれを大きく上回りSOX指数に肩を並べる下げっぷりであった。しかも、米国ではいずれの指数も年初がほぼ頂点だったが、マザーズ指数の頂点はそれよりも遥か以前で、今年の大発会は急落過程の中間点に過ぎなかった。
苛烈な下げに見舞われたマザーズ指数だが、ここにきて3日続伸と底入れムードを漂わせている。国内ネット証券大手が算出する旧マザーズ市場の信用評価損益率は直近でマイナス30%に達していた。これは、旧マザーズ銘柄、現在で言えばグロース市場の銘柄に特化した個人投資家であれば、既に追い証の投げが多発する危険水域に足を踏み入れた状態にあった。そうしたギリギリの場面でのマザーズ指数の戻りは、徳俵でのうっちゃりを想起させるようなタイミングではある。決して楽観はできないが、今のマザーズ指数反転の流れを象徴しているのがバイオ関連株の戻りだ。参戦するのであれば上値に買いつかず、あくまで押し目を狙う感覚で、そーせいグループ<4565>、アンジェス<4563>、セルシード<7776>、リボミック<4591>、DNAチップ研究所<2397>などをマークしておきたい。
また、入国規制緩和の影響かどうかは分からないが、ここにきて新型コロナウイルスの感染者数が再び拡大傾向を強めている。防疫関連銘柄では川本産業<3604>が上げ足を加速させたが、物色の流れは横に広がる可能性がある。そのなか、アゼアス<3161>が動意含みで目を配っておきたい。また、今はノーマークだが、マナック・ケミカル・パートナーズ<4360>なども商いが増えてくれば見せ場をつくる可能性がある。
あすのスケジュールでは、6月上中旬の貿易統計、6カ月物国庫短期証券入札、30年物国債の入札、6月のオフィス空室率、5月の景気動向指数速報値などが予定される。海外ではECB理事会の議事要旨(6月8~9日開催分)が開示されるほか、ポーランド中銀が政策金利を発表する。また、6月のADP全米雇用リポート、5月の米貿易収支などに市場の関心が高い。このほか、ブラード・セントルイス連銀総裁の講演も行われる予定。(銀)