明日の株式相場に向けて=疾風に舞い踊る仕手系材料株
3連休明けとなった19日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比173円高の2万6961円と4日続伸。前週から日経平均は戻り足に転じているが、きょうは終値での2万7000円台回復とはならなかった。正念場となるのはここからで、6月28日と7月11日に2万7000円近辺で2度にわたり押し返されている。今はちょうど75日移動平均線を巡る攻防ともなっており、ここを完全クリアできるかどうかが注目される。
今週は日銀とECB理事会の金融政策発表がいずれも21日に行われることになるが、黒田日銀総裁とラガルドECB総裁の記者会見は、ほぼ同じ時間軸で政策の違いが鮮明となる。ここにきてコモディティ価格がピークアウトしていることは行き過ぎたインフレ懸念の後退につながりやすいが、「インフレ圧力は第2波が怖い」(中堅証券マーケットアナリスト)という指摘もあり、予断を許さない局面は続く。
ただ、個別株は元気印の銘柄が相次いでいる。仕手系材料株というと若干語弊があるが、理屈では簡単に説明しづらい銘柄が勢いを増すケースが多い。その一つがShinwa Wise Holdings<2437>で、またもや大復活の動きをみせている。今月1日に上ヒゲで1830円の年初来高値を形成、これは年初来高値というよりは2007年11月以来約14年8カ月ぶりの高みに歩を進めたわけだが、その後は急落を余儀なくされた。これまでの急騰劇は同社が打ち出すエドバース事業の成長性を材料視したとはいえ、まだ絵に描いた状態でファンダメンタルズ面から株価へのアプローチができる段階にはない。行き過ぎた物色人気であることは承知の上での確信犯的な投資マネーの流入だった。そういう意味ではいつ急反落しても不思議はないわけだが、ここでストップ高に切り返すのは、“株は需給とタイミング”を地で行く仕手系材料株の面目躍如ともいえる。
全体相場は戻っているとはいえ今ひとつで、グロース市場の信用評価損益率も直近でマイナス26%台とかなり厳しい水準にあり投資マインドは冷え込んだ状態のはずだが、ピンポイントで個別株をみていくと出世株が続々と誕生している。過剰流動性相場の終着点が近づいてはいても今はまだ宴の最中であることに変わりなく、中小型で足が速くなおかつ出来高流動性に富む銘柄に物色の矛先が向いている。「ロットで売り買いできる流動性の高い中小型株ということになると、低位材料株がそのターゲットとなりやすい。大口から小口(投資家)まで全員参加型の素地がある」(中堅証券ストラテジスト)とするが、実際株価が100~300円台の低位株を中心に値を飛ばす銘柄が目立つようだ。直近ではERPコンサルティング事業を展開するジェクシード<3719>が大陽線の連打で25日移動平均線から大きく上放れる動きをみせている。株価はまだ200円未満だが、それだけに上値余地に期待した短期筋の参戦を促している。M&A絡みの案件で思惑を内包していることも、人気を後押しする格好となっているようだ。
この他にも人気素地を開花させている低位株では、占いコンテンツ配信を手掛けるメディア工房<3815>や、ファンクラブのサイトを運営するSKIYAKI<3995>、眼病治療薬のバイオベンチャーである窪田製薬ホールディングス<4596>、シニア領域に特化した人材サービス企業キャリア<6198>、流体計測機器大手メーカーで脱炭素やEV電池関連向け特需を取り込んでいるオーバル<7727>などが風雲急を告げる値動き。きょうは北の達人コーポレーション<2930>も1000万株を超える大商いで値を飛ばした。
まだ目立たないが、静かに株価水準を切り上げているものでは婦人用アパレルや雑貨を手掛けるパレモ・ホールディングス<2778>。リストラ努力による足もとの損益回復は転機となる可能性もある。出来高流動性の高さは今の低位株物色の波に乗りやすい。また、原発再稼働の思惑を背景に、原発向け振動試験装置や計測器などを手掛けるIMV<7760>も400円ソコソコの株価は妙味がある。商いは薄いようだが、人気時には100万株超の売買高をこなすことも珍しくない。
あすのスケジュールでは、21日までの日程で日銀金融政策決定会合が開催される。6月の首都圏マンション販売、6月の主要コンビニエンスストア売上高など。なお、6カ月物国庫短期証券の入札も予定される。海外では7月の中国最優遇貸出金利、6月の英CPI、6月の米中古住宅販売件数など。(銀)