米決算シーズン本格突入、低迷「ナスダック」は輝き取り戻せるか <株探トップ特集>

特集
2022年7月19日 19時30分

―企業収益には減速懸念が高まる、目先はインフレ懸念後退で上昇期待も―

米株式市場は一進一退の局面となりつつある。春先から6月中旬にかけインフレ懸念の高まりから株価は大幅な下落基調となったが、足もとの下値不安はやや落ち着いてきたようだ。この背景には、一時のインフレ加速による大幅利上げ観測が後退したことが指摘されている。しかし、その一方で景気減速懸念は依然として強いうえに、米国は決算シーズンに突入している。企業収益には減速懸念が強いが、この決算を無難にこなせば、相場は当面ナスダックを中心に反騰基調を強めるとの期待も出ている。

●米ガソリン価格低下などでインフレ懸念が後退

18日の米株式市場は、NYダウが前週末に比べ215ドル安と反落。ゴールドマン・サックス・グループ<GS>の決算が良好だったことから、朝方は買われた。しかし、一部でアップル<AAPL>は来年の人材採用と成長投資を抑える、と伝えられると景気後退(リセッション)と業績悪化懸念が強まり全体相場は下落に転じた。一方、前営業日の15日は米6月小売売上高が堅調だったこともあり、NYダウは658ドル高と急伸。足もとの相場は強弱観が対立する展開となっている。7月のNYダウは直近までの月間で約1%上昇となり、6月の同7%下落からプラス圏に浮上している。ナスダック指数は6月に約9%下落したが、7月は約3%上昇となっている。

NYダウに比べナスダック指数が強含んでいることの背景には、インフレ懸念が後退したことで高PERが多いナスダック銘柄が買いやすくなったことが指摘される。13日発表の米6月消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.1%上昇と高い伸びとなったが、先月のCPIショックの再現には至らなかった。米連邦準備理事会(FRB)高官による「7月米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75%利上げを提唱する」との発言で、一部で盛り上がった1%利上げ観測は後退した。更に、市場関係者からは「足もとで米国のガソリン価格などが落ち着いていることも相場には追い風だ」との見方も出ている。

●「ハイテク株の女王」のETFに資金舞い戻り始める

7月26~27日のFOMCでは0.75%利上げが有力だが、9月は同じく0.75%あるいは0.5%の利上げが実施されるとみられている。そして、年末にかけ利上げ幅は縮小され、状況次第ではいったん利上げ打ち止めとの期待も出てきた。再びインフレピークアウト説が台頭するなか、米国では「ハイテク株の女王」とも呼ばれるキャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメントのETFには再び資金が流入し始めているようだ。

しかし、「インフレ懸念の後退は長くて8月までだろう。9月には再びインフレが相場の焦点となると思う」(アナリスト)と警戒する声は少なくない。また、アトランタ連銀が算出する「GDPナウ」では4~6月期はマイナス成長が見込まれており、リセッション入りの懸念が出ている。ポイントとなるのは、原油などエネルギー価格だ。「エネルギー価格が落ち着くのならナスダック指数は夏場に1万3000近辺まで戻す可能性もある」(前出のアナリスト)と期待する声も出ている。いずれにせよ、ハイテク株などの動向は外部環境次第の側面も強い。

●ネットフリックス、テスラ、アップルなど決算に関心

そんななか、市場関係者の関心を集めているのが本格化し始めた4~6月期決算の発表だ。S&P500構成企業の1株当たり利益は6%前後の増加が予想されているが、昨年10~12月の30%増前後からは低下する見通しだ。実際、先週末からスタートした決算発表では、JPモルガン・チェース<JPM>やモルガン・スタンレー<MS>は大幅減益となり冴えない内容だった。

続いて、今晩はネットフリックス<NFLX>が登場する。有料会員の減少で4月に株価が急落したが、悪材料はほぼ織り込んでおり、今回は落ち着いた株価の値動きを期待する声も多い。また、明晩にはテスラ<TSLA>が決算発表をする。同社の場合、中国市場の影響が大きいが、新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)と解除が業績にどう反映されるかも関心を集めている。

主力IT企業では、26日にアルファベット<GOOG>とマイクロソフト<MSFT>、27日にメタ・プラットフォームズ<META>(旧フェイスブック)、28日にアップル、アマゾン・ドット・コム<AMZN>が決算発表を行う。特に、アップルの決算は注目されている。更に、大きな下落を演じた半導体関連株への注目度は高く、ASMLホールディング<ASML>やインテル<INTC>、テラダイン<TER>、ラムリサーチ<LRCX>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>、アプライド・マテリアルズ<AMAT>などからも目が離せない。また、軍需関連のロッキード・マーチン<LMT>やノースロップ・グラマン<NOC>などの決算も関心を集めそうだ。

■主な米国企業の決算スケジュール  

7月 19日  ネットフリックス、ロッキード・マーチン

20日  テスラ、アルコア、ASMLホールディング

22日  アメリカン・エキスプレス

26日  アルファベット、マイクロソフト、ビザ、テラダイン

コカ・コーラ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド

27日  ボーイング、メタ・プラットフォームズ、ラムリサーチ

28日  アップル、アマゾン、インテル、ノースロップグラマン、ファイザー

29日  エクソン・モービル、シェブロン、プロクター・アンド・ギャンブル

8月 2日  アドバンスト・マイクロ・デバイシズ

10日  ウォルト・ディズニー

18日  アプライド・マテリアルズ

(注)予定は変更されることがあります。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.