明日の株式相場に向けて=オイルダラーが演出する踏み上げ相場

市況
2022年8月17日 17時00分

きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比353円高の2万9222円と大幅反発。驚異的な強さでフシ目とみられた2万9000円大台ラインを難なく通過し、気がつけば今年の大発会の翌日につけた年初来高値2万9332円奪回にあと一息というところまで駆け上がってきた。

2万8000円近辺で積み上げられたショートポジションを丸呑みして、あっという間に1000円超の上昇をみせた日経平均だが、「直近に来てめげずに再び売り直す(空売りする)動きが観測されている」(ネット証券アナリスト)という。売り方の立場に立てば、その気持ちも分からないではないが、これも踏み上げの糧になってしまう未来図がイメージされるのが今の相場の怖いところ。売り方が作る上昇相場の典型とはいえ、当然ながら踏み上げに持って行くまでの買い勢力が存在する。その正体探しがマーケットでも話題となっていたが、どうやらオイルダラーの仕業という見方が強い。原油はここにきて急速に値を下げてはいるが、今年の上半期に急ピッチで水準を切り上げ1バレル=120ドル台まで上昇した。「創出された巨額マネーをサウジの政府系ファンドが米国及び日本、インドの株式に振り向けている」(同)という。オイルダラーには不景気も政局もコロナも関係ないというところだが、「日本株についてはここで買って仮に逆目を引いても、リスクオフの円高で相殺できるという打算も働いている」(同)としたたかな面も指摘されている。

もっとも、前日にも触れたように個人投資家は必ずしもこの怒涛の上げ潮に乗り切れていないという現実もある。相場では“一つの籠にすべてを盛る”ことは厳禁とされている。ピンポイントで魅力的な銘柄を見つけても、それは思い込みである場合も少なくない。むしろ意中の銘柄ほど思惑通りには動いてくれないケースが多い。今回の戻り相場で日経平均が2万9000円台まで一気に駆け上がることは、外部環境を見渡せば明らかにレアケースといえるが、個別株にフォーカスすると動いている株とそうでない株の差が激しいことが分かる。それでも空売りで入って悲鳴を上げるよりはマシだが、音無しの株を握った状態で全体指数の上昇を眺めているというのも、精神衛生上決していいものではない。しかし、現状はかなりの数の個人投資家がこのジレンマに陥っているのも確かなようだ。

自分の目を信じるのではなく、投資対象を分散して可能性を広げておく方が賢明である。これには資金的な分散と時間的な分散の2つがあるがコンセプトは一緒で、釣りで言えば多方面にあたりをつけておいて、糸を引いたら釣り上げるだけではなく急いでその周辺に釣り竿を集めるような柔軟かつ貪欲なスタンスが求められる。

銘柄選別の視点としては、決算シーズンを通過したから個々の銘柄のファンダメンタルズは不問となるわけではないが、決算内容については既に今の株価に大方織り込まれているわけであり、これを前提とするならば今はファンダよりもチャート重視ということになる。足もとでは日経平均株価と連動しやすい主力銘柄の強さが目立っている。2万9000円ラインを突き破っているのだから、これは当然ともいえる。ただし、ボラティリティの大きさでは中小型株に優位性があり、リターンリバーサルの期待値が高く、なおかつ全体指数が減速した時に逆に輝きを増すような銘柄も埋もれている。また、全体相場の回転が利いている今の地合いでは、値幅効率の良い株価3ケタ台の銘柄に食指が動きやすい。もちろん、チャート優先とはいっても直近の決算が良ければそれに越したことはない。

こうした条件に見合う銘柄を個別でいくつかリストアップすると、松ヤニ化学品大手で電子材料にも強いハリマ化成グループ<4410>、バルブ専業メーカー国内トップのキッツ<6498>、メタバース関連の一角であるアートスパークホールディングス<3663>、電気自動車(EV)向け樹脂部品で需要開拓が期待される三光合成<7888>、そして目を見張る好決算で割安感が浮き彫りとなった光ビジネスフォーム<3948>などが挙げられる。

あすのスケジュールでは、国内では目立ったイベントはないものの、1年物国庫短期証券の入札と20年物国債の入札が行われる。海外ではフィリピン中銀、ノルウェー中銀、トルコ中銀の金融政策決定会合の結果が発表。また、8月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の米中古住宅販売件数、7月の米景気先行指数などにマーケットの関心が高い。このほか、アプライド・マテリアルズ<AMAT>の5~7月期決算が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年08月17日 17時02分

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