デリバティブを奏でる男たち【34】 バウポストのセス・クラーマン(前編)

特集
2022年8月22日 13時30分

◆ボストンの賢人

今回はバークシャー・ハサウェイ<BRK.A>のウォーレン・バフェットや第10回で取り上げたオークツリー・キャピタル・グループのハワード・マークスなどと並び称される代表的なバリュー投資家、バウポスト・グループのセス・クラーマンを取り上げます。米ネブラスカ州オマハに居を構えるバフェットが「オマハの賢人」とたたえられているように、米マサチューセッツ州ボストンに居を構えるクラーマンは「ボストンの賢人」とも言われています。

彼が率いるバウポストは、最近のヘッジファンド収益ランキングで、それなりに高い収益を叩き出していますが、日本ではまだあまり知られた存在ではありません。それは彼がマスコミに出たがらないためなのかもしれません。ただ、2018年には東芝 <6502> [東証P]から経営破綻した子会社の米原子力発電所メーカー、ウェスチングハウス・エレクトリックの関連債権を同業者とともに買収したことが報じられています。

2018~2021年利益トップ15のヘッジファンド(単位は10億ドル)
2018年の利益2019年の利益2020年の利益2021年の利益
1ブリッジ
ウォーター
8.1TCI8.4タイガー・
グローバル
10.4TCI9.5
2ルネサンス4.7ローン・
パイン
7.3ミレニアム10.2シタデル8.2
3ツーシグマ3.2ルネサンス5.6ローン・
パイン
9.1DEショー6.4
4シタデル2.1エガートン5.0バイキング7.0ミレニアム6.4
5DEショー
2.0シタデル4.9シタデル6.2エリオット6.0
6ミレニアム1.8バイキング4.3DEショー5.4ブリッジ
ウォーター
5.7
7ファラロン
1.3ファラロン3.7エリオット5.0バウポスト3.4
8ブレバン・
ハワード
0.9ミレニアム3.4TCI4.2ファラロン3.3
9エリオット0.8エリオット3.2エガートン3.7サード・
ポイント
3.3
10バウポスト0.4DEショー2.8ブレバン・
ハワード
3.0エガートン3.1
11オクジフ/
スカルプター
0.2バウポスト2.4ファラロン2.9デービッド・
ケンプナー
2.4
12キャクストン0.2SAC/
ポイント72
2.3SAC/
ポイント72
2.5アパルーサ2.1
13SAC/
ポイント72
0.0アパルーサ1.5オクジフ/
スカルプター
2.3オクジフ/
スカルプター
1.9
14ムーア
キャピタル
-0.1オクジフ/
スカルプター
1.3アパルーサ1.9キング
ストリート
1.8
15キング
ストリート
-0.1ポールソン1.1キング
ストリート
1.6SAC/
ポイント72
1.7
全社-41.0全社178.0全社127.0全社176.0
出所:各種報道(再掲)

セス・アンドリュー・クラーマン(通称セス・クラーマン)は1957年に米ニューヨーク州で生まれています。ポーランド系ユダヤ人である彼の父親、ハーバート・E・クラーマンはジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生学者でした。セス・クラーマンは幼少の頃から新聞配達やかき氷スタンド、除雪や除草といったサービス事業のほか、週末には切手やコインのコレクションを販売するなど、商才に長けていたようです。

また、10歳の時に最初の株式投資としてジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>を1株購入。その理由は、彼が同社の製品であるバンドエイドを多く使用していたからだったそうです。これはつまり、テンバガー(株価が10倍になる銘柄)という言葉を生み出し、全米ナンバーワンのファンドマネージャーと言われたピーター・リンチの投資原則、「自分が知っているものに投資する」「日常生活からヒントを見つける」を既に実践していたと言えるでしょう。

◆バウポストの運用依頼

彼はコーネル大学で経済学を専攻。大学3年の夏に伝統的なバリュー投資ファンドのミューチュアル・シェアーズ・ファンドでインターンシップを経験しました。そこで同社の創業者であるマックス・L・ハイネやマイケル・F・プライスからバリュー投資の薫陶を受けます。ユダヤ人のハイネはナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)から逃れてニューヨークに辿り着いた後、バフェットのメンターとなるベンジャミン・グレアムの共著「証券分析」でバリュー投資を学び、1949年に同社を設立しました。1988年にハイネが交通事故で亡くなると同社はプライスに引き継がれ、1998年に米大手資産運用会社であるフランクリン・テンプルトン・インベストメンツ(フランクリン・リソーシズ<BEN>)と合併します。

クラーマンは1979年にコーネル大学をマグナ・カム・ラウド(成績上位10%の学生に授与される称号)で卒業し、再びミューチュアル・シェアーズで18カ月間働きます。その後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。成績上位5%に与えられるベイカー奨学生に選ばれました。

このときの同級生には、後にゼネラル・エレクトリック<GE>のCEO(最高経営責任者)を長年務めたジェフリー・ロバート・イメルト、米CATV大手コムキャスト<CMCSA>傘下のNBCユニバーサルでCEOやバークシャー・ハサウェイ<BRK.A>の役員も務めたスティーブン・B・バーク、タイガーカブ(第2回で取り上げたジュリアン・ロバートソン率いるタイガー・マネジメント出身)であるローン・パイン・キャピタルのスティーブン・フランク・マンデル・ジュニア、そしてJPモルガン・チェース<JPM>の現CEOであるジェームズ・ダイモン(通称ジェイミー・ダイモン)など、そうそうたるメンバーが揃っていました。

(続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.