300万円を資金追加なしで大台に、「変わり技」で数千万円の損切りもカバー
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 kenmoさんの場合-第1回
2012年、300万円を元手に株式投資デビューの兼業投資家。以降、順調に資産拡大し17年に億り人に。コロナ相場の大ヤラレで一時は数千万円の損失を出したが、投資手法を転換して凹んだ分のリカバーに成功している。現在の投資スタイルは、主に業績の変化に着目し、短期と中長期の組み合わせでリターンを狙うというもの。普段の生活でも「片付け上手」と言うように、投資でも損切りも躊躇なく実行する。保有ポートフォリオは、通常、収益プラスの銘柄が並び、ストレスフリーの状態をキープ。投資家から好評の「湘南投資勉強会」を主宰し、ここでも熱心に情報収集、人脈作りに励んでいる。一児の父で、パパ業も手を抜くことなく、投資に意欲的に取り組んでいる。
今回クローズアップするのは、兼業投資家のkenmoさん(ハンドルネーム)。名前を聞いて「おっ!」と思う人も多いかもしれない。神奈川県湘南地区で開催の投資家向け勉強会「湘南投資勉強会」の主宰者であり、前回登場のお多福さん(ハンドルネーム)がお手本の一人にしているデキる投資家さんだ。
kenmoさんは2012年、300万円を元手に株式投資を開始。アベノミクス相場開始の少し前、全体相場がさえない中での船出ではあったが、当時実践していた「新高値投資」がハマり、5年後の17年に億り人を達成する。
その後、コロナ大暴落をモロに食らい、数千万円規模の損切りを強いられるもすぐにリベンジに成功。相場に合った投資手法の改良が奏功し、現在は1億円後半台まで資産を拡大させている。
それほど時間をかけずに、ここまでの成功を手にした秘訣とは。そのポイントは「変化」を生かし、それにうまく乗ったことだ。その変化とは、業績であり、また自分自身になる。それを複数回で紹介していく。
初回は、決算の変化に着目した現在の投資法を紹介しよう。
順張りの決算モメンタムと逆張り中長期の二刀流
現在、kenmoさんが柱とするやり方は2つある。
1つ目は、業績と株価の向上に乗る順張り決算モメンタム投資
2つ目は、数年単位の成長を狙う逆張り中長期投資
――になる。
1つ目の順張り決算モメンタム投資では、投資期間を最長で半年と、短期を基本とする。銘柄選択は、企業が決算を公表するや、できるだけスピーディに、かつ多くの決算内容に目を通し、株価上昇のサプライズとなる材料を探すやり方をする。業績と株価の短期モメンタムに乗るため、順張り志向で臨む。
2の逆張り中長期投資は、決算を起点とする企業業績を材料としながらも、長い目で見た中長期的な株価上昇の大きな波に乗るのを狙う。
こちらの買い場は、株価下落局面を経て、出来高が少なくなり株価が横ばいになったタイミングでの逆張り狙い。コツコツ安いところを買い集めていき、その後の上昇をじっくり待つ。銘柄選びにじっくり時間をかけ、週末にIR(投資家向け広報)資料や主宰する勉強会で得た情報などから、息の長いテーマに乗って成長していく銘柄を探す。
決算モメンタム投資でリターンを得た大平金、DMソリュ、アライドetc.
順張り決算モメンタム投資での最近の成功事例は、今年22年の大平洋金属<5541>、20年のディーエムソリューションズ<6549>、アライドアーキテクツ<6081>がある。
大平金はフェロニッケル精錬で国内首位。DMソリュは、ダイレクトメールや宅配便の発送代行大手、アライドは企業のSNS(交流サイト)を活用したマーケティング支援を手掛ける企業だ。いずれも、「上方修正」「増益」に着目し、これを主な材料に買い出動した銘柄となる。
先にも触れたように、投資期間は決算発表後の1カ月~6カ月としている。業績の変化が株価に織り込まれ、モメンタムの継続性が乏しくなったと見たところで利益確定を検討する。
ここ最近のように、相場環境がリオープン(経済再開)から資源系、そしてグロースへと変わりやすい状況では、「より短期」を意識するのが有利と考える。足元では、終わったばかりの第1四半期(1Q)で注目された材料に引きずられるのではなく、次の2Qでは新たな材料で動く銘柄へと切り替える。このように四半期を単位に、新たな可能性に乗り換えていくスタイルを取る。
もちろん、銘柄によっては、株価上昇がもっと長く持続できると思えるものもある。次の四半期決算以降も保有を続けるか否かは、ケースバイケースで判断していく。
保有を続ける中で、以下のようなビッグチェンジが起きたら中長期のグループに格上げだ。
それは、
国が推し進める政策や、時代のメガトレンドに沿った強いテーマにハマるビジネスモデルであることが判明、
また長く需要が見込める魅力的な商品開発や構造改革によって利益が中長期的に上がる体質へと変わる
――といったものだ。
小型株の決算直後は、個人投資家のバイアスに惑われない
狙う銘柄は、あまり多くの人がチェックしておらず、サプライズが大きいと見込める銘柄になる。これらは、決算後に買い出動しても、その後の上昇トレンドに乗るのに十分間に合うケースが多いと考えている。
例えば、時価総額の小さな企業の場合だ。その将来を評価する機関投資家が現れても、彼らは自分たちの需給で株価の変動を大きくするのを割けるため、徐々に買い増していくと想定できる。この動きに乗っていくことを狙う。
こうした機関投資家の動きに乗るために留意していることが、サプライズ決算の翌日ないし翌々日の株価の動き。ここで株価が上下に激しく振れることが多くなるのは、主として個人投資家のバイアスによるものと見ており、この段階で飛びつくことは控える。
サプライズの内容が一時的な思惑ではなく、ファンダメンタルズをポジティブに捉えた動きになるかを見極めるタイミングは、発表から半日~3日程度経ってから。
発表直後のほとぼりが冷めてからも反応が続く場合は、機関投資家が買いたいと思うサプライズがあるだろうと見る。もちろん銘柄や地合いによって変わるが、基本はこれを意識して、動きに乗っていくか否かを見極めていく。
具体例を見ると、フェロニッケル国内首位の大平金では、今年22年2月1日に初回買い。以降、買い増しを行い、同2月の9日、翌月3月10日の2度に分けて利確へ。わずか1カ月程度で最大約50%のリターンをさらう。
■『株探プレミアム』で確認できる大平金のヒストリカルPERと日足チャート
(21年11月~22年5月)
着目したきっかけは、同社が今年1月31日、取引時間終了後に発表した22年3月期決算予想の通期上方修正だ。2月8日の通期決算発表を控え、同社は経常利益を従来予想の2.3倍へと修正。さらに配当も55円から130円への大幅増額を公表した。
■大平金が22年1月31日に発表した上方修正のリリース
Kenmoさんは、今年年初からの資源関連銘柄の好調でテーマ的に有望であること、さらに、ニッケル価格高騰による大幅な増益と配当の上方修正はインパクトが大きく、十数年ぶりの大相場に移行するのでは、という見通しを持つ。
同銘柄は自身もこれまでノーマークだった銘柄。自分が知らないということは、周りの投資家も同様である可能性が高く、この好材料で新たに買いたい人からの追随買いが入るのでは、とも考えた。
結果、この読みはピタリとハマる。上方修正を材料とした短期モメンタムにうまく乗るのに成功した。
中長期はじっくり、一時的な業績悪化を買い場に
逆張り中長期投資はどうか。現在、ソフトウエアのテストサービスを請け負うバルテス<4442>、建設業向け人材派遣のコプロ・ホールディングス<7059>などを保有し期待をかける。
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