明日の株式相場に向けて=中低位株が舞い上がる秋相場
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比104円安の2万8091円と反落した。前日の米国株市場ではFRBの金融引き締めが長期化するとの思惑から、NYダウなど主要株価指数が揃って3日続落となった。興味深いのはNYダウが3万2000ドル、ナスダック総合株価指数が1万2000、S&P500指数は4000といずれもフシ目となっている大台を、ほぼ一緒のタイミングで下回ってきたこと。中長期波動の分水嶺である75日移動平均線との上方カイ離も解消しており、ここで75日線を一斉に踏み抜いてしまうと調整が長期化する可能性もある。
前日は7月の米雇用動態調査(JOLTS)で求人件数の伸びが市場コンセンサスを上回ったことで、「インフレ警戒感が強まった」と解釈されている。しかし、今月の上旬に発表された7月の米雇用統計の時はどうだったか。非農業部門の雇用者数の伸びが52万8000人で事前の予測値であった25万8000人の2倍以上という大幅な上振れが話題となり、平均時給の伸びもコンセンサスを上回った。これを受けてNYダウは上昇したのだが、この時の解釈は「米リセッション懸念の後退」を米株市場は好感したことになっている。
求人件数と雇用者数の伸びが同じ次元で語られることに違和感はない。とすれば、わずかのタイムラグで株価に与えるベクトルの向きは逆向きになってしまっている。インフレ警戒感とリセッション懸念は表裏一体で、同時進行ならスタグフレーション、同時に解消すればソフトランディングだが、現状は「インフレ抑制のためにリセッションは止むなし」というのが紛れもないFRBのスタンスである。これは同日に行われた討議で、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の「来年末まで利下げなし」としたタカ派発言にも象徴されている。
ただ、日本株は相対的に強さを発揮しているのも事実。日米金利差を拠りどころとしたドル高・円安が日経平均の車輪止めだ。買われているのは円安メリットを享受する輸出株ではなく、コスト面でデメリットを被る内需系の株であるのは皮肉だが、入国規制緩和でインバウンド特需が見込めるとすれば円安はやはり追い風となる。また、指数ベースではドル建て日経平均の割安さが海外投資家の先物買いなどを誘発してきた。
総論は置くとして、個別株の物色人気は旺盛である。ここ最近のトレンドである中低位株人気を加速させたのは、化粧品のクチコミサイトを運営するアイスタイル<3660>の鮮烈な上昇パフォーマンスも少なからず作用している。同社株は今月16日を境に急動意、米アマゾン・ドット・コム<AMZN>と資本・業務提携というニュースが株価に強烈なインパクトを与え、22日ザラ場には678円まで駆け上がる人気となった。動意前の株価は15日終値で293円だったが、あっという間に2.3倍化したことになる。売買高も18日と19日は連日1億株を超えるという記録的な活況ぶりでマーケットの視線を釘付けにした。
これが横軸に物色の流れを波及させている。求人サイト運営のピーエイ<4766>は前日に一時ストップ高に買われ、いったん上ヒゲをつけたもののきょう改めて買い直される人気となった。低位株ならではの変貌ぶりで、きょうの高値まで2営業日合計で46%の上昇率。岸田政権の外国人材受け入れ拡大の動きが株高の起爆剤となっているが、アイスタイルの急騰劇の残像も影響していると思われる。
アイスタイルの流れを汲む低位株では、化粧品や健康食品のネット通販を行い、ヒアルロン酸化粧品で一世を風靡した北の達人コーポレーション<2930>なども200円台前半でエンジンの掛かりやすい位置にいる。業績は決して良いとは言えないが、有配企業であり財務面に問題はなく、株価的には既に底が入っている印象だ。昨年の夏は600円近い株価をつけていた。情報サイトという範疇ではM&A戦略で複数のサイトを多角的に運営するイード<6038>も面白い存在。株価は3ケタ台といっても1000円大台がすぐ目の前にある水準だが、新値街道を走っており継続マークしておきたい。
あすのスケジュールでは、4~6月期の法人企業統計調査、8月の新車販売台数、8月の軽自動車販売台数のほか、10年物国債の入札も行われる。海外では8月の財新中国製造業PMI、7月のユーロ圏失業率、8月の米ISM製造業景況感指数など。また、アトランタ連銀のボスティック総裁の講演が予定されている。なお、ベトナム市場は休場となる。(銀)