「自分は底辺、ならば人より勉強しろ、人を羨むな」で億り人に
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 kenmoさんの場合-最終回
2012年、300万円を元手に株式投資デビューの兼業投資家。以降、順調に資産拡大し17年に億り人に。コロナ相場の大ヤラレで一時は数千万円の損失を出したが、投資手法を転換して凹んだ分のリカバーに成功している。現在の投資スタイルは、主に業績の変化に着目し、短期と中長期の組み合わせでリターンを狙うというもの。普段の生活でも「片付け上手」と言うように、投資でも損切りも躊躇なく実行する。保有ポートフォリオは、通常、収益プラスの銘柄が並び、ストレスフリーの状態をキープ。投資家から好評の「湘南投資勉強会」を主宰し、ここでも熱心に情報収集、人脈作りに励んでいる。一児の父で、パパ業も手を抜くことなく、投資に意欲的に取り組んでいる。
第1回『300万円を追加資金なしで大台に、「変わり技」で数千万円の損切りもカバー』を読む
第2回 『新高値ブレイクで億り人も、あのカリスマに触発され「変身ブレイク」』を読む
「それでは今日の相場について、振り返りましょう」
kenmoさん(ハンドルネーム)は毎晩、日々の相場解説や、決算の分析をネットで配信している。相場解説はネット上で自身のアバターがライブ配信できる「REALITY」を使って、決算分析は動画投稿サイト「YouTube」で行っている。
こうした取り組みの目的は、仕事で疲れていたり、パフォーマンスが冴えなかったりすると、つい投資の勉強を怠けたくなってしまう自分の弱点を正すため。
本人曰く「計画を立てて、コツコツと物事を継続するのが苦手」。そんな性格もあり、ダラダラと楽な方に流されていかないようにと、日々の配信を日課にしている。
■REALITYでのkenmoさんのアバター(左)と画面の例
今年前半に大平洋金属<5541>でリターンを手にしたのも(参考記事)、この日課が生きた。相場が、米国が利上げモードに転換したことなどから生じた冴えない展開になっても逃げることなく、決算書を読み込み、解説を発信続けたルーティンが奏功した。
こんなセルフマネジメントがしっかりできるのが、kenmoさんの強みの1つ。どんな考えで具体策を推し進めるのか。最終回ではその内容に迫る。
「失敗した人大研究」で、3つの発見
kenmoさんのブログのプロフィール欄では、自身を「底辺投資家」と紹介する。「底辺なのだから人より勉強しろ、他人を羨むな」と記載しており、ページを開くたびにこの自戒の念を新たにし、努力を怠らないよう自身に喝を入れている。
この言葉が単なる掛け声だけではないのは、kenmoさんが2012年に実際に株式投資を始める前から研鑽を積み、それを今も続けているという軌跡が示している(下の表)。
■kenmoさんの自己研鑽の軌跡
内容 | 時期 | 内容 |
読書 | 12年~13年 | ウォーレン・バフェット、 ウィリアム・J.オニール、ピーター・リンチを はじめ、投資本を50冊以上読破 |
失敗の研究 | 12年 | 投資で多額の借金を抱えた人、 退場に追い込まれた人の事例を読み漁り、 「やってはいけないこと」を頭に叩き込む |
情報発信 | 13年~(ブログ) 20年~(YouTube) 21年~(REALITY) | ブログでの情報発信に加え、 YouTubeで四季報や決算書の読み方を解説、 さらにREALITYで相場解説を行う |
勉強会 | 2018年~ | 投資家同士で 銘柄ディスカッションをする勉強会を開催。 最近は企業のIR説明会も実施 |
経営の勉強 | 2017年~ | 中小企業の資格取得を目指す。 21年に1次試験合格 |
注: IRは投資家向け広報の略
kenmoさんは11年に証券会社に取引口座を開設した後、すぐには実際のトレードは行わなかった。この時、重視したのは、投資本を片っ端から読んで儲かる投資のノウハウを身に付けること。
同時に、「失敗をしないためには、何をするべき&しないべきか」をしっかり頭に叩き込んだ。投資の種銭を失って、多額の借金を抱えたり破産したりして相場から退場を強いられた人のエピソードを、いくつも読んでいった。
この作業を続け、見えてきたのが、致命的な失敗に陥る典型的なパターンが3つあること。それは、
・過度なレバレッジ
・思い込みや過信による損切りの遅れ
・空売り(ショート)
――というものだ。
■kenmoさんがブログで記しているプロフィール
出所 : 湘南投資blog
片付け上手を生かして損切りもサクサク
これがわかったkenmoさんは、この3つには十分警戒しつつ、トレードを開始することとした。
当時、手掛けた投資法は「新高値ブレイク投資」とされる、株価が新高値を抜けて、上昇モメンタムがついたところに飛び乗る、しいていえば肉食系のやり方だ。
資金の少ない最初の2年は、失敗してもやり直しが効くと判断してレバレッジを活用した反面、とにかく損切りルールを徹底した。 3年目からは資金額も大きくなり、ここから資金をなくすとやり直しは難しいと判断し、徐々にレバレッジを落としていく。
自称「片付け上手で自宅の部屋はいつもスッキリ」と言うkenmoさんは、投資での損切りもサクサク実行へと移すのが得意。そのかいあって、証券口座の保有銘柄リストには、損益がプラスの銘柄が並ぶ状態に。資金効率の悪化を防ぐだけでなく、精神衛生上でもスッキリした環境が維持できていた。
アベノミクス相場の追い風があったとはいえ、kenmoさんは全くのビギナーから、6年ほどで億トレの地位を手に入れた。順調に資産拡大できたのは、こうしたきっちりとした資金管理が土台にあったからだ。
サボらぬよう、自身に課題を命じる
「日々のライブ配信」や「投資家勉強会の定期開催」は、慢心せず、自己研鑽を習慣づけるための取り組みだ。
ライブ配信のREALITYでは、毎晩午後10時から相場やトレードの解説を行い、日々、相場にしっかり向き合う体制を敷いた。
また、決算シーズンにはYouTubeを利用し、日々、「さぁ、決算資料を読もう !」と題して、公表される企業の決算内容のアウトラインを解説。この作業によって、決算資料の読み方が数字を追うだけの表面的なものから、その数字になった背景や原因についてより目配りするようになった。
勉強会では企業IRも新規取入れ
18年から始めた湘南投資勉強会は、仲間と注目銘柄についてディスカッションを行うことを通じて企業分析の知識を深めるほか、人脈作りにも役立っている。すご腕女性投資家として尊敬する、お多福さん(ハンドルネーム)と交流が持てたのも、この勉強会がきっかけだ(お多福さんの参考記事)。
勉強会では、企業のIR(投資家向け広報)担当者からの説明会を積極的に開催している。企業から直接、決算内容についての解説を受けることで、資料だけでは理解が及びにくい部分の理解を深めるためだ。特に時価総額100億円以下と証券アナリストがカバーしていない企業の説明会開催に力を入れる。
9月以降はEC(電子商取引)サイト開発やウェブシステム開発を行うアピリッツ<4174>(時価総額約40億円)、あんまや訪問介護を手掛けるフレアス<7062>(時価総額約20億円)、IT(情報技術)活用の不動産リノベーション等を行うツクルバ<2978>(時価総額約100億円)のIR説明会実施を企画中だ。
中長期の成長を視野に中小企業診断士に挑戦
17年から始めた中小企業診断士の勉強も、企業分析を深く行う延長線として、中長期の自身の成長を見据えて設けた学びの場だ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。