明日の株式相場に向けて=FRBが意図する下落相場
3連休明けとなった20日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比120円高の2万7688円と反発。全体相場は難しい局面にあるが、きょうは前日の米国株市場が終盤踏ん張ってプラス圏に浮上したことに敬意を表し、朝方は大きく買いが先行して始まった。しかし上値の重さは否めず、その後は漸次水準を切り下げ、尻すぼみの展開を強いられた。
目先的にはあす21日(日本時間では22日未明)に発表されるFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見に耳目が集まるが、今週はまさに中銀ウィークといってよい。FOMC以外にも日銀の金融政策決定会合はもちろん、ざっと挙げても英国、スイス、ノルウェー、スウェーデン、トルコ、南アフリカ、フィリピン、インドネシア、ブラジル各国の中銀が政策金利を発表する予定にあり、今後の見通しも含め世界的な金融引き締めドミノがどの程度の勢いにあるかを確認する週となる。
今月のFOMCでは1%の利上げの可能性についても一時取り沙汰されたが、前週末16日に発表された9月のミシガン大学消費者態度指数が市場コンセンサスを下回り、家計のインフレ期待も低下したことを受け、0.75%にとどまる可能性が極めて高くなった。市場では「1%の利上げの可能性はゼロではなかったが、かなり低かった。したがって同指数が示すインフレ期待の低下はダメ押し的な意味合いが強い。ただし、このミシガン大学調査の数値自体が、今後はインフレ指標としてあまりワークしないという見方も強まっている」(ネット証券マーケットアナリスト)という声も聞かれた。これはどういうことかというと、ミシガン大学のインフレ予想は体感物価としてガソリン価格の影響が大きいためで、今はモノのインフレは一巡し既にサービス分野の価格上昇の方に視点が移っている。そのため、ガソリン価格に左右される指標は参考にならないという意味合いである。
前週にも触れたが、FRBはこれまで雇用を最重視してきたが、今回のインフレは非常に深刻でこれまでの不文律をも覆す構えにある。沈静化するためには雇用を犠牲にしてでも、というよりは雇用を犠牲にして賃金インフレを抑制する方針との見方が強い。外資系大手金融機関の試算では失業率を5%くらいまで悪化させないと賃金インフレは収まらないという見解が示されている。「中央銀行に逆らうな」というのは相場の掟でもあり、リセッションも想定したオーバーキルを前提にFRBがブレーキを強く踏み込む以上、株式市場も下値を探る展開に誘導されるのは半ば必然という考え方もできる。
この場合は発想を切り替え、FRBがどの程度までNYダウやナスダック指数を調整させたら打ち止めと考えているか、ということが重要となる。今後の相場を読むうえでは、ファンダメンタルズ面のアプローチよりも、FRBの意図している株価水準がどこなのかを考えるほうが有効ともいえる。これは一つの仮説だが、例えば2020年2~3月のコロナショックによる暴落前に時計の針を戻すとする。暴落の後に財政・金融の総出動、いわゆるコロナマネーによるバブルが発生したと仮定するなら、NYダウで言えばそのコロナ暴落前の水準まで下押しても、これはある意味スタンダードな水準だ。実際はオーバーシュートして下抜ける可能性もあるが、20年1月の2万8000ドル台後半から2万9000ドル台前半というのはひとつのメルクマールとなり得る。その場合は時価3万1000ドル近辺から換算して約2000ドル程度の下落余地ということになる。
個別株はダブル・スコープ<6619>の連日ストップ安が目を引く。しかも場中は商いが成立しない一本値で大引け比例配分というあまりにも急転直下な下げで、その他の材料株の一角にも影響を及ぼした。最近は同社株への貸株規制も入っていたことで、高値圏での空売りもままならず、逆に言えばショートカバーによるブレーキが利かない。「上げも下げも正体不明。ただ、信用2階建てで買っている個人もいたので、部分的にはパニック的様相となった」(中堅証券マーケットアナリスト)とする。ダムが決壊するかの如き下げとなった。目先的にはマザーズ指数などの動きをみても材料株にはやや不利な流れといえる。
あすのスケジュールでは、8月の食品スーパー売上高、8月の首都圏マンション販売のほか、午後取引終了後に8月の訪日外国人客数が開示される。午前中に3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。海外ではFOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの関心が高い。このほか、8月の米中古住宅販売件数も注目される。(銀)
最終更新日:2022年09月20日 17時05分