明日の株式相場に向けて=逆境相場も「リベンジ消費」が投資資金誘導
きょう(27日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比140円高の2万6571円と4日ぶりに反発した。ようやく下げ止まったものの上値は重い。8月の米CPIがコアの部分で事前予想を上回る伸びを示したことが引き金となり、9月14日の急落を契機に日経平均は谷底に丸太を転がすような下げに遭遇したが、14日から前日までの7営業日で下げ幅は2200円近くに達していた。騰落レシオ(25日移動平均)は80%割れ寸前、ボリンジャーバンドは前日時点でマイナス3σ(シグマ)に到達。したがって前日の米株が安くても、ここでの自律反発は想定されたところだったが、反騰の気炎を揚げるにはあまりに湿っていて不発の花火を思わせた。
市場では「プライム市場には28日と29日の2営業日で配当再投資に伴う1兆円規模の資金が流入する」(準大手証券ストラテジスト)とし、となればきょうはそれを見込んでの先付け買いが入るタイミングでもあった。きょうは米株価指数先物も堅調な値動きを見せていただけに、日経平均は高く寄り付いた後も次第高の展開になって不思議はなかったのだが、値動きを見る限りマーケットは疑心暗鬼から抜け出せていないことを物語る。森より木を見る相場はこれからも続きそうだが、森が嵐に見舞われれば個別株もそれなりに風雨の洗礼を浴びることになり、投資家サイドも半身の構えを強制される。
個別でみるとハイテクセクターにはやはり風当たりがきつい。世界経済のリセッション懸念はスマートフォンや大型テレビの売り上げにも反映されており、市場関係者によると「直近では8月の中国の液晶パネル工場の稼働率が69%で有機EL工場については46%の稼働と伝えられている。有機ELは生産ラインの半分以上が眠った状態。つまり、スマートフォンと大型テレビの売れ行きの弱さを反映しており、こういう状況下で半導体製造装置関連株などは、株価が相当ディスカウントされた状態であってもなかなか手が出ない」(ネット証券アナリスト)とする。きょう売買代金で断トツの1位となったレーザーテック<6920>も朝高後は戻り売りに押されあえなくマイナス圏に沈んだ。同社株にヘッジファンドの売り仕掛けが再作動している気配はないものの、気がつけば8日連続で下値を探る動きを余儀なくされ、機関投資家が粛々と処分売りを進めていることを示唆している。
一方、日本経済が絶好調ということでは決してないが、唯一“政策期待”で順回転が利いているのが消費周辺セクターである。インバウンドが絡むリベンジ消費関連に引き続き優位性があるようだ。当欄で継続フォローしてきた銘柄では京都ホテル<9723>やコスモスイニシア<8844>が全体相場とは波動が異なる強調展開を継続中。いわゆるホテル関連株に物色の矛先が向いており、今後も波状的に買いが続く可能性がある。前週22日に岸田首相が個人旅行客の入国を10月11日から解禁することを表明したが、その後も矢継ぎ早に政策がアナウンスされている。前日には観光庁が旅行代金を補助する支援策「全国旅行割」を10月11日から12月下旬まで2カ月あまりにわたって実施することを発表した。また、9月末までとしていた「県民割」についても、10月10日の宿泊分まで延長する。こうした流れが関連銘柄への継続的な投資マネー誘導につながっているのだ。
京都ホテル以外ではワシントンホテル<4691>も強い。このほか商いは薄いものの帝国ホテル<9708>も25日移動平均線をサポートラインに押し目狙いでチャンスがありそうだ。株価が低位に位置するツカダ・グローバルホールディング<2418>は主力の婚礼事業のほかにホテル事業に力を注いでおり、同じく25日線を足場に切り返しが期待される。
イベント関連もあわせてマークしたい。企業や団体のイベント支援を行う博展<2173>は前日の急落場面でも下げなかったが、きょうもジリジリと上値追いを継続し5日続伸となっている。穴株的な色彩を持つ銘柄としてはイベント用デジタル映像の制作や映像機器レンタルを手掛けるレイ<4317>。目先調整も新高値近辺にあり目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(7月20~21日開催分)が開示されるほか、7月の景気動向指数(改定値)も発表される。また、IPOが3社予定されており、東証グロース市場にグラッドキューブ<9561>とファインズ<5125>、札幌アンビシャス市場にはキットアライブ<5039>が新規上場する。海外では8月の豪売上高、タイ中銀の政策金利発表、8月の米仮契約住宅販売指数など。(銀)