来週の相場で注目すべき3つのポイント:米企業決算、FRB高官発言、中国経済指標
■株式相場見通し
予想レンジ:上限27400円-下限25800円
来週の東京株式市場は弱含みか。米中の経済指標や米主要企業の決算などを睨みながらの神経質な状態が続きやすいだろう。
米10月ミシガン大学消費者信頼感指数における期待インフレ率は1年先が5.1%と9月(4.7%)から大幅に上昇し、5-10年先も2.9%と9月(2.7%)から上昇した。ガソリン価格の動向などに左右されやすいものの、高水準の期待インフレ率の定着を恐れるFRBには許容しがたい結果と考えられ、今後のFRB高官のタカ派発言に警戒したい。米10年債利回りは再び4%を超えてきており、フェデラルファンド(FF)金利の5%超えを指摘する意見も増えてきている中、一段の金利上昇圧力にも注意が必要だろう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録や米9月消費者物価指数(CPI)などの重要イベントを通過したとはいえ、来週も米国と中国を中心に注目度の高い材料が相次ぐ。中国では18日に7-9月期国内総生産(GDP)、9月鉱工業生産及び小売売上高が発表される。成都市でのロックダウン(都市封鎖)は9月中旬に全面的に解除されているため、数値としては堅調なものが確認されるだろう。ただ、依然として「ゼロコロナ」政策は続いている。結果に対する市場の反応からセンチメントを推し量りたい。また、16日からは5年に1度の中国共産党大会が開催されている。経済成長よりも国家安全保障を重視する姿勢に転換するとみられており、「ゼロコロナ」政策堅持の姿勢が強く打ち出されるとマーケットにはネガティブなものとなりそうだ。
米国では、今週末のJPモルガン・チェース、モルガンスタンレー、ウェルズ・ファーゴに続き、来週もゴールドマン・サックスの金融大手のほか、ネットフリックス、テスラ、アメリカン・エキスプレスなどの注目度の高い企業決算を控える。金融決算は景気動向の先行きを敏感に映し、テスラなどの個人投資家人気の高い企業決算に対する株価反応は投資家センチメントを計る材料となるため、注目したい。
19日に公表される米地区連銀経済報告(ベージュブック)も注目材料となる。株式市場の関心事はもはやインフレそのものではなく、遅行指標に基づいて後追いで利上げに邁進しているFRBによる政策ミスが引き起こす過度な景気後退や企業業績の悪化、ないしは金融市場の混乱へと移っている。前回のベージュブックから既に景気減速に言及する記述が散見されているため、こうした内容が一段と増えていれば、今後本格化していく7-9月期決算に対する事前の警戒感が高まりかねない。その場合、相場は再び下方向に振れるリスクが十分にあろう。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め加速への期待感から、ドル高円安基調が見込まれる。足元で発表された米経済指標のうち、米雇用統計は失業率の低下と非農業部門雇用者数の増加、消費者物価指数(CPI)で物価の高止まりが示された。FRBは好調な雇用を背景にインフレ抑制に向け引き締め政策を強めるとみられ、金利先高観を背景にドル買いに振れやすい。国際通貨基金(IMF)は11日に公表した世界成長見通しで、来年は景気低迷を予想している。ウクライナ戦争や中国経済の減速は世界経済への打撃となっているが、米国金利の上昇を受けてドル選好地合いはしばらく続くと見られている。
ただ、急速な円安を懸念して日本政府による円買い介入が再び実施される可能性があるため、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小する可能性がある。日本政府・日本銀行は9月22日に145円90銭付近で2.8兆円にのぼる大規模な為替介入を行った。ドル・円は一時140円台前半まで下落したが、日米金利差のさらなる拡大が予想されており、ドル買い・円売りが急速に拡大した。一部で投機的な円売りも観測されているため、鈴木財務相は「投機による過度な変動は容認できない」、「過度な変動には適切な対応を取りたい」と述べている。前回を上回る大規模な米ドル売り・円買いの為替介入が17日の東京市場で行われる可能性は否定できない。
■来週の注目スケジュール
10月17日(月):日・鉱工業生産(8月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(10月)、米・決算発表→BofAなど
10月18日(火):日・IoT展示会「CEATEC」開幕(21日まで)、中・鉱工業生産指数(9月)、中・小売売上高(9月)、中・固定資産投資(都市部)(9月)、独・ZEW期待指数(10月)、米・鉱工業生産指数(9月)、米・NAHB住宅市場指数(10月)、米・ミネアポリス連銀総裁が討論会に参加、米・決算発表→J&J、ゴールドマン、ネットフリックスなど
10月19日(水):日・SBIリーシングサービスが東証グロースに新規上場、中・新築住宅価格(9月)、英・消費者物価コア指数(9月)、欧・ユーロ圏CPI(9月)、米・住宅着工件数(9月)、米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、米・シカゴ連銀総裁が講演、米・決算発表→P&G、IBM、テスラ、アルコアなど
10月20日(木):日・貿易収支(9月)、ビジネスコーチが東証グロースに新規上場、中・1年物/5年物ローンプライムレート(LPR)、米・中古住宅販売件数(9月)、米・決算発表→AT&T、ボルボ、ブラックストーン、スナップなど
10月21日(金):日・消費者物価コア指数(9月)、英・小売売上高指数(9月)、欧・ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)、米・ニューヨーク連銀総裁がイベントの開会のあいさつ、米・決算発表→アメックス、ベライゾンなど
《YN》