明日の株式相場に向けて=半導体関連株に復活の萌芽
週明け24日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比84円高の2万6974円と反発。米株高の持続性にまだ確信は持てないが、年末に向けいったん買い戻し優勢の地合いになる可能性が出ている。原動力は米国の利上げ打ち止めのシナリオだが、一方で地政学リスクは軽視できない。ロシアの戦術核使用の可能性、そしてこれとは別に中国の動きも加わる。3期目に入った習近平総書記が発足した新指導部の顔ぶれを見て「あまりに確信犯的で戦慄すら覚える」という市場関係者もいるほどで、きょうの香港株の急落は東京市場にも暗い影を落としている。ただ、これがマーケットを支配するようなこともなさそうだ。
半導体関連に買い戻しの動きが強まっている。特に目を引くのは全上場企業の中で売買代金トップの座が定着しているレーザーテック<6920>で、株価は5連騰と気を吐いている。今月3日に年初来安値1万4320円まで突っ込んだところが下値限界となり、その後は急速に戻り足に転じ、きょうは8月26日以来となる2万円大台乗復帰を果たした。同社株は半導体製造装置 関連の中でも高PERがネックとなっていた。EUVマスクブランクス検査装置で世界シェアを独占しているとはいえ、米国を震源地とする“グロース狩り”のターゲットとなっていたのだが、ここ最近は満を持してリベンジ相場に舞台を移している。
また、半導体製造装置の国内トップで世界でも屈指の商品競争力を有する東京エレクトロン<8035>も負けてはいない。今月中旬を境に戻り足が鮮明だ。きょうは9月22日以来約1カ月ぶりに4万円大台に片足を乗せる場面もあった。このほかアドバンテスト<6857>やディスコ<6146>などの代表的な半導体製造装置メーカーが同様に上値指向だ。
株価の動きは実勢経済に先行するというのは常識的に知られているが、半導体製造装置関連や工作機械株などは特にそれが顕著である。市況が順風満帆で空に雲一つ見当たらない状態でも、ピークを越えたと思えばそこは既に売り場となる。これらの銘柄が押し目買いから戻り売りに変わっている、ということにマーケットが気がついたのは、まだ半導体需給の逼迫が世界的に強く喧伝されている最中のことであった。そして今はどういう状況かといえば、7月になって半導体出荷額がついに前年同期比でマイナスに転じた。軟調だった株価に実態がようやく追いついてきたわけだ。米国の半導体主力企業の先行き見通しについても概ね厳しい内容となっている。ところが、その実態悪がいよいよ浮き彫りになってきたところで、関連銘柄の株価は皮肉にも軒並み反騰の萌芽を見せ始めている。これまで空売りで成功を収めた筋が、買い戻しを考えるタイミングに入ったことを示唆している。
半導体セクターへの空売りで注目を浴びたのが、世界最大級のヘッジファンドとして名を馳せるブリッジウォーターだ。オランダに本拠を構えEUV関連装置で先駆するASMLホールディング<ASML>や半導体製造装置で世界トップクラスのアプライド・マテリアルズ<AMAT>などに戦略的に売りを浴びせてきた。市場では「ブリッジウォーターが買い戻しに動くのは来年とみられていたが、米長期金利が4%近傍で上値が重くなってきたのをにらみつつ、前倒しで回収(ショートポジション解消)し始めたのではないか」(国内証券アナリスト)という声も聞かれる。相場は輝く太陽の下で皆が陽気になっているような所に美味しい話は落ちていない。最も利益を生むのは暗闇に差し込む光明だ。その光明をたどって報われるタイミングが訪れている可能性がある。
主力どころが輝けばその周辺株にも光が当たる。値幅を取るのであれば中小型の方が足が速い。見渡せば今すぐに本格的な買いには発展しなくても、虎視眈々と逆襲を狙う安値圏に位置する銘柄がひしめいている。半導体リードフレームなどを手掛けるエノモト<6928>やパワー半導体 で実績の高い三社電機製作所<6882>、製造装置で独自技術を有するAIメカテック<6227>、半導体など電子機器商社で業績好調な丸文<7537>、パワー半導体や画像処理半導体の設計で強みを持つシキノハイテック<6614>などを注目したい。
あすのスケジュールでは、9月の外食売上高、9月の全国百貨店売上高など。海外では10月の独Ifo企業景況感指数、8月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、10月の米消費者信頼感指数などが注目される。海外主要企業の決算発表では、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOGL>、ゼネラル・エレクトリック<GE>、ゼネラル・モーターズ<GM>、テキサス・インスツルメンツ<TI>などに市場の関心が高い。(銀)