明日の株式相場に向けて=物色意欲に陰りなし、半導体は個別を見よ
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比97円安の2万7930円と3日ぶり反落。引き続き全体指数は上値の重い展開が続いている。もっとも下値を売り叩くような動きは鳴りを潜め、個別株物色意欲は引き続き旺盛だ。きょうは、日経平均がほぼ終日軟調で2万7000円台に再び押し戻されたが、値上がり銘柄数が全体の7割を占めるという異色の地合いであった。半導体関連が値を崩し全体の足を引っ張ったように見えるが、実際のところ、それは全体相場ではなく日経平均の足を引っ張ったというのが正しい。売られたのは「時価総額上位の半導体主力株」という但し書きがつく。
前日(16日)の米国株市場でマイクロン・テクノロジー<MU>が半導体ウエハー減産発表を受け大きく下落した(終値ベースで6.7%安)。この流れを受けて引け後に決算を控えていたエヌビディア<NVDA>のほか、インテル<INTC>、アプライド・マテリアルズ<AMAT>、ASMLホールディング<ASML>、アドバンストマイクロデバイシズ<AMD>といった一連の半導体関連株が総花的に売られた。しかし、半導体市況が悪化していることについては既にこれまでにメディアを通じ多方面でリリースされており、マーケット的にはそれに追随する形でネガティブな話が出ても、それほど響かない。スマートフォンやパソコンの売れ行き不振が伝わってから、ずいぶんと時間が経つ。メモリー減産の動きが出てくるのは当然想定されるところで、少なくとも寝耳に水ということはない。
そして、この日は必然的に引け後のエヌビディアの決算に市場の視線が集中することになったが、同社の8~10月期決算は一株利益が市場コンセンサスを下回った。しかし、ここからがこれまでとは違った展開だった。コンセンサス未達が嫌気され同社株が時間外取引でもう一段売り込まれると思いきや、そうはならなかった。通常取引で下げた分(4.5%安)を帳消しにはできなかったが、株価がプラス方向に振れたことは光明であったといえる。
この日、米株市場の半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は4%を超える下げとなり、きょうの東京市場でも半導体関連株にとっては強烈な向かい風のなかでのスタートを意識させたが、思ったほどの風速ではなかったようだ。これまで記録的な戻り足を見せつけてきたレーザーテック<6920>は、その反動もあって一時2500円以上の下落をみせたが、これが全体相場の縮図とはならなかった。半導体関連の中小型株に目を向けると意外なくらい頑強な値動きで、上値を指向する銘柄が多い。シリコンウエハー製造工程で必須の光学断層測定器を手掛けるsantec<6777>は一時8.7%高で21年ぶりに上場来高値を更新したほか、当欄でも直近取り上げたC&Gシステムズ<6633>、アバールデータ<6918>、浜井産業<6131>、ティアンドエス<4055>、日本トムソン<6480>、パンチ工業<6165>など、いずれも目先筋の利食い玉を呑み込んで上値追い態勢を維持した。
個人投資家のリスク許容度が着実にアップしている。ネット証券大手の直近データによると、全市場ベースの信用評価損益率はマイナス7.2%と一段と改善している。信用評価損益率は通常マイナス圏にあり、これがプラスマイナスゼロに近づくと相場はオーバーヒート状態という判断が成り立つ。現状は、過熱はしていないが投資マインドがかなり暖まった状況にある。個人投資家資金の回転が効いていることが、半導体関連の中小型株の強い動きに反映されている。ただ、米国株市場の動向は注意が必要で、NYダウの8月の戻り高値水準である3万4000ドル近辺は、いったんはターニングポイントとなりやすい。
したがって、今は個別株重視かつキャッシュポジションは高めを維持し、機動的にヒットアンドアウェイを心掛けるのが賢明であろう。半導体関連の中小型株では、シンフォニア テクノロジー<6507>、インスペック<6656>、佐鳥電機<7420>、ニレコ<6863>といった銘柄にチャート妙味が感じられる。
あすのスケジュールでは、10月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に総務省から発表される。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札も行われる予定。海外では10月の英小売売上高のほか、10月の米景気先行指標総合指数、10月の米中古住宅販売件数にマーケットの関心が高い。(銀)