相続税対策で急浮上、「土地有効活用」で活躍のワケあり銘柄総ざらい <株探トップ特集>

特集
2022年12月1日 19時30分

―相続税制改正で課税対象の裾野広がる、収益不動産を提案するビジネスも拡大へ―

相続税を巡る議論が熱を帯びてきた。11月30日付の日本経済新聞朝刊では、「政府・与党は高額なタワーマンションなど不動産を活用した相続税の過度な節税を防ぐ検討に入った」と報じており、2023年度の与党税制大綱で今後の検討課題に盛り込むことを目指すとしている。

富裕層に限らず、相続税対策は頭の痛い問題といわれている。特に土地や家屋などの不動産を遺産相続する場合、相続税の支払い負担は大きく、対策として土地の有効活用を図るケースも多い。

15年の相続税制改正で被相続人の数が増えたこともあり、土地の有効活用への関心は高まっており、関連するビジネスは裾野が広がっている。相続税を巡る議論が活発化すれば、今後株式市場でも土地有効活用関連銘柄への関心が高まる可能性もあり、注目してみたい。

●相続税対策を必要とする人が増加

土地有効活用ビジネスとは、土地を保有する地主に対して、その有効活用を提案する不動産関連ビジネスのことで、法人を対象とする「開発」よりも小規模な、主に個人を対象としたものをいう場合が多い。

地主の多くは、自分が保有する土地をどのように活用するかという課題を抱えている。仮に収益不動産を設ければ、収入源となるばかりでなく、土地の評価額のうち、相続税の対象となる部分を減らすことや、特例を受けることができるため、更地のまま保有した場合に比べて毎年の固定資産税率や都市計画税率、相続税率などが低下することにつながる。

特に相続税については、15年の相続税制改正で基礎控除額が引き下げられ、全国の課税対象となる被相続人の数が、それまでの5万人台から15年には10万人台にほぼ倍増した。20年には12万人台に増加しており、つまり相続税対策を必要とする人の裾野が広がっていることになる。このため、土地の立地や面積などの特性に応じた収益不動産を提案する土地有効活用ビジネスには根強い需要がある。

●貸家着工戸数回復でハウスメーカーに注目

「土地有効活用」の業界自体は明確に定義されているわけではないものの、一般的には、個人を対象にアパートや戸建て賃貸、老人ホームなどの比較的規模が小さい建物を提案するハウスメーカーが代表的な銘柄とされている。特に住友林業 <1911> [東証P]、大和ハウス工業 <1925> [東証P]、積水ハウス <1928> [東証P]などのほか、旭化成 <3407> [東証P]、積水化学工業 <4204> [東証P]などの大手は提案力に強みがあり、さまざまな土地の有効活用に対応できる点がメリットと言える。また、大東建託 <1878> [東証P]や東建コーポレーション <1766> [東証P]なども提案力に定評があり注目される。

注意したいのはアパートローン規制の影響だ。全国のアパートなど貸家の着工戸数は、前述の15年の相続税制の改正に伴い、14年から17年にかけて急増したが、18年に女性専用シェアハウスを巡る「かぼちゃの馬車」事件やそれに伴う一部地方銀行の不正融資問題が発覚。それ以降、金融庁が銀行のアパートローンの貸し出しについて監視を強化したことで、18年以降は減少し、新型コロナウイルスの感染拡大もその傾向に拍車をかけた。

21年は、貸家着工戸数は前年比で増加し、コロナ禍から回復に向かっている様子がうかがえる。ただ、規制の影響は残っているとみられ、引き続き各社の業績動向には要注目だ。

●時間貸し駐車場やトランクルームにも注目

一方、暫定的な活用も多く、アパートなどに比べて相続税対策効果は大きくないものの、「投資額を抑えたい」「ローリターンでも構わない」といった層に人気なのが、時間貸し駐車場やトランクルームなどだ。

時間貸し駐車場 で注目されるのは、日本駐車場開発 <2353> [東証P]だ。運営する月極駐車場検索ポータルサイトに寄せられた膨大なデータをもとに新規物件を開拓することで、月極契約件数を高水準に保っているのが特徴で、新規物件獲得が順調に推移。今後も国内駐車場事業の安定成長を見込む。

パーク24 <4666> [東証P]では国内駐車場事業の収益性向上に取り組んでおり、収益性の見込まれる厳選された開発に注力しているほか、解約などによる不採算駐車場比率の縮小に取り組んでいる。

パラカ <4809> [東証P]は22年9月期に積極的な営業活動を再開したことで新規開拓数が増加。また、21年8月に伊藤忠商事 <8001> [東証P]と資本・業務提携したことに伴い物件の紹介を受けたことなども業績に貢献している。

一方、 トランクルームで注目されるのはエリアリンク <8914> [東証S]だ。相続税対策としても活用できる屋内型トランクルームを展開。契約開始から10年間はサブリース契約のため空室リスクがないことなどを特徴に契約獲得も順調で、ストレージ事業の成長が続く。

ストレージ王 <2997> [東証G]も近年、都心部を中心に屋内型トランクルームが増加。パルマ <3461> [東証G]はトランクルーム業界向けBPOが主力だが、トランクルーム開発なども行う。両社は11月に業務提携し、トランクルームビジネスにおける全プロセスでより付加価値の高いサービスを提供するとしており、業績への貢献に期待したい。

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