明日の株式相場に向けて=中国「ゼロコロナ」解除の光と影

市況
2022年12月28日 17時00分

きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比107円安の2万6340円と3日ぶり反落。損益通算の売りというコンセプトが大手を振っており、綺麗なチャートを描いている株でも容赦なく売られる地合いである。世界を俯瞰して希望が見えてこない。FRBやECBの豹変ともいうべき金融引き締め政策への転換は経済実勢に多大な影響を及ぼし、既にリセッションが回避しにくい状況に陥った。更に景気が後退するだけであればまだしも、欧州では天然ガスの調達がままならず、エネルギー価格高騰の余波によって同時進行で物価上昇の波にも揉まれる状態、いわゆるスタグフレーションに苛まれることへの恐怖感が拭えない局面にある。

東京株式市場は相対的に有利という見方も確かにある。市場関係者は「23年度はドイツなど欧州の主要国はマイナス成長に陥る公算が非常に大きく、欧州経済よりマシとされる米国もマイナス成長こそ免れるかもしれないが、0~0.5%の低成長にとどまる可能性が高い」(準大手証券アナリスト)という。これでは、とてもじゃないが株式市場に長期で資金を寝かせてはおけないという気にさせられるが、日本の場合は欧米とは少々事情が異なる。この経済難局の間隙を縫って日経平均が上値を指向するようなケースも考えられるという。「外国人は今年、存分に日本株を売り越した。来年は順番的に買い直すタームで、買い直す理由もある。23年度は経済低迷にあえぐ欧米を尻目に、日本は22年度を上回る1%台後半の経済成長が見込めるからだ」(同)とする。

だが、欧米株が買えないから日本株に投資するという論理自体はやや短絡的に過ぎる部分もある。実際、世界景気が悪化するなか日本の経済成長率にも下方修正圧力が働く。行動制限の緩和やインバウンド特需による経済効果を買いの手掛かりとするのはおそらく現実とギャップがあり、企業業績の全貌が見えてくるまでのモラトリアム期間にとどまると思われる。来年は逆業績相場の洗礼を受けないまま株式市場が立ち直るケースは考えにくい。世界的に金融緩和の必要性が叫ばれるだけではダメで、各国中央銀行が現実的な利下げスケジュールを匂わす段階まで、相場は調整トレンドを余儀なくされるのではないか。とすれば株価復活の狼煙が上がるのは早くて年後半、それまで日経平均株価は値幅的にはそれほど深い調整とはならなくても日柄的には引きずりそうで、戻り売り圧力からなかなか脱することができずに、ダラダラと下値を試すような展開が繰り返される可能性もある。

インバウンドといえば、目先は中国のゼロコロナ政策の方向転換が話題を呼んでいる。習近平政権のメンツにかかわる云々といった話がまことしやかに広まり、まさか今のような行動規制の緩和が年内に矢継ぎ早に行われることは想定しにくかった。それだけに“棚ぼた的”な好材料として関連株の一角を刺激している。

しかし、インフレに慌てた各国中央銀行による金融政策転換の顛末でも明らかなように、政策を司る者の連続性を欠いた急な路線変更は大抵の場合、弊害が生じる。「中国では新型コロナ感染者数が想定を上回る猛スピードで増加しており、早晩これがインバウンドの足かせとしてメディアを賑わす可能性がある」(生保系エコノミスト)という指摘も出ている。前日取り上げた関連株ではエスケイジャパン<7608>が意外性を発揮して急勾配の戻り相場にあるほか、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>なども機関投資家とみられる売り物が切れ、トレンド転換を意識させる動きだが、持続性には疑問符がつく。あくまでヒット・アンド・アウェイを基本とし、深追いは避けた方がよさそうだ。

では中長期投資の対象を考えるのであれば何か。この質問に対しては、やはり銀行株を上げる市場関係者が多い。「三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>や三井住友フィナンシャルグループ<8316>などメガバンクは、解散価値と同等のPBR1倍を目指すという認識で、買ったら目先に振り回されず手放さないのが肝心」(ネット証券アナリスト)という声が聞かれた。このほか、三菱重工業<7011>は国策として浮上した防衛関連の文字通り旗艦銘柄として長く保有する価値がありそうだ。

あすのスケジュールでは、国内に目立ったイベントは見当たらないものの、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にスマサポ<9342>が新規上場する。また、米国では7年国債の入札が予定される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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