桂畑誠治氏【底入れ反転か? 米株高受け戻り足の東京市場】 <相場観特集>
―今週の米CPIは鬼門だが米株は当面上値慕う展開も―
3連休明けとなった10日の東京株式市場は日経平均株価が200円あまりの上昇で3日続伸した。フシ目の2万6000円大台ラインを終値でようやく突破できたものの、戻り売り圧力の強さも観測された。目先底入れから一段の上値を目指すことができるのか。米国株と比較して相対的に上値の重い東京市場だが、ここからの相場展開について、第一生命経済研究所の主任エコノミストである桂畑誠治氏に意見を聞いた。
●「米株主導で上昇期待も上値重いか」
前週末6日に発表された12月の米雇用統計は平均時給の伸び率が市場コンセンサスを下回り、株式市場では連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めに対する警戒感が後退した。雇用者数の伸びは事前予想を上回ったのだが、10月と11月の下方改定を考慮すると実質的には市場の見込みよりも弱いトレンドとなっている。一方、同日発表された12月のISM非製造業景況感指数も事前予想から大きく下振れした。これは暴風雪による影響という特殊要因もあったが、景気鈍化の思惑が過度な引き締め懸念を緩和する形となった。
今週は週後半の12日に12月の米消費者物価指数(CPI)発表を控えており、この結果を見極めたいというニーズは強い。とはいえコンセンサスでは、総合指数が前年同月比6.5%の上昇、コア指数が5.7%の上昇といずれも前月から鈍化傾向を示すことが濃厚であり、この通りであれば相場の波乱要因とはなりにくく、全体株価にはむしろ浮揚力が働く。
ただし、利上げペースの鈍化は既定路線ではあっても、金利の最終到達地点であるターミナルレートの低下や早期利下げを示唆するものではなく、過度な楽観は禁物といえる。1月31日~2月1日の日程で行われる連邦公開市場委員会(FOMC)では、現状は0.25%の利上げにとどまるとの見方が強いが、仮にそうであったとしても、会合後のパウエルFRB議長の記者会見では、タカ派的なコメントでマーケットの楽観を戒める公算が大きいとみている。したがって、FOMC前は米国株主導で強調展開が続いたとしても、通過後は再び軟化する可能性がある。
NYダウはFOMC前に上値を慕う展開となり、3万5000ドル近辺をうかがうような動きが期待できるかもしれない。ただ、日経平均は日銀の政策修正に対する警戒感がくすぶっており、米国株よりは動きが鈍くなりやすい。2月までのレンジとしては、上値は2万7000円近辺にとどまりそうだ。また、米国株が弱含みで推移するようなケースでは2万5000円前後まで下押す可能性も考えられる。なお、物色対象としてはインバウンド関連やメガバンクなど大手金融関連、また医薬品などのディフェンシブセクターが相対的に優位性を発揮しやすいとみている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース