長期保有でも安心、超バリューで高配当「激アツ好業績株6連弾」 <株探トップ特集>

特集
2023年1月14日 19時30分

―好業績・割安・高株主還元の3拍子揃った変身期待銘柄をしたたかに拾え―

日銀の金融政策決定会合を来週17~18日に控え、東京株式市場では緊張感が高まっている。しかし、総論と個別株戦略は元来次元が異なるものであり、悲観に凝り固まるとチャンスを逃す。実際、全体相場が不安定な局面で逆に輝きを増すような銘柄もある。今の東京市場には配当など株主還元に積極的でなおかつ業績変化率の高い銘柄ながら、極めて割安な水準に放置されているものが実は少なからず存在する。今回のトップ特集ではそうした銘柄群を対象に、短期での値幅取り妙味を内包しつつ長期保有でも結果を出せる可能性が高い有望株を選りすぐった。

●グローバルマクロの売り仕掛けか

週末13日の株式市場はオプションSQ通過後に売り仕掛けが入り、日経平均株価は大きく下値を探る展開となった。中国、香港、台湾など同じ時間帯のアジア株市場が総じて強い動きを示していたことを考えると、違和感を覚える下げともいえたが、これは指数寄与度の高いファーストリテイリング <9983> [東証P]の株価急落による部分が大きい。同社が12日に発表した決算が不調だったとはいえ一時7000円を上回る暴落となり、市場では「先物を絡めたインデックス的な売り仕掛けのターゲットにされた可能性がある」(準大手証券ストラテジスト)という声が出ていた。

何と言っても国内10年債利回りが0.545%まで上昇し、イールドカーブ・コントロールの防空圏が破壊されたことは、投資家のセンチメントに多大な影響を与えた。この日は「債券市場とリンクさせる形でヘッジファンドのグローバルマクロ戦略による売りが東京市場を襲った」(同)との見方がある。もっともTOPIXの下げはわずか5ポイントにとどまっている。金利上昇が最大の好物となるのはメガバンクをはじめとする銀行セクターだ。この日は地銀を含め銀行株が全面蜂起の様相をみせ、TOPIXを引き上げた。

●日米金利差縮小がドル安・円高を誘発

1月相場の最大の関門ともいわれた12月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.5%上昇で事前コンセンサスと一致、11月の7.1%上昇から大幅に鈍化したことで12日の米国株市場は買い安心感からNYダウナスダック総合株価指数いずれも上昇した。次回FOMCにおける政策金利の引き上げ幅は25ベーシスポイントにとどまるとの見方が強まっている。ただ、前日の米株市場ではCPI発表後に両指数ともいったんマイナス圏に沈むなど、気迷いムードもみられる。ファンダメンタルズから離れてやや楽観に傾斜し過ぎた感は拭えず、反動安に身構えておく必要もありそうだ。

一方、東京株式市場は足もとで日銀の金融政策転換への警戒感が根強く、上値を重くしている。米国ではFRBによる金融引き締めが緩むとの観測で長期金利が低下傾向を強めるなか、日本の方は日銀が大規模金融緩和策を見直すというシナリオが描かれている。これに伴い日米金利差縮小は必然の流れとなり、その思惑の中で外国為替市場ではにわかにドル売り・円買いの動きが加速している。円高は輸入コストを下げるため国内のインフレを抑制する効果があるが、株価面では全般論として企業業績のEPSを低下させる要因となるだけに、ネガティブ材料として捉えられている。

過去の歴史を振り返っても株式市場は円安ウェルカムであることは間違いなく、例えば2012年から15年にかけてのアベノミクス相場では、為替の円安進行と株高が見事なまでに共鳴している。経済政策発動による景気刺激よりも円安は株式市場に大きな浮揚効果を与えることを、安倍政権時代の株式市場が証明している。そしてこれは黒田日銀総裁による金融政策すなわちクロダノミクスとほぼ同義だ。したがって、ここから先はアベノミクスのDNAが消えた相場が控えているということを念頭に置いておく必要がある。

●投資マネーは次に流れ込む入り江を常に探している

ただし一つ忘れてはならないのは、今の相場が決して自律神経を失ってしまったような状態にはないことだ。投資マネーは新たに流れ込む入り江を探している。例えば今後の金利上昇に対する思惑が銀行株を押し上げているのは、期待先行でやや行き過ぎた部分もあるにせよ、株式市場において非常に合理的な動きといってよい。タイムラグは生じても良いものは着実に拾われる。そこに先回りするのが株式投資に勝利する秘訣であり、そして先回りして買うべき銘柄は常にマーケットに存在している。

今回のトップ特集では、全体相場の地合いに左右されにくい好業績(業績高変化)株の中から今後も成長シナリオが描ける銘柄を抜粋。更にPERなど株価指標面で割安感が強く、高配当利回りも魅力という欲張りな条件を満たした6銘柄をエントリーした。

●ここから本領発揮の有望6銘柄をロックオン!

【丸文は今期75%営業増益で22年ぶり最高益へ】

丸文 <7537> [東証P]はエレクトロニクス商社で半導体や電子部品 のほか、レーザーなどシステム機器も扱っている。電子部品・コンピューター製品の販売を手掛ける米アロー・エレクトロニクス<ARW>が筆頭株主であり、米国メーカーの商品取り扱いでも強みを持つ。

5G関連ソリューションのほか、AI・IoT、ロボティクス、スマートファクトリーなど次代を担う成長分野に幅広く対応、顧客ニーズを開拓している。業績は産業機器向けに旺盛な電子デバイス需要を追い風として絶好調に推移している。23年3月期営業利益は、前期比75%増の105億円予想と目を見張る伸びで22年ぶりの過去最高利益更新を見込んでいる。商社にしてこの業績変化率は特筆に値するが、それ以上に株価指標面でPER8倍台、PBR0.5倍台は同社の業態を考慮しても割安さが際立つ。加えて株主還元に前向きな点もポイントで、23年3月期の年間配当は前期実績比で15円増配となる45円を計画、4.6%前後の高配当利回りも投資マネーの食指を動かす。

【東京綱はCFCCを武器に成長加速し超割安返上へ】

東京製綱 <5981> [東証P]は鋼索(ワイヤーロープ)の最大手で、炭素繊維 と熱硬化性樹脂を複合化し、撚(よ)り合わせて成形した炭素繊維ケーブル(CFCC)で強みを持つ。CFCCは同社が誇る高付加価値商品として世界10ヵ国で特許を取得しており、米国を中心に橋梁向けで高水準の受注を獲得している。

業績はCFCCの売り上げ拡大や製品価格の引き上げ効果などを背景に急拡大局面にある。22年3月期実績ベースで営業利益は前の期比2.3倍化したが、続く23年3月期も前期比6割増益の26億円を予想、一株利益は130円強に達し、PERに換算して6倍台と超割安圏にある。またPBRは0.5倍、配当利回りは3.5%前後あり株高への修正余地は極めて大きいといえる。自社株買いなど株主還元にも余念がない。株価は昨年8月に1063円の高値をつけた後調整を強いられたが、年が明けて底入れ反転の動きを明示している。早晩戻り足を強め4ケタ大台復帰が有力視される。

【アジアパイルはアセアンで飛躍、SDGsにも注力】

アジアパイルホールディングス <5288> [東証P]はコンクリートパイル製造及び施工で業界トップクラスの実力を持つ。15年にジャパンパイルから商号変更し持ち株会社に移行したが、同社が国内で培った高度な技術力を活用し、ベトナムを中心にアセアン市場で幅広く活躍の場を広げている。世界展開をにらみながら、持続可能な開発目標いわゆるSDGsへの取り組みに積極姿勢を明示しており、これがイレギュラーな割安圏に放置されている同社株に外国人買いを誘導する背景となり得る。

23年3月期業績は急拡大見通しにあり、営業利益段階で前期比倍増となる45億円を予想するが、既に22年4-9月期時点で36億2700万円に達し対通期進捗率は80%を超え、一段の上振れが濃厚。場合によっては19年3月期に記録した過去最高利益52億1200万円を更新する可能性もある。にもかかわらず指標面では割安感が際立つ状況で、PER9倍未満、PBR0.5倍台は株価修正余地が大きい。

【トムソンは目を見張る収益変化で究極の仕込み場に】

日本トムソン <6480> [東証P]は半導体製造装置向けを中心に直動案内機器を手掛ける。国内で初めて自社技術で開発したニードルベアリングなど少量多品種型生産で優位性を発揮する。足もとでメモリーなどを中心に半導体市況の軟化が指摘されるなかも、経済安全保障の観点から世界的な半導体設備増強の動きは不変。また、工作機械向けでも根強い需要を獲得しており、今後は中国経済再開に向けた思惑もポジティブに作用する。

業績は22年3月期を境に様変わりしており、営業損益はトップライン拡大効果で21年3月期の赤字から一転して58億9800万円の黒字と驚異的な回復をみせた。更に23年3月期も収益成長は止まらず、営業利益は前期比53%増の90億円を見込む。これは07年3月期以来16期ぶりの高い水準となる。なお、トップラインは前期に続き過去最高を更新する見込みだ。この成長力にしてPER5倍前後、PBR0.5倍台は究極の割安圏と言ってもよく、絶好の仕込み場を提供している。

【PHCHDは医療分野で高成長、中期計画も注目】

PHCホールディングス <6523> [東証P]は医療機器・サービスの開発及び製造販売を手掛ける。収益構成は糖尿病のマネジメント、ヘルスケアIT、診断・ライフサイエンスの三本柱となっている。14年にパナソニックからカーブアウトし、パナソニックヘルスケアホールディングスとして事業を開始した後、M&Aによって事業領域を拡大し18年から現社名に変更した。

新型コロナウイルスの感染拡大を背景にPCR検査の受託などでも実績がある。超低温フリーザーはワクチン保管用以外の一般需要も取り込み業績に反映させている。23年3月期から26年3月期までの4ヵ年中期経営計画を策定し、主力の血糖値測定システムの拡販を原動力に最終年度に営業利益560億円目標を掲げている点に注目。これは22年3月期の実績と比べ約7倍の水準でインパクトがある。差し当たって23年3月期営業利益は前期比4.1倍の336億400万円を見込んでいる。時価1500円近辺の株価はPERなどに割高感はなく、配当利回りも5%近くある。

【太平発は5%超の配当利回りでPBR0.4倍に放置】

太平洋興発 <8835> [東証S]は輸入炭の販売のほか、マンションの管理・賃貸など不動産分野にも展開する。また、都市型有料老人ホームなどシルバービジネスにも積極的に取り組んでいる。業績は資源価格の高騰を背景に輸入炭の販売単価上昇が収益押し上げ効果を発揮しており、23年3月期は売上高が従来予想の453億円から540億円(前期比64%増)に、営業利益は8億円から10億円(同59%増)に上方修正している。

株価は昨年11月以降、石炭市況の上昇を手掛かりに急速に水準を切り上げてきたが、それでも時価PBRは0.4倍強と解散価値を6割も下回る水準にあるため、依然として水準訂正余地の大きさが意識される。今期配当は前期実績に10円上乗せの43円を計画。配当利回りは5.3%前後と高水準だが、期末一括配当であることもポイントで、今後はインカムゲイン狙いの買いが厚みを増すことが予想される。信用買い残は枯れた状態で値動きは軽く、25日移動平均線を支えに下値を切り上げる動きが続きそうだ。

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