窪田朋一郎氏【日経平均再び下値模索へ、日銀絡みでどう動く】(1) <相場観特集>
―円高進行受けリスクオフ、為替と株両にらみの展開に―
週明け16日の東京株式市場では、日経平均株価が続落しフシ目の2万6000円台を割り込んできた。米国株市場はインフレ警戒感の後退を背景に強調展開を続けているものの、日本はなかなかこれに追随できない状況にある。外国為替市場で一段と円が買われ、一時1ドル=127円台前半まで円高が進行したことで買い手控え感が強い。今週18日の日銀金融政策決定会合の結果待ちだが、足もと荒れ模様の日本株はここからどこへ向かうのか。そして、投資家の視線が集中する為替の動向は。今回は、株式市場の見通しと為替市場の見通しについて、それぞれ業界第一線で活躍する市場関係者に話を聞いた。
●「天下分け目となる金融政策決定会合」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京市場は今週17~18日の日程で開かれる日銀の金融政策決定会合の結果を前に思惑が錯綜しているが、実際のところ、この決定会合の内容次第でその後の株式市場の景色も大きく変わることになりそうだ。
まず、現在日銀が行っているイールドカーブ・コントロール(YCC)については、事実上もはや維持できない段階に来ている。日銀による無制限の国債買い入れの動きは、債券市場の流動性を失わせる点で弊害が大きく債券市場関係者の不評をかっている状況にあり、遅かれ早かれ政策修正は必然の流れにある。ただ、今回の決定会合で黒田日銀総裁はこれまでの「現状維持」を貫き通すのか、それとも政策変更の動きを見せるのかは定かではない。個人的にはYCC全面解除の可能性は十分にあると考えている。
仮に今回の政策決定会合でYCCの全面解除となった場合は為替の急激な円高とセットで株式市場は急落に見舞われることになり、日経平均は2万5000円前後まで下値を試す展開が想定されるが、その後の戻り足も急となるパターンを予想する。一方、現状維持を貫いた場合は、日経平均は急落に見舞われることはないものの、不透明感の強い地合いが継続し当面はダラダラと下値を模索する展開を余儀なくされるだろう。
日銀金融政策決定会合の通過後に日経平均が急な下げに見舞われたとしても、一過性でその後はリバウンドに転じる公算が大きい。ただし、日経平均の本格的なトレンド転換は難しく、200日移動平均線が位置する2万7200円近辺が当面の上値メドとみている。
物色対象としては引き続き三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などのメガバンクに地銀を加えた銀行セクターや、第一生命ホールディングス <8750> [東証P]など生保株への注目度が高い。もっとも日銀の政策修正の動きが現実化すれば、日経平均に逆行してこれらの銘柄群は上げ足を一気に強める可能性があるかわりに、短時間で天井圏まで水準を切り上げ反落リスクも高まるため注意が必要となりそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
株探ニュース