今年の原油相場の占うカギは2つ、目先の波乱要因はロシア追加制裁<コモディティ特集>

特集
2023年1月18日 13時30分

●中国経済の正常化を注視

今年の原油市場の焦点の一つは中国経済の正常化である。長らく続いたゼロコロナ政策が終了した結果、コロナの陽性者数や死者数が膨れ上がるという事態に陥ったが、正常化済みの国が示すように経済再開のカギはワクチンやマスク、行動制限などではなく、感染による免疫の獲得であることは明らかだ。未だにコロナの恐怖を煽る報道が絶えないのは不思議であるが、中国経済はまもなく正常化し、原油相場は上向いていくのではないか。

都市封鎖や行動制限などが繰り返されることが当たり前であった社会が一朝一夕にコロナ前に戻るとは思えないものの、人々や企業がコロナを風邪などと同様に受け入れることができるならば、コロナは過去のものである。コロナを終わらせるのは政府ではなく、企業や市民の心持ちである。

石油市場の市場参加者は中国経済の再開を見定める指標の一つとして、高速道路における交通量に注目している。自家用車や運送トラックなどにより交通量が増加し、人やモノの動きがコロナ前に近づいていけば、正常化期待が高まるだろう。香港と深センをつなぐ道路状況からすると、年明け後も物流や人流の回復はまだ限定的だが、正常化は時間の問題である。今週末からの春節を挟んだ交通量の変化に期待したい。

●パウエル議長の対話能力が試される

今年を占うもう一つのカギは、主要国の金融当局者の舵取りである。景気見通しが悪化している一方、米国ではインフレ率が抑制されており、利上げの一時停止を想定することが妥当となっているものの、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的な態度を修正すると、株式市場や原油市場などリスク資産を押し上げ、インフレとの戦いに支障をきたすことになりかねない。

これまでの金融引き締めが転換するとの期待感が高まるなら、これまでの努力に水を差す。リスク資産市場を怯えさせたままタカ派的な金融政策をいかに転換するのか、パウエルFRB議長の対話能力が試される局面が近づいている。必要なコミュニケーションが欠如するならば、思惑が市場を動かし金融当局が後手に回るリスクがある。対話の先送りは金融当局者の首を絞めるだろう。

●ロシアへの追加制裁は混乱を招く

来月5日から欧州連合(EU)がロシアからの石油製品の海上輸入を停止することが既に決まっているほか、米国など西側がロシア産の“石油製品”にも上限価格を設定しようとしていることは混乱を招く可能性が高い。

ロシア産原油の価格制限はロシアのウラル産原油の相場を圧迫し、西側の期待どおりの結果となったことから、ロシアの石油収入をさらに限定しようとしているのかもしれない。だが、石油製品はガソリンや軽油のほか、重油やアスファルト、ナフサなど種類がかなり多いことから原油のように単一の上限価格では目的の達成は不可能である。

石油製品の種類に沿って上限価格を設定すれば制裁が煩雑化し、ロシア産の石油製品から買い手が遠のくかもしれないが、需給バランスを著しく乱すリスクがある。追加制裁があるのか、報道を見定めたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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