明日の株式相場に向けて=日銀狂騒曲と踊り狂うAIアルゴ

市況
2023年1月18日 17時00分

きょう(18日)の東京株式市場は後場に入って急速に強気優勢に傾き、日経平均株価は前営業日比652円高の2万6791円と大幅続伸した。一気に2万7000円台も視界に入れる水準に浮上してきた。

前場の取引終了後は、ある種異様なムードが漂っていた。日銀の金融政策決定会合の結果公表を、文字通り固唾を呑んで見守る格好となったわけだが、ヘッドラインに「現状維持」のワードが躍るか躍らないかの段階で株式市場と外国為替市場に激流が発生、日経平均先物は一時800円近い急騰で2万6900円台まで値を飛ばした。ドル円相場は爆発的なドル買い円売りで一時1ドル=128円台半ばから131円台半ばまで3円あまりに及ぶ円の急落となり、この瞬間は歓喜と悲鳴が入り交じったような状況となった。

市場では「足もとで銀行ロング、日経平均ショートのポジションをとっていた投資家の巻き戻しが加速した。大部分は“日銀アルゴ”とも称されるAI売買であり、その影響が如実に出た」(ネット証券マーケットアナリスト)という。銀行株を買いながら日経平均を売るという手法は、いうまでもなくヘッジではない。この日銀プレーは、簡単に言ってしまえばイールドカーブ・コントロールの許容変動幅の拡大もしくは撤廃が行われるのか、それとも行われないのかということが焦点で、もし前者であれば大規模金融緩和策の方針転換を示唆する十分な根拠となるため、金利上昇局面への移行が強く意識されることになる。銀行株にとっては買い材料だが、株式市場全体で見れば過剰流動性が縮小に向かうことでマイナスに作用する。短期的には銀行株急騰、日経平均急落という逆向きのベクトルが同じ時間軸で顕在化する。これを狙って2階建てで利益獲得を目指す手法であり、仮に逆目を引いた場合は直ちにポジションをたたむ必要に迫られ、一転して“手仕舞い合戦”の様相を呈する。今回は「現状維持」で一斉にポジション解消の動きが出て、銀行株に投げ売りが生じる一方、日経平均が押し上げられる形となった。

しかし、個人トレーダーはしたたかで、こういう局面でも鍛えられた反射神経でチャンスをものにする向きもいたようだ。個別株は個々の企業のファンダメンタルズを無視した形で不合理な値動きが生じた場合、時間とともにそれを矯正する動きが出てくる。後場取引が始まる前の段階で銀行株には売りのバイアスがかかり、例えばメガバンクでは三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>は後場寄りにウリ気配で始まり48円あまりの下落で902円で値をつけたが、市場関係者によると、この後場スタート前から積み上げられた機械的な投げ売り注文をイレギュラーとみて買い向かう動きが観測されたという。もちろん売りは誤発注ではないが、ヒステリックな売りであることは間違いなく、株価が合理性を取り戻すまでに要する時間は短い。これは三井住友フィナンシャルグループ<8316>やみずほフィナンシャルグループ<8411>でも同様の動きがみられた。

三菱UFJを俎上に載せれば、商い成立後は案の定ヨーヨーが戻るように戻り足を形成、午後2時過ぎには前日の終値に近い948円まで値を戻す場面もあった。後場のわずかな時間で最大46円程度のサヤを抜いた勘定となる。企業に対する審美眼を磨くのも大切だが、こうしたマーケットの「ゆがみ」を見逃さないというのもトレーディングでは重要な資質といえるのかもしれない。

いずれにしても、日銀は金融緩和政策の修正を行わず「現状維持」を貫いた。しかし、これは債券市場や外国為替市場で投機筋の仕掛けを改めて誘発する形になりやすい。催促相場の様相となることは避けられず、これについては次期日銀総裁も大きな課題を背負うことになる。黒田総裁の後任人事案は2月に提示される方向にあるようだが、岸田首相の推す白川総裁時代の副総裁である山口広秀氏が浮上すれば、タカ派傾斜が明らかとなり株式市場にとってはまた悩ましい局面を迎えることになる。

あすのスケジュールでは、22年12月の貿易統計が朝方取引開始前に発表されるほか、午後取引時間中に実質輸出入の動向が開示される。また、1年物国庫短期証券の入札も予定されている。海外ではマレーシア中銀、インドネシア中銀、ノルウェー中銀、トルコ中銀がそれぞれ政策金利を発表する。このほか米国では12月の住宅着工件数、1月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数に市場の注目度が高い。なお、台湾市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年01月18日 18時39分

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