新興市場見通し:調整局面入りか、ただ物色動向には余力あり
■賃金インフレピークアウトや利上げ停止への期待高まる
今週の新興市場は4週続伸。週末こそは米雇用統計の発表を前にした利益確定売りで下落したものの、木曜日まで4日続伸となった。米12月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米10-12月期雇用コスト指数の鈍化傾向を受けインフレピークアウト期待が高まった。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り利上げ幅が0.25ptへと縮小されたほか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長から年明け以降の株高・金利低下をけん制する発言が出なかったことも投資家心理を改善させた。さらに、欧州中央銀行(ECB)と英イングランド銀行が利上げの継続を主張しつつも、利上げ停止が近いことを示唆したことも支援要因となった。なお、週間騰落率は日経平均が+0.46%であったのに対して、マザーズ指数は+1.66%、東証グロース市場指数は+1.59%だった。
時価総額上位銘柄では、第1四半期好決算が評価されたM&A総合研究所<9552>が週間で+23.9%と急伸した。東証プライム市場のM&A関連銘柄の決算が冴えない中、別格の強さを見せたことで注目度が高まった。ほか、イーディーピー<7794>が+12.8%、フリー<4478>が+10.7%、サンウェルズ<9229>が+8.0%となった。週間騰落率ランキングでは、上半期の大幅増益が好感されたギックス<9219>が+44.0%と急伸した。
■米雇用統計で楽観ムードに修正余地
来週の新興市場は弱含みか。今週末に発表された米1月雇用統計では平均時給は前年比+4.4%と前月(+4.8%(修正値、以下同様))から鈍化、前月比でも+0.3%と前月(+0.4%)から鈍化した。一方、非農業部門雇用者数が+51万7000人と前月(+26万人)から大幅に増加し、鈍化するとの市場予想(+19万人)を大きく上振れた。また、失業率は3.4%と市場予想(3.6%)に反し、前月(3.5%)から低下。さらに、12月に49.2と景況感縮小の50割れまで急低下した米ISM非製造業景気指数は1月に55.2と11月(55.5)の水準まで急回復、市場予想(50.5)を大幅に上回った。
労働市場の逼迫と景気後退には程遠いサービス分野での強い需要が確認されたことで、2日に3.39%まで大幅に低下していた米10年債利回りは3日、3.52%まで急上昇した。また、パウエル議長の会見でディスインフレ発言があったことが利上げ停止期待を高めたようだが、ディスインフレ発言は財・モノに関してのみ言及したもので、これは以前からパウエル議長は示唆していたことで特別サプライズはない。引き続き年内の利下げはないとも繰り返しており、市場は都合よく解釈し過ぎだと考える。賃金インフレと利上げのピークアウト期待は剥落し、来週は国内新興株も上値の重さが意識されやすくなるだろう。 また、10日には日本銀行新体制の後任人事が国会に提示される予定で、国内での金融緩和修正への思惑も新興株の重しとなりそうだ。
一方、1月18日に5600億円を超えていた日経レバレッジETF<1570>の純資産総額は3日、4068億円まで減少した。1月の株高局面での利益確定売りにより、個人投資家の含み損益の状況は悪くないと推察される。22日のプライム・ストラテジー<5250>の新規株式公開(IPO)まで時間があることもあり、直近IPO銘柄を対象に短期の値幅取り狙いの物色が活発化しそうだ。なお、同社のブックビルディング(BB)は6日から10日までである。
来週は7日にサンクゼール<2937>、8日にJTOWER<4485>、BASE<4477>、サンウェルズなどの決算が予定されている。直近IPOでもあるサンクゼールとサンウェルズには特に期待したい。
《FA》