明日の株式相場に向けて=配当モンスターの「海運」と思惑の「バイオ」
週明け13日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比243円安の2万7427円と反落した。日銀新総裁に経済学者出身の植田和男氏が事実上決まったが、現状は株式市場も為替市場も消化難で、ボラティリティは高まってはいるが方向感がつかめない。ただ、これまでの「黒田路線の変更は遅かれ早かれ」というムードが漂っていたこともあり、植田氏が急な政策転換はやらない雰囲気を醸していることで、不安心理はだいぶ後退している。
前週7日の取引時間中に行われたパウエルFRB議長へのインタビューで、同氏が市場の予想を覆しハト派に傾斜したコメントを発したことが話題となり、同日の米国株市場では利上げ打ち止め期待からハイテク株を中心に大きく買いが集まった。だが、これがアダ花となるような形で、その翌日以降はFRB高官などによる発言で金融引き締め長期化への警戒感が再燃、米株市場は下値模索の展開へ様変わりした。FRB高官など内部には様々な見解があって当然だが、一組織としてみれば政策スタンスがオセロのように日々クルクルとひっくり返るわけではない。これらはすべてマーケットの勝手解釈によるもので、揺れ動いているのはFRBではなく投資家心理にほかならない。
東京市場では企業の決算発表があすで大方終了するが、近視眼的な決算プレーが沈静化すれば、そのぶん相場の全体観を視野に入れた投資作戦が功を奏することになる。まず、目を向けておきたいのが配当利回りの高い銘柄だ。「NISA拡充を背景に最近は高配当利回りが有力な投資テーマと化し、これまで株式投資にあまり関心のなかった層まで呼び込んでいる」(中堅証券マーケットアナリスト)とする声がある。株主還元に対する前向きな取り組みによって、以前のように3%台で高配当銘柄といえる時代ではなくなっているのも、環境の変化を示唆しているかもしれない。現在、プライム・スタンダード・グロース3市場を合わせて年間配当利回りが4%を超えている銘柄は約500社にも及ぶ。そうしたなか、3月期末を控えて高配当株は権利取りの動きが改めて意識されやすい状況にある。
配当モンスターといえば大手海運株だ。海運は市況高騰の恩恵が一巡し来期以降は減配が予想されるものの、それは百も承知のうえで注目が怠れない。今期の配当利回りは日本郵船<9101>が15.6%、商船三井<9104>が16.6%とまさに規格外のパワーヒッターのような存在だ。上値に焦って買いつかず、あくまで押し目狙いを前提に溜め込めば、3月相場の前半あたりでキャピタルゲインを獲得できる可能性はそれなりに高い。超高配当だが、あえてキャピタルゲインを狙った短期戦略でも十分な投資妙味を内包している。
また、3月末ではなく今月末の駆け込み配当取りを狙うのならば、2月期決算銘柄のグラファイトデザイン<7847>やエーアイテイー<9381>が挙げられる。グラファイトはゴルフシャフトメーカーだが、独自のカーボン積層技術で優位性を持ち、自動車部品分野への横軸展開でトヨタグループとの連携思惑を内包している。配当利回りは5.4%前後。また、エーアイテイーは中国や東南アジアを中心にアパレル、雑貨、食品など小口貨物混載による海上コンテナ輸送を主力とするが、こちらも配当利回りは5%以上ある。
このほか、ここ最近はバイオ関連株にも動意株が相次ぐ。単発の打ち上げ花火ではなく“確変モード”で何度も買い直される銘柄が増えていることが、同セクターへの継続的な資金流入を促している。割り切り前提ながら、今は株式需給的に面白いタイミングにあるようだ。直近当欄で取り上げたクリングルファーマ<4884>やDNAチップ研究所<2397>がストップ高人気。また、継続的にマークしてきたものではオンコリスバイオファーマ<4588>が目先人気加速となった。このほか、免疫生物研究所<4570>も突発高を演じた後、調整一巡で切り返しの機をうかがう。総論としてバイオ関連は「業績面よりも、米国大手資本上陸の思惑が底流している」(中堅証券ストラテジスト)という見方もあるようだ。
あすのスケジュールでは、22年10~12月期GDP速報値、12月の鉱工業生産指数など。海外では1月の英失業率、10~12月期ユーロ圏GDP改定値のほか、1月の米消費者物価指数(CPI)に市場の関心が高い。このほかウィリアムズNY連銀総裁など複数のFRB高官の講演が予定。国内主要企業の決算発表ではSMC<6273>、東芝<6502>、第一生命ホールディングス<8750>、電通グループ<4324>、楽天グループ<4755>などが予定される。また、海外ではコカ・コーラ<KO>の決算が発表される見通し。(銀)
最終更新日:2023年02月13日 17時02分