パチンコ・パチスロ業界を救え、今春「スマパチ」関連株が上昇相場を舞う <株探トップ特集>
―第1弾は4月にホールへの導入スタート、スマスロ関連や周辺機器もあわせて注目―
昨年11月、円谷フィールズホールディングス <2767> [東証P]やSANKYO <6417> [東証P]などのパチンコ・パチスロ 関連が突如として人気化した。同月21日からメダルを使わないメダルレス遊技を可能にしたスマートパチスロ(スマスロ)の導入が開始されたことがきっかけとなり、周辺機器を手掛ける銘柄にもその影響は波及した。
みんかぶと株探が集計する「人気テーマランキング」でも、スマスロの導入開始を受けて「パチンコ・パチスロ」の注目度は急上昇したが、その後も同テーマはベスト30圏内に残り根強い人気が続いている。今年4月からは玉に触らずにパチンコが楽しめる「スマートパチンコ」(スマパチ)の導入スタートが予定されており、再び人気が上昇する可能性も強く、関連銘柄には引き続き要注目だろう。
●苦戦が続くパチンコ・パチスロ業界
スマスロ同様、スマパチに寄せるパチンコ業界の期待は大きい。その背景には、パチンコ・パチスロ業界が苦戦を強いられていることがある。
日本生産性本部が昨年10月に発表した「レジャー白書2022」によると、21年のパチンコ・パチスロの市場規模は14兆6000億円に上る。かつては国民的娯楽とも呼ばれ、市場規模も30兆円以上あった産業だが、緩やかに減少しており、ピーク時の半分以下の規模になっている。また、警察庁調べによる全国のパチンコホール店舗数も1995年末の1万8244店舗から、2021年末には8458店舗に落ち込んだ。
特に、ここ数年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響も大きく影を落としている。東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査によると、22年のパチンコホールの倒産は前の年の2.1倍の39件となり、過去10年間で最多を記録したという。ホールだけではなく、パチンコ・パチスロ機メーカーも苦戦するところが多く、3月1日には西陣(東京都千代田区)が廃業を発表した。
●利用者とホール双方にメリットのある「スマスロ」「スマパチ」
このように苦戦が続くパチンコ・パチスロ産業にとって、救世主として期待されているのが、「スマスロ」「スマパチ」だ。
昨年11月に市場投入されたスマスロは、遊技メダルを電子データ化し、ユーザーはメダルの投入やドル箱への移し替えなどを行う必要がなくなるのが特徴。また、出玉性能も上がっている。ホール側にとっても、メダルの持ち運びや洗浄が不要になり作業負担の軽減につながる点が注目されている。
既にその影響を受けている企業もあり、2月9日に23年3月期の連結業績予想を営業利益で7億円から40億円(前期比3.6倍)へ上方修正したゲームカード・ジョイコホールディングス <6249> [東証S]は、その要因としてスマスロ対応ユニットの売り上げが好調に推移したことを挙げた。また、1月27日に第3四半期累計(22年4-12月)連結決算を発表し、営業利益が24億9100万円(前年同期比91.4%増)と大幅増益となったマースグループホールディングス <6419> [東証P]も業績好調の一因にスマスロに対応した新製品ユニット「スマートユニット」の市場導入を挙げている。
●三洋物産や平和がスマパチ第1弾を投入予定
スマスロ以上に市場の期待が大きいのがスマパチだ。
スマパチは、スマスロがメダルレスとなったのと同様、パチンコ玉をパチンコ機の内部で循環させることで、パチンコ玉に直接触らずに楽しむことができるのが特徴。また、出玉のデータが遊技機情報センターに送信され、一元的に管理されるため、ホール側にとっても不自然な出玉にすぐに対応できるなどのメリットもある。スマスロ同様に従業員の負担軽減や人件費の削減にも効果があると期待されている。
スマパチの第1弾は、4月3日にホールに導入開始される三洋物産(名古屋市千種区)の「聖闘士星矢 超流星CliMAX349」と、4月17日に導入が開始される平和 <6412> [東証P]の「ルパン三世 THE FIRST」の2機種が予定されているが、その後も京楽産業.(名古屋市天白区)がスマパチ版「新必殺仕置人」の発売を予定している。更に、他のパチンコ機メーカーも追随し、順次スマパチを投入するとみられている。
●各社のスマパチの投入動向に注目
円谷フィHDは、2月13日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)連結決算で、営業利益が94億7600万円(前年同期比4.0倍)と大幅増益で着地。あわせて23年3月期予想を営業利益で60億円から108億円(前期比3.1倍)へ上方修正した。足もとでパチンコ・パチスロ機のPS事業が好調で、決算説明会ではスマパチ・スマスロの第1弾の発売時期について、「スマスロ」は24年3月期第1四半期とする一方、スマパチは「現時点では未定」としたが、スマパチ・スマスロは業界における産業革命と前向きに捉えているとコメントしており、同社が保有するIPのなかでも、有力なタイトルで販売できるように準備を進めている。
藤商事 <6257> [東証S]は、2月3日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)連結決算で、営業利益が44億3700万円(前年同期25億2400万円の赤字)と大幅黒字転換し、あわせて23年3月期予想を営業利益で15億円から30億円(前期6億9800万円の赤字)へ上方修正した。昨年12月にはスマスロ第1弾「ゴブリンスレイヤー」が型式試験に適合したことを発表しており、発売準備に向かっているもよう。スマパチについても「計画どおり順調に開発中」としている。
平和は、2月8日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)連結決算で、営業利益が281億6100万円(前年同期比2.8倍)と大幅増益となり、あわせて23年3月期予想を営業利益で207億円から264億円(前期比2.6倍)へ上方修正した。昨年11月に市場投入したスマスロ第1弾「バキ 強くなりたくば喰らえ!!!」の販売が好調なことなどが要因。スマパチについては前述のように、4月に「ルパン三世 THE FIRST」の市場投入を予定しており、同機種への期待も高まっている。
SANKYOは、2月8日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)連結決算で、営業利益が480億3900万円(前年同期比2.4倍)と大幅増益となり、あわせて23年3月期予想を営業利益で450億円から550億円(前期比2.6倍)へ上方修正した。昨年11月に市場投入したスマスロ第1弾「革命機ヴァルヴレイヴ」が増産に向かうなど大ヒットとなったことが貢献。スマパチについての発表はないが、「エヴァンゲリオン」はじめ有力IPを豊富に有していることから、今後の新製品動向には注目が必要だ。
ユニバーサルエンターテインメント <6425> [東証S]が2月14日に発表した22年12月期連結決算は、営業利益120億8500万円(前の期比6.2倍)となり、23年12月期も営業利益235億円(前期比94.5%増)と連続大幅増益を見込む。スマパチ・スマスロに関しての発表はまだないことから、今後の動向が注目されている。
セガサミーホールディングス <6460> [東証P]は、2月9日に発表した第3四半期累計(22年4-12月)連結決算で、営業利益が382億2200万円(前年同期比17.0%増)と大幅増益となり、あわせて23年3月期予想を営業利益で400億円から450億円(前期比40.4%増)へ上方修正した。利益率の高いパチスロ機が好調なことなどが要因という。スマパチについての発表はまだないものの、スマスロでは4月に同社歴代ナンバーワンの販売台数約62万台を誇る「パチスロ北斗の拳」を踏襲した「スマスロ北斗の拳」を発売する予定であることから、同機の業績貢献が期待されている。
●周辺機器にも好影響が期待
スマパチ・スマスロの登場は、貸玉、貸メダル補給などの「島」設備の簡略化につながることから、周辺機器を手掛けるメーカーへはマイナスの影響も懸念されていた。ただ、前述のマースGHDやGCジョイコのようにプラスのインパクトを与えており、周辺機器やサービスを手掛ける企業にも注目したい。両替機や貸玉機からホールのトータルシステムまでさまざまなホール関連機器を手掛ける日本金銭機械 <6418> [東証P]、グローリー <6457> [東証P]、カードユニット(メダル払出機・台間玉貸機)などを手掛けるマミヤ・オーピー <7991> [東証S]、パチンコホール向けシステム大手のダイコク電機 <6430> [東証P]なども活躍の場が増えそうだ。
更に、警察庁は昨年12月23日付で「ぱちんこ営業における広告及び宣伝の取扱いについて」の通達を出した。広告及び宣伝に関する規制について、「一定程度業界における自主的な取り組みを促しつつ、警察による指導及び取り締まりについては、規制の趣旨も踏まえて特に対応する必要がある部分に重点を置いて行うことが法の効果的な運用に資するといえる」と規制に対する解釈がやや緩和されており、ホール向け広告大手のゲンダイエージェンシー <2411> [東証S]などにも好影響を与えそうだ。
株探ニュース