国内株式市場見通し:日米金融政策に関する材料多数、波乱含みの展開か

市況
2023年3月4日 14時32分

■米利上げ停止期待で週末に上放れる

今週の日経平均は週間で473.99円高(+1.73%)と3週ぶりに反発。週足のローソク足は 4週ぶりに陽線を形成した。

今週の日経平均は週後半まで前週までの27500円を意識したもみ合いが続いたが、週末に大きく上放れた。週初は米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが市場予想を上回ったことによる米金融引き締め懸念が重しとなった一方、為替の円安進行が支えとなり、底堅く推移。欧州の物価指標上振れでインフレ懸念が強まる中、その後は膠着感の強い展開が続いたが、週半ばには中国2月製造業購買担当者景気指数(PMI)の上振れを好感する動きが全体を支えた。週後半、米供給管理協会(ISM)による2月製造業景況指数の支払い価格の上昇などを背景に、米10年債利回りが昨年11月以来となる4%に乗せ、ハイテクの重しになった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)高官の今夏の利上げ停止を示唆する発言や中国景気の回復期待で投資家心理が改善し、週末は大きく上昇した。

■日銀のサプライズ追加修正を指摘する声も

来週の東京株式市場は神経質な展開か。今週末の日経平均は久々に大幅に上昇、根強い戻り待ちの売りから長らく明確に超えることができなかった27500円水準を大きく上放れ、2月6日高値27821.22円を超えてきた。27500円を挟んだ長いもみ合いを経た後の上放れとあって強気トレンドへの転換が期待される展開となっている。一方、来週末に3月限先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)を控える中、9日からは黒田東彦日本銀行総裁にとって最後となる金融政策決定会合が開催されるほか、米国の金融政策動向を占うイベントも週半ば以降に多いため、波乱含みの展開が予想される。

市場関係者の間では今回の日銀金融政策決定会合では現状維持を予想する向きが大半だ。一方、市場機能が改善していないことなどを理由に、一部では10年国債金利の変動幅を1%まで拡大させることは急務であり、次期総裁の植田和男氏による政策運営により自由度を与えておく状況を創出することを目的に、3月会合でのサプライズ修正を指摘する向きもいる。他方、米国の雇用、物価に関する指標の上振れが続いており、ドル高・円安基調はまだ維持されている。来週末に米2月雇用統計を控えていることもあり、週末まで為替は膠着感を強める可能性が予想される。

一方、週半ばにも大きな材料がある。日本時間8日の午前0時頃に、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が米上院銀行委員会公聴会で証言を行う予定だ。一連の強い物価指標の発表以降では初めての発言の場となり、注目される。米アトランタ連銀のボスティック総裁が今夏の利上げ停止の可能性を示唆したことや米2月ISM非製造業景況指数の仕入価格が前月から低下したことを背景に、1日に昨年11月以来となる4%台に乗せたばかりの米10年債利回りは今週末に再び4%を割り込んだ。米株式市場も大幅に続伸した。ただ、同総裁は政策金利を5.00-5.25%に引き上げた後は、2024年もしばらくその水準で維持する必要性についても言及している。全体として見ればハト派的とはいえない中、株式市場が都合よく解釈している感は否めない。また、米ISM非製造業の仕入価格も低下したとはいえ、65.6と依然として高水準だ。米ISM非製造業景況指数が予想を上振れたことも踏まえれば、利上げ停止期待を後退させる内容とも捉えられる。

たしかに、最後の利上げ停止以降は株式市場が上昇基調に転じる経験則は有名で、大よその利上げ停止時期が分かってきたことはポジティブなのであろう。しかし、そもそも今回マーケットが好感した発言の主であるボスティック総裁は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持っていない。また、来週末の米雇用統計や翌週の米消費者物価指数(CPI)の結果次第では今夏の利上げ停止期待が修正を余儀なくされる可能性もある。このため、まずは来週のパウエル議長の議会証言を見極める必要があるし、その後も予断を許さないだろう。

さて、時間軸は前に戻るが、5日から中国で全国人民代表大会が開催される。今週に発表された中国2月製造業購買担当者景気指数(PMI)が民間版及び政府版ともに市場予想を上振れて改善したことで同国経済の回復期待が高まっている。また、日本政府は新型コロナ対策として中国からの渡航者を対象に義務付けてきた水際対策の緩和を3月1日から実施。これらの背景から中国関連株の強い動きが目立っている。予想以上に速いペースでの回復を受けて、逆に全人代での追加景気対策への期待が後退したとの指摘もあるが、昨年、経済成長率目標を大きく未達となった経緯や若年層を中心とした高い失業率が続いていることも踏まえると、今年は中国政府が経済成長を狙う動機を有しているとも考えられ、景気対策への期待は根強いとみる。全人代で追加景気対策が打ち出されれば、関連株への物色が強まろう。9日には2月工作機械受注の発表もあるため、合わせて機械株などの手掛かり材料となりそうだ。

■景気ウォッチャー調査、2月工作機械受注など

来週は7日にパウエルFRB議長上院議会証言、8日に2月景気ウォッチャー調査、米2月ADP全米雇用統計、米10年国債入札、9日に日銀金融政策決定会合(-10日)、10-12月国内総生産(GDP)改定値、2月工作機械受注、2月都心オフィス空室率、10日に黒田日銀総裁会見、メジャーSQ、2月企業物価指数、米2月雇用統計、などが予定されている。

《FA》

提供:フィスコ

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