想定以上の堅調さも上昇余地見出しづらい/後場の投資戦略
日経平均 : 28370.92 (+61.76)
TOPIX : 2047.56 (+2.58)
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場が大幅下落したにもかかわらず、本日の東京市場は総じて堅調な展開。為替の円安が一段と進行したことがある程度の支援要因になるとは想定されたが、下値の堅さは想定以上で、日経平均と東証株価指数(TOPIX)は早々にプラスに転じている。米金融引き締め懸念が重しとなりやすい新興株もしっかりで、東証グロース市場指数、マザーズ指数は前日終値水準での底堅さを見せている。
先週末から指数がテクニカル面で好転したことで投資家心理が強気に転じ、先高観からの押し目買い意欲が強まっているのかもしれないが、今週末の3月限先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)に向けた買い戻しによるところも引き続き大きいと推察される。この点は正直、正確には分かりかねるところだが、現在の想定以上に強い地合いがメジャーSQ後の来週以降も続くかについては慎重になった方がよいだろう。
前日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の上院での議会証言は総じてタカ派な内容だった。ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が従来よりも高くなることだけでなく、今後も足元の強い経済指標が続く場合には利上げ幅を再び拡大させることも厭わないと、かなり断固とした攻めの姿勢を見せた印象だ。
こうした背景から、米2年債利回りは前日5.0%を超え、2007年来の高水準にまで上昇。金利先物市場が織り込むターミナルレートも5.64%にまで上昇し、FEDウォッチによると、次回3月21-22日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅としては0.5ポイントへの拡大を織り込む予想が7割を超えるところまできた。
見方を変えれば、FOMC前にパウエル議長からタカ派な姿勢が示され、利上げ幅の拡大まで織り込みが大きく進んだことで、3月FOMCでのネガティブサプライズの可能性は低くなったとプラスに捉えることもできる。また、今週末の米雇用統計が予想並みの結果にとどまった場合には、短期的なあく抜け感が台頭する可能性が出てきたともいえよう。しかし、もはや今後の経済データ次第では、利上げ幅の拡大だけでなく、利上げ停止時期がさらに後ろ倒しになり、ターミナルレートが6%を超える可能性まで現実味を増してきた。
利上げの終着点さえ見えれば、利上げが続いている中でも市場は攻めの姿勢を保つことができるが、政策の先行きに関する不透明感が強まっている今現在、市場が強気を維持するのは容易なことではない。為替の円安で支えられている日本株も、米国株の軟調な展開が長期化すれば、独歩高を見せることはほぼ不可能で、せいぜい横ばいがいいところだろう。
2日に200日移動平均線をサポートに反発に転じたS&P500種株価指数は25日線に頭を抑えられる形で大きく失速。再び75日線、200日線割れが警戒される状況となっている。S&P500指数が200日線を割り込んだ場合には、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが加速するとも指摘されており、今後の米株式市場の動向をよりいっそう注視したい。米金融政策の不透明感が強い中、個別では引き続きバリュー(割安)・高配当利回り銘柄やインバウンド関連に妙味がありそうだ。(仲村幸浩)
《AK》