米国株式市場見通し:CPIや小売売上高に注目
来週は、3月FOMCでの金融政策決定の鍵を握るとみられる最新の2月消費者物価指数(CPI)や小売売上高に注目だ。また、SVBの破たんにより、金融システム全体のみならず、顧客のハイテクやバイオなどへの波及リスクを警戒し、売り圧力が優勢になりそうだ。ダウ平均も重要な節目である200日移動平均線を下回り、下落基調が続きやすいだろう。イエレン財務長官は、FRBや連邦預金保険公社(FDIC)など金融監督当局幹部を招集し、情勢を監視していく方針だ。一方で、銀行システムの強靭さは変わらず波及は懸念しないと市場鎮静化に努めた。
FRBのパウエル議長は今週実施された議会証言で、3月FOMCで再び利上げペースを加速させる可能性も除外せず、雇用統計や求人件数、CPIなどの指標次第で政策を決定する方針を再表明した。前回のFOMCで指摘していたディスインフレの初期の兆候に関する言及はなかった。2月雇用統計では雇用者数が引き続き強い伸びを示したが、失業率が予想外に上昇。賃金の伸びも予想を下回ったため、短期金融市場では3月FOMCでの0.50ポイントの利上げ観測が大きく後退。年内の利下げも再び織り込み始めた。金融状況がひっ迫したことも段階的な利上げを正当化するだろう。
FRBは歴史上でも例を見ない急速な利上げを実施してきた。その影響は未知数だ。今年に入り、消費も底堅く、ハードランディングが回避できるとの期待も強まっていたが、ここにきて、急激な利上げの影響が中小規模の金融機関にあらわれ始めた。長期にわたるゼロ金利政策で投機に拍車をかけたことも明白で、その代償となる。新興企業を中心に取引を進めていたSVBの破たんは2008年の金融危機以降で最大。暗号資産や新興企業向けサービス提供という特殊な金融機関の破たんが、大手銀に波及するリスクは今のところ少ないとアナリストは分析している。ただ、この事象が「炭鉱のカナリア」になりうるかどうか、リスクを見極めていく必要があるだろう。
経済指標では、2月消費者物価指数(CPI)(14日)、2月卸売物価指数(PPI)、3月ニューヨーク連銀製造業景気指数、2月小売売上高、1月企業在庫、3月NAHB住宅市場指数、1月対米国投資(15日)、週次新規失業保険申請件数、2月輸入物価指数、2月住宅着工件数・許可件数、2月フィラデルフィア連銀景況指数(16日)、2月鉱工業生産・設備稼働率、2月景気先行指数、3月ミシガン大消費者信頼感指数(17日)、が予定されている。
主要企業決算で、住宅建設会社のレナー(14日)、ソフトウエアメーカーのアドビ(15日)、ディスカウント小売りのダラー・ゼネラル、運送会社のフェデックス、宝石小売りのシグネットジュエラーズ、料理キット宅配サービスを提供するブルーエプロン、料理関連、家具小売りのウィリアム・ソノマ(16日)などが予定されている。運輸のフェデックスではマクロ経済の動向を見極めるうえでも需要動向に注目だ。シグネットジュエラーズは21年以降で最大の減収が予想されており、警戒が必要だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》