為替週間見通し:もみ合いか、インフレ持続で米利上げ長期化の可能性残る
【今週の概況】
■一部米銀破綻でリスク回避のドル売り強まる
今週のドル・円は下落。3月7日に米議会上院で開かれた公聴会で、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「最終的な金利水準が従来想定より高くなる可能性がある」との見方を伝えたことから、ドル買い・円売りが強まり、8日の東京市場で137円91銭まで一段高となった。9-10日に開かれた日本銀行金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持が決まったこともドル買い材料となったが、利食い目的のドル売りが137円台で観測され、ドルは次第に上げ渋った。
10日のニューヨーク外為市場でドル・円は、136円台後半まで買われた後、一時134円12銭まで反落した。この日発表された2月米雇用統計で失業率は上昇し、賃金の伸びは予想を下回ったため、3月連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測は後退。さらに、新興企業を中心に取引していた米シリコンバレー銀行の経営破たんが報じられたことから、米長期金利は低下し、リスク回避のドル売りが活発となった。ドル・円は135円00銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:134円12銭-137円91銭。
【来週の見通し】
■もみ合いか、インフレ持続で米利上げ長期化の可能性残る
来週のドル・円はもみ合いか。米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げの思惑は大きく後退し、リスク選好的なドル買い・円売りは縮小する可能性がある。ただ、インフレ高止まりの影響で利上げ継続の見方は変わらず、過度なドル売りは抑制されるとみられる。
今月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.50ポイントの利上げ観測が一時広がったが、米シリコンバレー銀行の破綻を受けて0.25ポイントの利上げにとどまる可能性が高い。政策判断の手がかりとして、14日発表の2月消費者物価コア指数(CPI)が重要視されそうだ。2月分は1月実績を下回る見通し。ただ、最近の物価関連統計は予想を上回るケースが目立っており、コアCPIが市場予想を上回った場合、インフレ抑制期待は後退し、ドル買い要因となろう。なお、15日発表の2月小売売上高は伸びが鈍化する見通し。インフレや金利高の影響でリセッションへの懸念が強まるなか、消費の減退が顕著になれば金利安・ドル安の要因になりやすい。
【米・2月消費者物価指数(CPI)】(14日発表予定)
14日発表の2月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+5.4%(同+5.6%)と予想され、昨年秋以降は連続で伸びの鈍化が続く。ただ、予想を上回ればインフレ抑制期待は後退し、ドル買い要因となろう。
【米・2月小売売上高】(15日発表予定)
15日発表の米2月小売売上高は前月比+0.2%と、前回+3.0%から伸びは大幅に鈍化する見通し。インフレや金利高の影響でリセッションへの懸念が強まるなか、消費の減退が顕著になれば金利安・ドル安の要因になりやすい。
予想レンジ:133円00銭-137円00銭
《FA》