銀行株の弱さが先行き警戒感を映す/後場の投資戦略
日経平均 : 27193.70 (+183.09)
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[後場の投資戦略]
前日の米株式市場は大きく反発。欧州株式市場も主要株価指数が揃って反発した。スイス国立銀行(中央銀行)がクレディ・スイスに対する流動性支援の意向を示し、同行はスイス国立銀行から実際に500億スイス・フラン(約7兆1500億円)の与信枠を確保した。また、約30億フラン相当の外貨建て社債を買い戻す計画も明らかにしたことで、同行の株価は昨日、一時40%も急反発した。加えて、経営難に直面していた米地銀ファースト・リパブリックについて、複数の大手銀行が合計で約300億ドル(約4兆円)を同行に預け入れることで合意したことで、米国での金融システム不安も緩和された。
一方、前日開催された欧州中央銀行(ECB)定例理事会では従来の計画通り0.5ポイントの大幅利上げが決定された。ただ、銀行業界の混乱を背景に、今後の政策金利の軌道を示唆する文言は声明文から取り除かれたもよう。さらに、ラガルド総裁は記者会見で、将来の利上げについて「現時点で決定することは不可能」と発言した。利上げが停止されるまでには至らなかったものの、足元の一連の事態に配慮した言動が所々に見られ、この点は今後の動向次第では早期の利上げ停止もあり得ることを示唆し、投資家心理の安心感を誘った。
しかし、疑心暗鬼は止まっていないようだ。クレディ・スイスの株価は一時40%急騰したものの、最終的には大きく失速して19%高で終えている。また、同行の社債の1年間の保証コストを反映するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)はむしろ上昇している。さらに、通常取引で10%高となった米ファースト・リパブリック・バンクの株価もその後、時間外取引では一転して17%も下落した。本日の東京市場でも銀行株の買い戻しは非常に鈍く、メガバンクの一角はむしろ下落している。また、前引け時点での東証プライム市場の出来高は6億株台と今週に入ってからでは物足りない水準にとどまっている。一昨日の小反発のときも同じだったが、上昇する日の出来高は少なく、下落時の出来高は多い傾向が今週は一貫して見られている。
来週21-22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催を控えているとはいえ、それだけでは足元の株式市場の戻りの鈍さを説明することはできないだろう。単なるイベント前の様子見ムードというよりは、金融システム不安が完全には収まっていないことが大きいのだろう。今後も経営難に直面して市場に動揺をもたらすような新たな銀行が表れる可能性は十分にある上、今後はセンチメントの悪化を通じた銀行の貸し渋り、企業の設備投資意欲の後退、個人消費者の支出意欲減退といった様々な形で実体経済に悪影響がもたらされることが考えられる。
こうした展望を踏まえると、1-3月期をボトムに緩やかなに回復に向かっていくと考えられていた企業業績の底入れも遠のいたと言わざるを得ない。今後さらにアナリストの業績予想が下方修正されることで株価が下落していく展開が想定される。今週末は米国版の株価指数先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)であるため、今晩を境にいったん売りが止む可能性はある。しかし、期先物でプット(売る権利)が積み上がっていることもあり、投資家の警戒感は続いている様子。このため、来週のFOMCを通過しても、あく抜けで株価がすぐに上昇するとは期待しない方がよいだろう。(仲村幸浩)
《AK》