来週の相場で注目すべき3つのポイント:、米マイクロン決算、IPOラッシュ11社、米PCEコアデフレーター
■株式相場見通し
予想レンジ:上限27800円-下限26500円
来週の東京株式市場は一進一退か。今週末、経営に大きな問題はないはずのドイツ銀行のデフォルト(債務不履行)に対する保証料が上昇し、同社株価が一時急落するなど銀行の経営不安に由来する高いボラティリティー相場が続いている。ただし、ドイツ銀行が発表した劣後債の早期償還は本来売り材料でないはず。実際、市場の動きは非合理的と次第に理解され、週末の米株式市場は後半に持ち直している。今後も先行き不透明感はくすぶるだろうが、金融システム不安については目先の峠を超えたと考える。
米国では金融当局と政府らが協力し、保有債券を額面通りに評価した上で資金貸付を行う「バンク・ターム・ファンディング・プログラム」を設定。また、日米欧の6中央銀行によるドル資金の供給強化など流動性不安を払拭するための支援策が相次いで発表された。さらに、イエレン米財務長官も条件付きとはいえ、必要に応じた追加の預金保護措置の用意があると述べている。UBSによるクレディ・スイスの買収救済劇の際に無価値となって波紋を呼んだAT1債については、利回りが急上昇する中、欧州市場で6月、9月にまとまった償還が予定されており、今後も折に触れて金融不安が再燃する可能性はありそうだが、不安心理のピークは過ぎたと思われる。
21-22日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ポイントの利上げが行われたほか、量的引き締め(QT)の継続方針が示され、2023年内の利下げを検討していないとする従来方針も維持された。利上げやQTの停止、年内の利下げが一部で指摘されていた事前予想よりはややタカ派な印象を受けた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの一時停止について議論したことを認めたほか、銀行の経営不安がもたらす与信環境の引き締まりが利上げと同等以上の効果を生む可能性を指摘するなど、今後の状況次第ではハト派化する柔軟な姿勢も見せた。金融システム不安が台頭する前に大幅な引き上げが想定されていた2023年末の政策金利中央値も昨年12月から据え置かれ、利上げ停止が近づいていると推察される。
このように、金融システム不安がピークを過ぎたと考えられることに加え、FRBの利上げ停止期待が高まっていることもあり、今後は再びファンダメンタルズ(経済状態を表す各種指標)へと市場の関心が移っていくことが予想される。ただ、景気後退懸念に加えて、東京市場では需給悪要因もくすぶり、しばらくは上値の重い展開が続きそうだ。
3月期末に向けては配当・優待の権利取りを狙った個人投資家の買いのほか、株価指数連動型ファンドによる配当再投資目的の先物買い需要が1兆円超に上ると推計されている。また、金融機関の決算対策としての期末に向けた売りも間もなく一巡してくると想定される。しかし、日経平均が大幅反発した今週の祝日明け22日、ネット証券の売買代金ランキングでは日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>が売り越しとなっており、27500円水準では戻り待ちの売り圧力が強いことが確認された。また、17日時点での裁定取引に係る現物ポジションの買い残は1兆2286億円と引き続き高水準にあり、積み上がった裁定買い残の解消圧力が今後も上値抑制要因として働きそうだ。
さらに、信託銀行は3月第3週まで18週連続で現物株を売り越している。年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)売りはそろそろ一巡してきそうだが、日経平均などがいまだ昨年末の水準を上回っている中、リバランス売りが月末いっぱいまで続く可能性もある。ほか、日経平均の新規採用銘柄と除外銘柄の入れ替えに伴い、日経平均全体としては約2000 億円超の換金売りが月末に生じると予測されている。4月に入れば、新年度入りに伴う需給好転が意識されそうだが、3月最終週は全体として需給はやや売り優勢になりそうで、注意したい。
個別では、半導体を中心としたハイテク株に注目だ。28日に米マイクロン・テクノロジーの決算が予定されている。年後半からの市況回復と米金利の先高観後退を背景に半導体関連株には強い動きが見られており、マイクロンの決算を受けてあく抜け感が一段と高まるかに注目したい。また、31日には中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表予定。指標結果を受けて工作機械など中国関連株が動意づく可能性もありそうだ。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)はタカ派的な姿勢をやや弱め、長期金利が低下すればドル売りに振れやすい。ただ、欧米金融システム不安は根強く、安全逃避(リスクオフ)のドル買いが強まる可能性は残されている。FRBは21-22日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25ポイントの利上げを決定したが、複数の金融機関の経営破綻を受け、パウエルFRB議長は利上げ休止を検討したと会合後の記者会見で明らかにした。また、同時に発表されたドットチャートではターミナルレート(利上げの最終地点)は据え置かれたが、2024年の見通しについてはやや引き上げられ、金融引き締め長期化が示された。これにより、景気減速への懸念が強まる可能性がある。
直近のFOMCの政策内容への評価が定まらないなか、外為市場はFRBの方針はタカ派寄りではないと受け止めており、米金利安・ドル安の要因になりやすい。3月31日発表予定のPCEコア価格指数が市場予想を下回った場合、ドル売り要因になりそうだ。一方、イエレン米財務長官は預金者保護の措置をさらに拡大することには否定的で、預金者保護の観点から先行き不透明感は深まる可能性があろう。UBSによるクレディ・スイス買収後も金融危機の警戒は根強く、リスクオフのドル買いは継続しよう。
■来週の注目スケジュール
3月27日(月):日・企業向けサービス価格指数(2月)、日・カバーが東証グロースに新規上場、独・IFO企業景況感指数(3月)、ベイリーイングランド銀行(英中央銀行)総裁が講演、、など
3月28日(火):日・Arent/モンスターラボHD/アクシスコンサルティングが東証グロースに新規上場、米・S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数(1月)、米・消費者信頼感指数(3月)、米・上院銀行委員会で最近の銀行破綻と連邦当局の対応巡る公聴会、米・決算発表→マイクロン・テクノロジー、など
3月29日(水):日・住信SBIネット銀行が東証スタンダードに新規上場、日・AnyMind Groupが東証グロースに新規上場、米・中古住宅販売成約指数(2月)、米・下院金融委員会で最近の銀行破綻と連邦当局の対応巡る公聴会、米・台湾総統がニューヨークに滞在(30日まで)、など
3月30日(木):日・ノバシステムが東証スタンダードに新規上場、日・ビズメイツが東証グロースに新規上場、独・消費者物価指数(3月)、米・GDP確定値(10-12月)、米・リッチモンド連銀総裁が講演、南ア・南アフリカ準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、など
3月31日(金):日・東京CPI(3月)、日・有効求人倍率(2月)、日・鉱工業生産指数(2月)、日・小売売上高(2月)、日・Fusic/ココルポートが東証グロースに新規上場、中・製造業PMI(3月)、欧・消費者物価コア指数(3月)、米・個人消費支出(PCE)価格コア指数(2月)、米・ミシガン大学消費者マインド指数(3月)、米・ニューヨーク連銀総裁が講演、など
《YN》