馬渕治好氏【気迷い相場継続、欧米発の金融不安でどうなる】(1) <相場観特集>
―先行き不透明感も、2万7000円台で思惑錯綜の日経平均―
週明け27日の東京株式市場は日経平均株価が3日ぶりに反発に転じたが、上昇したものの2万7000円台半ばで強弱観が対立し、気迷いムードは拭えなかった。米銀の相次ぐ破綻や欧州大手銀行の経営不安なども取り沙汰されるなか、先行きが見えにくい状況にある。果たして今後、株式市場は上下どちらに動くのか。日本株だけでなく米国など海外株市場の動向も気になるところだ。ここからの相場展開について先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「金融不安は落ち着くも景気減速懸念が重荷」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京株式市場は、足もとは日経平均が2万7000円台半ばでもみ合いとなっているが、ゴールデンウィーク前までの向こう1ヵ月くらいを想定した場合、下値に対するリスクが意識されやすい局面に入っているといえそうだ。
前週末のドイツ銀行<DB>の波乱安は投資家の不安心理を煽り欧州株市場の全面安につながったが、そうしたなかもドイツ銀は劣後債の早期償還を発表したことで急速に下げ渋った。米国では朝方は、軟調な欧州株に追随したが、その後は押し目買いが優勢となり、NYダウやナスダック総合株価指数などの主要株価指数はプラス圏に切り返している。
ここ最近の欧米株の不安定な値動きについては、リーマン・ショックの時のような暴落相場につながる可能性は低いとみている。ただ、金融システム不安という観点ではそれほど恐れる必要はないとみているが、今後予想される景気実勢の落ち込みが欧米や日本株の動向にマイナスに作用すると考えている。インフレ自体は鈍化傾向にあるものの、個人消費の冷え込みは注意が必要だ。例えば米国では、クレジットカードの利用額が急減しており、消費者の購買意欲の低迷を強く暗示している。これは、小売り業界をはじめ幅広く企業業績に逆風となり、株式市場もそれを織り込む形で下値を模索する展開が予想される。
4月下旬にかけての米国株市場ではNYダウの上値は重く、ここから水準を切り上げたとしても今月22日の戻り高値水準である3万2700ドルどころが壁になりそうだ。一方、下値については3万1000ドル前後まで下押す可能性があると考えている。
また、東京市場でも同様に日経平均の上値は重く、ここから強調展開をみせたとしても2万8000円台には届かない公算が大きい。下値メドは2万6000円近辺まで水準を切り下げる余地があるとみており、基本的に高値には買いつかず、今年央にかけて想定される安値形成場面で押し目買いに徹するのが賢明と言える。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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