明日の株式相場に向けて=突風注意のIPOセカンダリー

市況
2023年3月28日 17時00分

きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比41円高の2万7518円と続伸した。駆け込みの配当権利取りの動きが全体指数に浮揚力を与えているとはいえ、値下がり銘柄数が1000を超え、値上がり数を大きく上回ってる状況は売り優勢の地合いであったことを物語る。特に中小型株の下げが目立つ日で、ここ値を飛ばしていた人工知能(AI)関連株も利食い売りに値を下げるものが多かった。また、レーザーテック<6920>などの半導体製造装置関連も米国の半導体株安の影響を受け軟調に推移する銘柄が多い。

米銀の相次ぐ破綻に始まった金融システム不安はとりあえず収束の方向に向かっている。ドイツ銀行<DB>への売り仕掛けは、劣後債前倒し償還とショルツ独首相の“高収益お墨付き発言”で買い戻しを誘発し、欧州市場はバランスを取り戻した。また、米国ではシリコンバレーバンク(SVB)の引受先が決まったことで、いったんリスクオフのステージは幕引きとなった感がある。前日は欧州株が北欧市場を除き全面高に買われ、米国株市場でも金融株への買いが支えとなってNYダウが3日続伸と上値追いトレンドを維持している。

ただ、欧米市場は全体相場がここから上放れるイメージが湧かない。粘着性の高いインフレと消費意欲の後退が、経済のソフトランディング・シナリオを静かに否定しているようにも見える。特に欧州はストライキによる経済停滞が火種となりやすい。過剰流動性が収縮する過程で、景気低迷下の物価高というスタグフレーションを織り込んだうえでの株高回帰は困難が伴う。日本株は相対的に優位性があるとはいえ、独歩高の構図は描きにくい。

目先的には半身に構えつつも、資金が流れ込む入り江がどこなのかを見極めて局地戦で戦う準備が必要だ。例えば今需給面で関心が高まりやすいのがセカンダリーを絡めたIPO投資戦略。3月のIPOラッシュについて市場では「出足は好調だったが、既に買い疲れ感が出てきている。米国株市場で金利が再上昇し、グロース株に向かい風が吹き始めたタイミングでもあり、なかなか一筋縄ではいかない地合いとなっている」(中堅証券ストラテジスト)というが、それでもタイミングが合えば魅力的なエリアである。前週末時点でIPOの初値は9銘柄連続で公開価格を上回っていた。これは昨年12月末に新規上場したDX推進支援のBTM<5247>から始まった連続記録だ。直近は公開価格の2倍や3倍は当たり前というムードも漂った。

しかし、今週に入ると風向きが変わったという声も強い。今週はきょうまでで4社が新規上場しいずれも公開価格を上回り、これで13銘柄連続となった。しかし、勢いはかなり減速している。前日(27日)に鳴り物入りで上場したVチューバーのプロダクション運営を手掛けるカバー<5253>が荒い値動きとなり、短期筋を翻弄した。公開価格750円に対し、きっちり1000円プラスされた1750円で初値を形成。その後すぐに2000円にタッチするなど下馬評通りの派手なパフォーマンスを見せたのも束の間、そこからウリ気配で急降下し終値は高値から600円オフの1400円で着地する格好に。初値急騰に伴うロックアップ条項解除の売りを浴びた格好だが、こうなるとセカンダリーでむやみに高値に買いつくのはリスクが大きいというイメージが膨らむ。

きょう新規上場したハイエンド人材紹介のアクシスコンサルティング<9344>は1950円の公開価格に対し55%高の3030円で初値を形成、その後に3580円まで駆け上がり、初値買い大成功の図式となったが、後場後半に入るとやはり売り圧力が顕在化して初値を下回る水準まで値を下げた。全体相場がきょうはプライム・スタンダード・グロース3市場を通じて“利食いモード”であったということも影響しているが、よーいドンで参戦する際には、売りのタイミングも瞬き(まばたき)厳禁である。ただ、アクシスについて市場では「業績内容が良好で、なおかつロックアップの価格解除がないという点で比較的長いスタンスで狙える銘柄」(国内投資顧問ストラテジスト)という声も聞かれた。

あすのスケジュールでは、国内で特に目立った重要イベントは見当たらないが、この日は3月権利付最終売買日となる。また、IPOが2社予定されており、東証スタンダード市場に住信SBIネット銀行<7163>、東証グロース市場にAnyMind Group<5027>が新規上場する。海外ではタイ中銀の政策金利発表、バーFRB副議長の米下院金融サービス委員会での証言、2月の米仮契約住宅販売指数、米7年物国債の入札など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年03月28日 17時01分

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