明日の株式相場に向けて=新章突入の「AI関連株」を追う
きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比365円高の2万7883円と大幅高で3日続伸した。配当権利付き最終売買日ということもあり、駆け込みでの配当権利取り狙いの買いが下値を支える、というのは毎度お決まりのフレーズではあったが、それにしても前日の米国株市場が軟調だった割には、想定以上の強さではあった。日経平均は後場に入ると上げ足を加速し、揺らぎを全く感じさせない急勾配の上昇トレンドを形成、これは「1兆1000億円規模の配当再投資を背景とした先物を通じた裁定買いが反映されたもの」(ネット証券ストラテジスト)という。個別もプライム市場の約95%の銘柄が上昇するという滅多に見られない上げ潮相場となった。
一方、配当落ち後の波乱が気になるが、金融システム不安がとりあえず収束したタイミングではあるので、大崩れするような気配は今のところはみられない。強気筋の立場としては、あすも想定される配当再投資による浮揚力が拠りどころとなる。
ここ米国債券市場では債券売り圧力が再び強まっており、米10年債利回りだけでなく、米2年債利回りなど短期債利回りの上昇も顕著だ。逆イールドは長期にわたり常態化しており、2年債利回りは前日に終値ベースで4.06%台まで上昇した。金融システム不安が後退したのは喜ばしいことではあるが、金利の上昇がハイテク系グロース(成長)株にとって足かせとなるというネガティブな側面がクローズアップされ、前日はバリュー株の健闘でNYダウは朝方高かったものの、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の方は終日軟調な値動きとなった。
しかし、バリュー株シフトというのとは少々趣きが異なる。東京市場において高配当利回り株をバリュー株の範疇とするなら、配当権利落ちを境にバリューに向かっていた資金が退潮し、グロース主導の成長株買いに再び火がつくというシナリオは十分に考えられる。逆説的な言い方をすれば、無配銘柄が挙(こぞ)って動き出す、そうしたタイミングが近いことを示唆するような動きが、きょうの相場には随所に見られた。
人工知能(AI)関連では週明けの当欄でも触れたように、かつての花形株であったFRONTEO<2158>とブレインパッド<3655>が足並みを揃え大きく上値を追う展開に。両銘柄とも材料性は豊富ながら、株価はここ1年半ほど長い下り坂が続いていた。フロンテオは今期無配転落、ブレインPはまだ配当を実施したことがないという会社だ。高配当のバリュー株とは対極に位置しているが、米オープンAIの「チャットGPT」が起爆剤となった米国発のAI相場に刺激され、久しぶりに眠りから目覚めた印象を受ける。
AI関連では前日はいったん大きく利食われたPKSHA Technology<3993>やRPAホールディングス<6572>といった銘柄も切り返し、早くも押し目買いが日の目を見る格好となっている。東京市場でもここから自然言語AIや画像生成AIなどを根幹に、関連株物色の裾野は広がっていくことが予想される。その際に以前のAI相場で花を咲かせた銘柄、業界を先駆してきた銘柄はチェックが怠れない。ここにきて超新星の輝きを見せているのが、シルバーエッグ・テクノロジー<3961>。前日に続ききょうも値幅制限いっぱいに買われた。今週に入ってから突如として急騰劇を演じ、3営業日で既に5割高を演じている。同社はAIを活用したWebマーケティングソフトの開発・提供を行う。こうなると、投資マネーも燎原の火と化していく。マークしておきたい銘柄としては、IoTソリューションを手掛けAI画像処理分野に展開するほか、AI・DX人材育成サービスなどを手掛けるユビキタスAI<3858>。また、昨年12月に上場したニューフェースで顔認証・画像解析のAIサービスを手掛けるELEMENTS<5246>。超低位の穴株としてはAIコミュニケーションロボットを手掛け、KDDIグループと提携関係にあるソフトフロントホールディングス<2321>などにも目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、2月の建機出荷、2月の自動車大手生産・販売・輸出などのほか、2年物国債の入札が予定されている。また、IPOが2社予定されており、東証グロース市場にビズメイツ<9345>、スタンダード市場にノバシステム<5257>が新規上場する。海外では3月の独消費者物価指数(CPI)、米新規失業保険申請件数(週間)、22年10~12月の米国内総生産(GDP)確報値など。なお、インド市場は休場となる。(銀)
最終更新日:2023年03月29日 17時45分