インフレ鈍化好感されず景気後退を本格織り込み/後場の投資戦略
日経平均 : 27513.68 (-299.58)
TOPIX : 1965.91 (-17.93)
[後場の投資戦略]
本日の東京市場は全般売り優勢の展開。前日同様、米経済指標の悪化を背景とした景気後退懸念や為替の円高基調がリスク回避の動きを強めている。これまで相場をけん引してきた半導体株が日米ともに崩れている点も気掛かりだ。東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>などの株価は25日移動平均線を割り込み、明らかに基調の転換を示唆している。一方、日経平均は心理的な節目の27500円や200日移動平均線を前に踏ん張りも見せている。また、ドル円も米国時間に一時1ドル130円70銭台までドル安・円高が進んだが、節目の130円をサポートにその後は反発しており、この点もやや安心感を誘っている。
一方、前日に米供給管理協会(ISM)が発表した3月非製造業(サービス業)景況指数は51.2と前月(55.1)から大きく低下し、市場予想(54.4)も大幅に下回った。項目別では仕入価格が59.5と前月(65.6)から大きく低下したほか、雇用が51.3と前月(54.0)から大幅に低下し、サービス分野の賃金インフレが鈍化している兆しが見られた。また、米3月ADP雇用統計の民間雇用者数も14万5000人増と市場予想(21万人増)を大幅に下回ったほか、賃金に関するデータは1年ぶりの低い伸びとなり、インフレ鈍化が示唆された。
ただ、ISMサービス業景況指数の項目別に話を戻すと、新規受注は52.2と前月(62.6)から10ポイント以上も低下、新規輸出にいたっては43.7と前月(61.7)から急速に低下し、拡大・縮小の境界点である50も大幅に割り込んだ。米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻前であれば、素直にインフレ鈍化を歓迎したと思われるが、欧米での金融システム不安が台頭して以降、景気の先行きに対する警戒感が高まっているため、一連の指標結果はインフレ鈍化よりも景気後退を示唆するものとしてマイナスに捉えられた。足元の相場は「Bad news is Bad news.」といった形で、悪材料はストレートに悪材料として解釈されてしまっており、相場は景気後退を本格的に織り込みにいっているようだ。
一昨日、4日に発表された米2月雇用動態調査(JOLTS)の際も同様だったが、これまで市場が待ちわびていたインフレ鈍化を示唆する結果が確認され、米金利が連日で低下しているにもかかわらず、本来、金利低下が追い風になるはずのハイテク・グロース株を含め、株式はディフェンシブセクターを除けば全体的に売られている。やはり、3月最終週以降の株式市場のリバウンドは一服し、基調が転換したものと慎重に捉えた方がよいかもしれない。米国市場は週末、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日で休場となるため、今晩が今週最後の取引になる。リスク回避の売りがもう一段出る可能性があり、注意しておきたい。
新興市場の動向も気掛かりだ。先週まで新規株式公開(IPO)銘柄を中心に旺盛な物色が見られていた新興市場だが、直近IPO銘柄を含めて新興株が全般崩れてきている。マザーズ指数は前引け時点で200日線を割り込んでいる。先週末にかけて日経レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の売り残が増加する一方、日経ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>の買い残が増加しているため、今週に入ってからの日経平均の下落で個人投資家は一部利益も得ていると思われるが、マザーズ指数など新興株の動向には注意を払いたい。(仲村幸浩)
《AK》