新興市場見通し:新興株の分は悪いか、IPOは2社
■米長期金利は低下も新興株は強く売られる
今週の新興市場は3週続落。週明けこそは米2月個人消費支出(PCE)コアデフレーターの鈍化を好感した買いで上昇したものの、その後は週末まで4日続落となった。米国で経済指標が軒並み落ち込み、景気後退懸念を背景に米長期金利が低下するなど、新興株にとっては支援要因もあったが、相場全体が下落する中、流動性リスクが意識される新興株は強く売られた。物色が指数寄与度のない直近の新規株式公開(IPO)銘柄に集中しやすかったことや来週以降のIPOに備えた資金確保の動きも需給面で重しになった。なお、週間の騰落率は、日経平均が-1.87%であったのに対して、マザーズ指数は-2.54%、東証グロース市場指数は-2.96%。
時価総額上位銘柄は全般軟調で、週間ではビジョナル<4194>が-7.8%、ANYCOLOR<5032>が-5.3%、M&A総研HD <9552>が-7.4%、Macbee Planet<7095>が-8.7%、CCT<4371>が-5.3%などとなった。週間の売買代金上位ではArent<5254>、ココルポート<9346>など直近IPO銘柄が上位を占め、両者ともに全体相場に比して堅調な株価推移を見せた。不正注文検知サービス「O-PLUX」がキタムラ(東京都新宿区)で導入されたと発表した、かっこ<4166>は週末にかけて急伸し、週間では+50.6%となった。Branding Engineer<7352>との協業開始を発表したヘッドウォータース<4011>は米エヌビディアのエッジAIスーパーコンピューター「NVIDIA Jetson」シリーズに標準対応したエッジAIデバイス管理ソリョーションを開発したとの発表もあり、週間で+36.9%となった。
■米CPIとPPIを控え神経質な展開、東証プライム市場に目線向きやすい
来週の新興市場は神経質な展開か。週末に発表された米3月雇用統計の非農業部門雇用者数の伸びは市場予想並みだったが、23.6万人と引き続き労働市場の堅調さが確認された。平均時給の伸びは前年比で+4.2%と前月(+4.6%)から鈍化し、市場予想(+4.3%)も下回ったが、前月比では+0.3%と市場予想(+0.3%)に一致、賃金インフレの鈍化ペースは緩慢であることが示唆された。こうした中、来週は米国で12日に消費者物価指数(CPI)、13日に卸売物価指数(PPI)が発表される。今週の米ISM非製造業(サービス業)景況指数の結果を受けてインフレ鈍化の兆候も見られているが、雇用統計を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換のハードルは高そうな印象が持たれつつある。このため、CPIとPPIに対する警戒感はくすぶり、新興株も神経質な展開を強いられると考える。
来週は宇宙ベンチャー企業として注目度の高いispace<9348>が12日に東証グロース市場に新規上場するほか、名証メインに日本システムバンク<5530>が新規上場する。また、その後も4月末にかけて7社の新規株式公開(IPO)が予定されているため、IPO投資に備えた換金売りや資金確保の動きは引き続き需給面で新興株の重しになりそうだ。
マザーズ指数や東証グロース市場指数が200日移動平均線を割り込んでいることに加え、物色が活発だった直近のIPO銘柄でも株価チャートが崩れてきている銘柄が多くなっていることも投資家センチメントの悪化を想起させる。こうした中、国内では小売企業を中心に12-2月期決算が本格化する。東証プライム市場の決算銘柄に物色が集まりやすいことも新興株敬遠の動きに?がりそうで注意したい。
個別では、Arent<5254>、ココルポート<9346>のほか、アクシスコンサルティング<9344>などチャートが良好な直近IPO銘柄に注目したい。
《FA》