桂畑誠治氏【米雇用統計通過で安心感? 春相場の勘所は】(1) <相場観特集>

特集
2023年4月10日 18時30分

―次は米CPI、金融不安一服後の日米株の動向を占う―

週明け10日の東京株式市場は総じて買い優勢の展開となり、日経平均株価は2万7000円台後半で頑強な値動きを示した。前週末に発表された3月の米雇用統計は大方の予想から大きなブレはなく、このビッグイベントを通過したことで投資家心理が改善した。一方、買い一巡後は上値も重く、海外市場の休場の影響もあって外国人投資家の参戦も限られ、売買代金は前週末に続き低調だった。ここからの相場見通しと物色の方向性などについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「2万8700円上限のボックス相場が続く」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

全体相場は当面の間ボックス圏推移が続くとみられる。注目された3月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が23万6000人増だったが、1月・2月分が下方改定されていることを考慮すると実質的に市場想定より弱めの数字といえる。ただ、失業率は事前予想よりも若干改善傾向を示す内容であった。更に平均時給の伸びはコンセンサス以上に鈍化が確認された。総じて景気は底堅く、サービス部門のインフレ沈静化を示唆していることから米経済のソフトランディングへの可能性も少し出てきた印象を受ける。株式市場的にはプラスに評価できる結果だったといえ、きょうの東京市場は買い優勢で始まった。

今週12日には3月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えているが、この結果次第で株式市場のボラティリティが高まる可能性はある。コア指数で前年同月比5.6%上昇が予想されており、これは2月の5.5%と比較して伸びが加速する見通し。結果がこの5.6%近辺の伸びで市場予想と合致すれば、5月のFOMCにおける0.25%の政策金利引き上げをほぼ100%織り込む形となりそうだ。そうした状況も念頭に置いて、NYダウの向こう1ヵ月でみたレンジは、下値が3万2500ドル近辺、上値は3万5000ドル弱とみている。

一方、国内では植田和男日銀新総裁のもとで新体制がスタートしている。初陣となる今月27~28日の日銀金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃が行われるかどうかについて思惑が錯綜している状況だが、初回会合でいきなりYCCが撤廃される可能性は低いとみている。さらにマイナス金利の解除も当面は見込まれず、株式市場にとっては追い風ともいえるが、上昇相場を本格的に後押しするような展開には至らないだろう。

日経平均の向こう1ヵ月のレンジは、下値が昨年来のボックス相場下限である2万6000円前後。上値は3月上旬につけたザラ場高値水準である2万8700円どころを想定している。物色対象としては5月の大型連休を控え、小売り、陸運、空運といったインバウンド関連に優位性がありそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)

第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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