明日の株式相場に向けて=バフェット「日本株買い」の真意
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比159円高の2万8082円と4日続伸。終値でフシ目の2万8000円台を回復した。日本時間今晩に発表される3月の米消費者物価指数(CPI)の結果待ちで、模様眺めムードが漂うなかも大型株、中小型株総じて買いが優勢だった。米CPIは、昨年2月にウクライナ有事で高騰した原油価格の影響が反映されない「コア指数」の方の注目度が高まるが、市場予想の前年同月比5.6%増から大きく上振れない限り、次回FOMCでの25ベーシス利上げで打ち止めとの見方が強い。今回はCPIショックを恐れる声は市場からあまり聞こえてこない。
前日はイースター休暇明けとなった欧州株市場がほぼ全面高商状に買われたことで、リスクオンの流れが継続した。米国株市場でも引け際の手仕舞い売りで下に引っ張られる格好になったとはいえ、NYダウは100ドル弱の上昇で4日続伸と、上値を慕う状況に変わりはない。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数のほうは安く引けたが、それでも50ポイントあまりの小幅な下げにとどまった。恐怖指数と称され投資家の不安の度合いを数値化したVIX指数は若干上昇したものの、19.1と悲観と楽観の境目とされる20を下回った水準にあり、ここ2週間にわたり低位で安定している。
総じて世界的に株式市場は堅調であって、波乱の2文字は忘れ去られている状況だ。絶えず警鐘が鳴らされているような今の環境で、この強さは特筆に値するといってもよい。ただし、いつ大きな揺れに遭遇するかも分からず、今の株式市場で買いポジションをとる際には、臆病なくらいがちょうどよいと思われる。少なくとも指数に連動しやすい主力株で高値圏にある銘柄は物色対象としてあまり魅力がない。待つのも相場だ。
例えば、相次ぐ米銀の破綻に端を発する直接的な金融システム不安は収まっているが、銀行の貸し渋りの影響が一部に出始めているという。市場関係者によると、「米国ではシリコンバレーバンク(SVB)破綻後の銀行の貸出データをみると、商工ローン向けなどが縮小傾向にあることが確認されている。一方で、逆に今伸びているのはどこかといえば、それはクレジットカードローンである」(ネット証券アナリスト)と指摘する。3月の米雇用統計は米経済の強さが反映されたという解釈がなされているが油断はできない。銀行が預金流出に備えて蛇口を絞っており、これから景気の実勢に影響が出てくる可能性が高い。そうしたなかで、個人のクレジット需要が伸びているのは危険な兆候である。
東京市場は前日にウォーレン・バフェット氏が日本株への追加投資を検討しているという報道で色めき立ったが、これには「押し目を買いたい」というオチがついている。つまり見方によっては、日経平均が2万8000円台にあるうちは手を出しませんという“今は買わない宣言”をしているようなものである。市場関係者からは「(バフェット氏は)商社株など十分に安いところで仕込んでいるので、むしろここから一段の上値があれば、漸次利益を確定していくというふうにも聞こえる」(国内投資顧問ストラテジスト)とする声もあった。確かに、今後バフェット氏が商社株を買い増ししたいという気持ちが本当であったとしても、それにはバリュエーションの前提があることはいうまでもない。「ここからバフェット氏が買わない“商社株の上値”を買い進むというのは、バフェット氏を超える相場観の持ち主で、大げさに言えばバークシャー・ハサウェイの受け皿となる覚悟を持った投資家だ」(同)というが、それは真理には違いない。
総論としては「待ち」だが、個別株は機動的な対応が可能だ。きょうはカジノ関連が軒並み値を飛ばした。ただし、持続性には疑問符がつく。持続性を考慮すると、AI 関連やインバウンド 関連は物色対象の裾野も広くテーマとして懐が深い。AI関連ではシルバーエッグ・テクノロジー<3961>やASJ<2351>の押し目買い。また、インバウンド関連ではラウンドワン<4680>やインバウンドテック<7031>あたりに照準を合わせてみたい。
あすのスケジュールでは、3月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示される。取引時間終了後には3月の投信概況が発表される。海外では、3月の中国貿易統計、3月の豪雇用統計が注目されるほか、この日の日本時間夜に発表予定の3月の米生産者物価指数(PPI)に対するマーケットの関心が高い。また、米新規失業保険申請件数(週間ベース)も注目されやすい。(銀)