明日の株式相場に向けて=炎立つ「超低PBR株」の大相場に乗る
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比52円安の2万8606円と9日ぶり反落。4月上旬の波乱を乗り越えて前日まで8日続伸と想定外の強さをみせ、3月9日の年初来高値も一気に更新した日経平均だったが、さすがにきょうは上昇一服となった。前日時点でプライム市場の騰落レシオ(25日移動平均)は125.6%で、過熱ゾーンとされる120%を上回った。また、日経平均ベースでも134.4%と既に買われ過ぎの領域に足を踏み入れており、いったんは息継ぎも必要なところである。
全体相場が強調展開を続ける背景には、バフェット効果や東証の低PBR是正要請など、理由がいろいろと並べられているが、日本株市場だけが見直されているということではない。例えば、米国以上にスタグフレーション懸念が強い欧州株市場も、主要国の株価は軒並み年初来高値圏を走っている。特にフランスの主要株価指数であるCAC40は年初来ではなく“史上最高値”を更新中である。これに違和感を覚えないのもある意味リスクで、欧州に限ったことではないが、今の株高は危険な香りも漂う。売り方の仕掛けは、これまでの経緯ではすべて踏まされている状況にあるが、どこかで本当に狼が来る場面を想定しておく必要はある。長期で寝かせる相場ではなく、短期売買の繰り返しで対応するよりない。
ともあれ、東京市場は足もと頑強な値動きが続いている。半導体関連の象徴であるレーザーテック<6920>がこれだけ冴えない動きを続けても、全体相場はバランスを崩すことがない。これは、マーケットの関心が半導体以外に向いているということを示唆する。その答えの一つが低PBR是正の流れで、今の株式市場では投資テーマと化した感がある。
PBRが1倍を大幅に下回るということは、当該企業が純資産を大きく下回る株価水準に放置されていることになるため、理論的にはその会社の全株式を買い占めて完全に傘下に収めた後、会社組織を解散させてしまい、持っている資産を売却・回収すれば、それだけで儲けが生じるという話である。つまり、その会社が行っている事業の価値はゼロ以下で評価されていることになり、それでは上場企業として株主に全く報いていない、そういう論法となる。これを机上論と簡単に切って捨てることはできない。PBRを大きく下回らないような経営努力を求めるという東証の主張は極めて正論である。昨年4月に見た目には派手な市場再編を行ったものの、実質は何も変わっていないという批判もあるなか、PBR是正に向けた動きはポーズでは済まされないという思惑がマーケットには漂う。これは投資する側にとって重要な投資のヒントとなることは間違いなく、当該株の水準訂正場面を先取りしようという思惑が、そのままテーマ買いの流れと合流することになる。
ただし、超低PBR銘柄はひと言で言えば超人気薄を意味する。全く投資家の眼中に入っていないからこその安値放置であり、日々の売買高が極端に少ない銘柄が多い。流動性に難があれば、いかに割安でも投資マネーは寄ってこない。また、赤字体質で無配が続いているような企業は、年々純資産を食いつぶしているということになり、PBRを算出する際の分母がネガティブな形で縮小を続ける以上は、投資対象としても適格ではない。したがって、選別の条件として赤字企業(累損も考慮して無配企業)は避けるのがベターである。更に、地銀セクターは確かに超低PBR株の密集地帯だが、他業態とはモノサシが異なるため、低PBR是正というテーマにおいてはスルーしておくのが無難だ。
超低PBR株で目先動きが出ているのが日本金属<5491>。GMB<7214>も引き続き上値指向が強い。いずれもPBRは0.2倍台である。このほか、日金属の流れで見るなら日本鋳造<5609>や三協立山<5932>。また自動車部品のGMB人気から連想されるのはエフテック<7212>だ。これ以外では、丸運<9067>などもチェックしておきたい。
あすのスケジュールでは、3月の貿易統計と昨年度(22年度)の貿易統計が朝方取引開始前に開示される。このほか、3月の白物家電出荷額、2月の第3次産業活動指数、3月のコンビニエンスストア売上高、4月の日銀地域経済報告(さくらリポート)などがある。また、20年国債の入札が予定される。なお、東証スタンダード市場に南海化学<4040>が新規上場する。海外では4月の中国最優遇貸出金利、4月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、3月の米景気先行指数、3月の米中古住宅販売件数などが注目される。また、ウォラーFRB理事、ボウマンFRB理事がそれぞれ講演を行う予定にある。(銀)