来週の株式相場に向けて=日銀YCC修正に先延ばし観測が急浮上か
28日の日経平均株価は前日比398円高と大幅続伸。18日につけた年初来高値(2万8658円)を更新し、昨年8月19日以来となる8カ月ぶりの高値圏に躍り出た。
この上昇を演出したのは、きょうの日銀金融政策決定会合で金融政策の現状維持が表明されたことだ。植田総裁の就任後、初の日銀会合となることから市場の関心を一身に集めたが、直近の予想では「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を含めた金融政策の修正は見送られそう」(市場関係者)との見方が強かっただけに、現状維持の決定は予想通りだった。ただ、日銀の結果発表を契機に日経平均株価は上昇基調を強めたほか、為替相場は一気に1ドル=135円台半ばまで急激なドル高・円安が進行した。
4月の日銀会合は現状維持でも、6月会合でのYCC修正観測は根強く流れているが、市場には「日銀の金融政策の修正はしばらくないのかもしれない」(アナリスト)との見方も急浮上している。きょう公表された日銀会合の声明文では「金融政策運営について1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行う」と長期間での見直しが示された。また、「1990年代後半以降、25年間という長きにわたって『物価の安定』の実現が課題となってきた」とこちらもロングスタンスの時間軸が示された。米国の景気後退観測も強まっており、日銀展望レポートの消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しは25年度で中央値は1.6%と2%以下との見方が示されている。
市場関係者からは「5月米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ打ち止めが示唆されれば、一気にリスクオンに市場環境は傾くこともあり得る」(アナリスト)との見方も出ている。その場合、海外投資家が目を向けるのは相場環境が落ち着いている日本市場かもしれない。更に、日銀の金融政策修正はしばらくない、との見方が強まれば尚更だ。足もとで海外投資家は日本株買いの姿勢を強めているだけに、5月相場は昨年8月高値(2万9222円)抜けを意識する展開となりつつある。
東京市場は、明日からゴールデンウィーク(GW)に入り来週の立ち会いは5月1日と2日の2日間のみ。ただ、欧米市場は通常取引で重要経済指標が相次ぐだけに目は離せない。東京市場では1日にイビデン<4062>、2日に三井物産<8031>と日本航空<9201>などの決算発表が予定されている。海外では1日に米4月ISM製造業景気指数の発表があり、2~3日に注目のFOMCが開催される。また、5日に米4月雇用統計が発表される。4日にはアップル<AAPL>の決算が予定されている。来週の日経平均株価の予想レンジは2万8600~2万9100円前後。(岡里英幸)